新副風紀委員長、誕生
どうやら、僕の知らないところでも、物語というのは進むらしい。当然か、僕たちは、ゲームや小説と違って生きている人間なんだから。などと、これまた何かの何処かのお話で使われてそうな言い回しをしてみたけれど、取り敢えず言いたいことは一つ。
生徒会長、後で殴る!
今、目の前では舞さん(頬を赤く染めて瞳うるうるモード)が僕の発言を今か今かと待ちわびている。どうやら、僕の返事を待っているようである。先程の情けない返事を聞かれていないのは、僕の威厳が保たれて(存在するか否かは置いておくとして)幸いだが、そのせいで僕は状況が何一つ分からないまま、返事をしなくてはならないのである。言葉の意味は分かるが質問の意味が分からない。どうして、僕が副風紀委員長をやるなどと言うことになっているのだろうか。もしかして、生徒会長僕が翼街くんに出した副風紀委員長をやめろという条件を、僕が副風紀委員長をやるからみたいに捉えてる?確かに、翼街くんを副風紀委員長という立場から引きずり下ろした後のことは全然考えずに発言したけど、どうして僕が副風紀委員長にならねばならないのか。そもそも、生徒会役員足る僕が副風紀委員長になることなど出来るのか。生徒会と委員を同時にやることは、校則で禁じられている筈だ。僕がやっていた委員もそれに接触してしまうから、全部止めたんだけど。つまり僕は、副会長を辞めなければ副風紀委員長になれないと言うわけだ。いや、そもそも生徒会を辞めたとして、副風紀委員長になれるのか?風紀委員ですらない僕がいきなり副風紀委員長になれるというのは、ちょっと都合がよすぎじゃないだろうか。
「……む?どうした二心。」
僕の返事が返ってこないのを不思議に思ったのか、舞さんが声をかける。どうやって返そうか……。状況が分かっていない僕と違って、彼女は一身から、彼の考える筋書きを全てを聞いているから分かっているんだろうが、何も知らない僕はどうやって返事をすれば良いかも分からない。さらに言うなら、ここで下手に動いてしまえば、彼女の機嫌を損ねるかもしれない。ここは、なんとしてでも正解しなければならない……!
「ねぇ、舞さん。僕が、副風紀委員長って……何の話ですか?」
……。
…………。
………………。
やっちゃったよ!?
一番駄目な聞き方しちゃった!?僕の返事は、ダメダメだった。テストでWhatで聞かれてるのにDoで答えるみたいな。そんなやってしまった感が漂い、気まずい沈黙が生まれる。なんというかとてつもなく喋りにくい雰囲気だ……。
「……そ、そうか、一身から聞いていないのか?」
「うん。何も。」
舞さんは、赤くなった顔を隠す。自分一人だけのテンションの高さが空回りしていることに気付いたのだろう。うーむ。僕のせいじゃないけど、悪いことしちゃったなぁ。決して僕のせいではなくて、生徒会長のせいだけれど。
「……生徒会長には、僕から聞いておくから、舞さんは今日は帰った方が良いかもね。風邪、無理して来たんでしょ?」
「あ、え、そ、そうだが……。」
「さぁ、行こうか舞さん。えーと鍵は……。」
僕は舞さんを送るために鍵を探し始める。そういえば、商村と積元をあれから見てないけどどこかで仕事でもしてるんだろうか。今考えても仕方ないので考えを打ちきり、鞄に物を詰める。
「じ、二心。だ、大丈夫だ一人で帰れる……。」
「無理させちゃったのにはかわりないよ。遠慮しなくてもいいし。それとも、僕に送られるのは不服?」
「い、いや、そんなことはない!!分かった、送ってもらおう。」
こう言えば、絶対に断れないだろうなという言葉を選んで、発言する。僕自身も、今日は疲れたので、もう帰るところだったので、というより今日の分の仕事は終わったので、することがなく暇なのだ。それに、舞さんは病み上がり――ではなく、まだ病み上がってすらいないのだ。普段の彼女ならば、僕の護衛など必要ないが、風邪で弱ってしまっている以上、万が一という可能性がないでもない。だから、僕は舞さんを彼女の家に送るのだ。決して、翼街くんとの喧嘩で疲れたのを労って貰おうなんてちっとも考えていない。えぇ、ちっとも。
僕が扉を開けると、そこには生徒会長がいらっしゃった。……。
「痛い、痛い!二心ひでぇ。いきなりなにするんだよ!?」
「自分の胸に手を当てて考えてごらん?」
僕は笑いながら、生徒会長に語りかける。なぜか少し後ろに下がられたが、ぼくは気にしない。引かれたなんて思わない。ちゃんと目標が達成できてよかった。今回も僕はちっとも悪くない。
「胸に手を当てて考えてみろぉ?思い当た、痛い!痛い!なんで?なんで俺、今腹パンチされたの!?」
生徒会長がふざけたことおっしゃったので、一撃入れたら、なぜか一撃しか入れてないのに、痛いを二回連呼した。一発しか当たってないのに。なんで二回言ったんだろう。大事なことなのだろうか。解せぬ。
「はー。分かった!舞が学校にいることだ!」
「正解。じゃあ、どうしてこんなことしたのか、聞かせてもらってもいいかな?」
「ふっ。愚問だな。お前の勝利を報告してお前が副風紀委員長になることを説明しただけだ。そしたら、舞が私も行かねば、とか言ってそこにいるんだろう?」
「そうなの?舞さん?」
「うっ。……あぁ、そうだ。つい、テンションが上がってしまってな。」
僕が舞さんに尋ねると、目を泳がせながら答えてくれる。いつも堂々とした舞さんには珍しい仕草だ。可愛い。これがギャップ萌えってやつなんだろうか。
「それで、僕がどうして副風紀委員長になるとかいう戯れ言をほざいてるの?」
一番の問題点はそこである。別に、僕は翼街くんから副風紀委員長の座を奪っただけで、僕自身が副風紀委員長になるなんて言ってないのだ。そもそも、校則上、僕が副風紀委員長になることは禁じられている。
「ん?そんなことか。安心しろ。校長には許可をとってきた。」
「校則って、校長が決めるもんじゃないでしょ?」
「ふっ。この学校では校長がルールだ。」
「そんなルールが!?」
本日二度目のどや顔に一瞬我を忘れ、暴力をふるいかけたが、そのあとに続く言葉の衝撃で、忘れてしまっていた。すっげー。僕の高校のルールは校長が決めてたのか。知らなかった。
「まぁ、それでだ。これからは、副風紀委員長をよろしく頼むぞ、二心。」
「うん。……え?」
連続する衝撃に僕は耐えきれず、先程から数分しか経っていないにも関わらず、再び情けない返事をしてしまった。
読んでくださってありがとございます。
時間が全然進まない。まだ、一日終わってないんですよね……。凄い濃い一日を過ごしてる主人公くんですが、生徒会長もなかなか濃い一日を過ごしています。見えないところで凄い移動してます。
今回は少し早く投稿できたぞ!嬉しい!!




