舞さんとデー…げふんげふん
今日は、五月の第3日曜日。学校も休みだ。
そして、風紀委員会委員長の肩書きを持つ、彼女、刃羽 舞さんとのデー……げふんげふん、遊園地に遊びに行く日でもある。たまたま、チケットを二人ぶん持っていた、舞さんに誘われたーーーと言えれば、鈍感系主人公の一面を見せることができるのだけれども、しかし、この彼女から貰ったチケットは、彼女自身が手に入れた訳ではなく、僕の兄によってもたらされたわけで、言うならばこの状況は僕の兄の手に平の上と言い替えてもいいかもしれない。だが、それでも彼女とデー……ではなく、女の子と二人で遊園地に出掛けるというのは、やはり男子高校生としては嬉しい。だって、二枚しかないチケットの一枚は僕に使ってくれるんだから。
「楽しんでこいよ。二心。」
「ははっ。そうさせてもらうよ。」
家を出る前に、僕は兄でありこの状況を作り出した張本人たる、和宮 一身にそう声をかけられる。全く、僕を楽しませることを考えつつ、自分も楽しむことを考えてるやつがよく言うよ。ま、でも、今日はせいぜい楽しませてもらうかな。
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「すまない、待たせたな二心。」
僕が待ち合わせの場所である駅に付いてから数分後に彼女は来た。待ち合わせの時間の一時間前だと言うのに、随分と早い到着である。彼女を待たせないように、一時間三十分前に来といて正解だったね。僕は、暇潰しに眺めていた本から顔をあげて挨拶を。
「いや、気にしないで。僕もさっき……来た……ばっかり…だから。」
節々の言葉を詰まらせながら、なんとかカップルとかでよく見る、待ち合わせ時間少し遅れたけれど僕も今来たばかりだから気にしないでを実行する。僕の言葉が詰まったのは、勿論、僕がコミュ症だからじゃなくて、彼女のその格好に気をとられてしまったからである。
普段は後ろで1つ括りにされている髪は卸され、いつもは風紀委員長の立場上校則に忠実なスカートはジーンズに変わっており、一言で言うなら格好いい。上着も下のジーンズに合わせた寒色系の色で揃えられており、彼女もお洒落の出来る女子であることを指し示している。町を歩けば、十人中十人が振り返るであろう、美しさである、と言えばいいだろうか。残念ながら、僕の語彙力では彼女の綺麗さの十分の一も伝えることはできない。
振り返って僕。
髪が少し長くなってしまったので、前髪をピンで止めている。休みの日に外に出てまで兄と勘違いされるのは悲しいので、だて眼鏡をかけている。シャツの上には灰色のパーカーを着ていて、下は動きやすいように膝下まであるズボンを履いている。いや、なんで自分の紹介までしたんだ僕。彼女だけでよかっただろう。舞さんならともかく、自分で自分の紹介をしても、彼女とのファッションセンスの差に悲しくなるだけであった。
「………。はっ!その服、よく似合ってるよ舞さん。」
「そ、そう言う二心も似合っているぞ。」
僕が、彼女の服を褒めると、社交辞令か、彼女も僕の服を褒めてくれる。女性の着ている服を褒めるのは男子として、基本中の基本。とはいえ、彼女の場合はお世辞でもなんでもなく似合ってしまっているので、勝手に口から出てしまうが。彼女も、服装を褒められるのは嬉しいのか、頬を少し赤く染めて可愛らしい。普段とのギャップがあるからだろうか。そうか、これが俗に言うギャップ萌えか。そうなのか。
「じゃ、じゃあ少し早いが行くか。二心。」
「あっ。うん。そうだね。遊園地に行こうか。」
彼女は、僕の右手と手を繋いで、遊園地へと向かった。彼女のファンにこの姿を見られたらどうなるのかを考えてしまい、彼女と手を繋いでいない方の手の冷や汗が止まらなかった。
―――――
玄札テーマパーク。
それが、今日僕と舞さんの行く遊園地の名前だ。大きさはおよそ、某ネズミの夢の国の大きさの三分の二程度で、この辺りにある遊園地では最大の大きさを誇っている。完成してから、まだ4ヶ月程度しか経っておらず、僕の兄がここのチケットを持っていたのは、彼がここに関わるわりと偉い人を何かの事件から助けたお礼に貰ったんだと僕は推測する。この答えの正解確率はおよそ50%程度だと思われる。この確率が高いのか低いのかは分からないが、二分の一なので、僕の推測としてはわりと高い方だ。まぁ、推測の正解確率も推測の域を出ないけれど。
玄札テーマパークのアトラクションの種類は大まかに言えば三つに別れており、団体、家族、一人等といった風に識別されている。勿論、一人だからと言って団体のアトラクションに乗ってはいけないわけではない。要するに、そのアトラクションを楽しむための推奨人数と言ったところだ。
「じゃ、じゃあ二心。は、入るか。」
「そ、そうだね。」
彼女がチケットを取り出したのを見て、僕も財布に入れていたチケットを取り出す。そして、彼女は、僕に右手を差し出す。………え?なにこの右手。なんとかカップル繋ぎから開放されたと思ったら、また手を繋がなきゃいけないのかな?いやいや、そんなことあるはずが。こう言うカップルイベントは、僕には来ないはずじゃ……。
「は、はやく……。」
頬を赤く染めた彼女を見てつい左手が彼女の右手をつかんでしまう。しまった!!これは罠だ。彼女のファンに殺られる。くっ、こうなったら僕は逃げも隠れもしない。さぁ、出てこい、刃羽 舞ファンクラブ会員(仮)ども!!
「………。分かった。」
なんて言えるわけなく、僕は彼女の右手をとる。僕たち男子は、女子の照れた顔には弱い。強いて言うなら、そう。男は、無力だ……。みたいな感じかな。まぁ、そんなライトノベル的なことを僕が口に出来るとは思わないけれど……。
「あ、ありがとう。」
彼女のキャラ崩壊気味の照れた顔に、僕は目を背け俯くことしかできなかった。
読んでくださってありがとうございます!!
取り敢えずタイトル……。そして、主人公……。
因みにと言うか当然ですが、作中に登場する地名や地域名は架空のものであり、実際のものとは何ら関係ありません。




