舞さん登場
明けましておめでとうございます。もう4日たってますけどね…。
暗い、深い、黒い。闇だ――。
まるで人間のようだ、とそう思う。
俺が始めて、人間が綺麗じゃないと知ったのは、小学生の時、一身がクラス中から苛められていると言っても過言ではない男の子を一人で守った時だ。
俺が始めて、人間が汚いと悟ったのは、中学生の時、一身以外の人間が、ある女の子の知らないところで、その女の子の陰口を叩いているの聞いた時だ。
別に、絶望した訳じゃない。
別に、失望した訳じゃない。
しょうがない、とさえ思う。
だって、俺は、何処かでとうに希望など捨てていたのだから。
俺の兄以外にそうやって自主的に動ける人間なんて、皆無だと。
本能的に、恐らくは物心ついたときから分かっていたのだから。
それらを、彼らの行動によって再認識しただけの話。
俺が、彼らと同類であることは、一身の手伝いをしているときに深くそう思った。
俺の兄だけが、正義だと、考えていた。
だが、だからこそ。
だからこそ、一身と同類の彼女に会ったときは心が震え。
だからこそ、
一人では、何もしない俺が、始めて、自分の意思で、救おうとそう思ったのだろう。
人を一人で救えてしまう一身とは違う。
人を一人で救おうともがく彼女だけは、正しく。
人を一人で救えずあがく彼女こそが、光なのだと。
俺はそう信じた。
故に、俺は、救える人間を救おうとするのではなく。
救おうとする人間を救うことにすると決めた。
俺は確かに、こんな闇の中で決意し、覚悟した――。
――――――
気が付けば、全てが終わっていた。見下ろせば、そこには倒れている、翼街くんの姿。全ての紙風船が割れているのを見ると、俺の無意識が勝手に行動したのだろう。僕の体には割れていない紙風船がまだついているので、僕の勝利なのだろう。僕が、周りを見渡すと、怯えられたように悲鳴が上がり、風紀委員の子たちに、引かれる。あれぇ?僕、そんな引かれるような紙風船の壊し方しちゃった?勿論、僕であり僕がやったわけではないので、それ以外の理由かもしれないが。取り敢えず、審判は僕の勝利を示しているので、これで幕切れでいいんだろう。
……呆気なかったな。
僕はそんな感想を抱き、あることを思いだし、倒れている翼街くんの元へと向かう。そして、倒れている翼街くんに向かって語りかける。
「どうやら、僕の勝ちみたいだね。じゃあ、約束通り、やめてもらおうか?副風紀委員長の役職。じゃあね。」
僕は翼街くんにそれだけ言うと、生徒会室へと向かった。
――――
「あれでよかったのか?二心。」
「まさか。あんなんじゃ足りないよ。全然足りない。二度と、舞さんの前に姿を現せないように、もっと痛め付けなきゃ。」
そう言った時の僕の口はつり上がっていたと思う。
「う、うわー。」
完全に生徒会長に引かれているけど、まぁ気にしたら負けだよね。だって、僕は何一つ悪くない。先にいちゃもんつけてきたのはあっちだし、条件付けてきたのもあっちだ。だから、僕はちっとも悪くない。それにしても、さっきの言葉、聞こえてたかな?気絶してたみたいだし、もしかしたら聞こえていないかも。一応、周りの人が聞いていたと思うし、大丈夫かな?あの手のタイプが素直に役職を捨てるとは思えないけど、そうなったらこっちにも考えがある。願わくは――この作戦が行われることがありませんように。ってー、心の中だけでも言っておこうかな。
「二心!!」
僕が翼街くんをどうやって叩きのめすかを考えていると、突然、僕の名前が呼ばれる。若干、思考がトリップしていたのを引き戻された僕は、目の前にいる人物に呆気をとられる。
「ふぇ?ま、舞さん?ど、どうしてここに……?」
そう、僕の目の前にいたのは、いつもより顔全体が少し赤い以外、なんら変わらない舞さんが居た。え?何故?だって舞さんは今日は風邪を引いて休みだったはず。どうしてここに?
「私も家で寝ていたのだがな……。少し元気になったところを携帯で一身に呼び出されたのだ。」
「はっ?え、生徒会長が?」
つまり、生徒会長は風邪で体調の悪い舞さんを無理やり携帯で呼び出したって言うの?ひ、酷い。なんて鬼畜なんだ、生徒会長。病人の鞭を打つような真似するなんて。僕は、心底軽蔑するよ……。って、今更になって気づいたのだが、生徒会長が生徒会室にいない。可笑しいなぁ、今日は生徒会長が他の委員の所に出張するような仕事はなかった筈だけど。
「それで、舞さん僕の名前をいきなり呼んでどうしたの?」
「いや、そ、それはだな二心。あの、その、えーと……。」
いつもはきはきと話す舞さんにしては珍しく、しどろもどろに言葉を濁す。うん?なんだろう、なにか言い難いことでもあるのだろうか……。いや、あるじゃん!!僕、思いっきり地雷踏んでたじゃん!!舞さんをかけて、副風紀委員長である翼街くんをボコボコに、(恐らくはプライドをへし折るぐらい)ボコボコにしたよ僕!?恐らく、事情は生徒会長から聞いているはず。部下がボコられていい気分でいれるほど、彼女は非情ではないので、きっと、僕に愛想をつかせたはずだ。だって、行動はともかく、翼街くんが舞さんに好意を持っていることは今回の件でよくわかる。舞さんだって、それに気づかないほど鈍感ではない。けれど、彼女は優しいから、僕に対して完全に非情にはなれない。概ねそんなところだろう。僕、終わったなー。好意を抱いてくれている、唯一の人に見限られてしまったのだから……。やば、軽く涙腺緩んできた。謝りに行ったら許してもらえるかな……。僕が遠い目をしながら考えていると、舞さんは意を決したように、唇を開き、そして僕に話しかける。あぁ、なんか軽蔑されたような言葉を言われるんだろうな……。
「あの、じ、二心が副風紀委員長になるって……本当……なのか?」
「……ふぇ?」
だから、予想外の返事が来て、情けない返事をした僕は、ちっとも悪くない。はず。
読んでくださってありがとうございます。
相変わらず、グダグダですが、今年もよろしくお願いいたします。




