図書室での仕事転換
図書室。
そこは簡潔に言えば、本好きからすれば聖地であり、勉強嫌いからすれば眠れる地である。それすなわち、図書室とはそこに存在する全てのものの魂を安らげ、学校にある校舎の中で最も安息を求めるものが集まる場所であり、また、神聖な場所であるがゆえに、物音などその世界に没頭しているものたちへの、冒涜である。図書室では、騒がない。それは最低限のマナーである。
「その本、僕が読むんだ!!」
「いいえ、先に私が読みます。その後、読めばいいでしょう。」
「違う!!僕は今読みたいんだ!!」
ゆえに、彼女たちのように大声で騒ぐものはこの世界の敵である。僕は読んでいる本を閉じて、彼女たちをじと目でにらむ。はぁー。こんなことになるのなら、図書室へと連れてこなければ良かった。心の中でため息をつき、自分の行動に後悔する。このまま放っておいたら、周りに迷惑だよな。僕は、机から椅子を引いて立ち上がり彼女たちの方へとは向かわず、図書委員長である、彼女のもとへと向かう。彼女とは、以前に、少しだけ述べた彼女、変わり者の多い委員長の中でも変わり種と言わざるおえない存在、図書委員長、刻読 意読さんである。
「こんにちは。意読さん。」
「んー?あっ、おはよー二心くーん。」
間延びした口調が特徴の彼女は、今日もカウンターで眠っていたようだ。本人曰く、キャラ付けのためだけにだて眼鏡をかけていて、キャラ付けのためだけに、素の口調を間延びした口調に変えているらしい。彼女のこのキャラ付けに対する姿勢が変わり種の由来らしい。あと、他に理由があるとすればーー
「で、二心くんどうしてここに?もしかして、宇宙人でも攻めてきたー?」
少しだけ、本当に少しだけだが、それは、冗談と受け取られがちだが、電波が入っているところだろうか。僕の語彙では電波が何かを説明することは難しいので(決してわからない訳じゃない。)詳しい説明は省かせてもらうが、まぁ、少しだけ常識がずれてることと思ってもらっても構わないと思う。よって、彼女の『宇宙人でも攻めてきたー?』は冗談ではなく、本心からいってる言葉なのである。そんな彼女の将来が少しだけ不安になったりもするのだが、それはまた別のお話で、今回するべき話は彼女たちについてだ。
「いえ、すいません意読さん。転校生に図書室に連れてってと言われたんですけど、連れてきたら喧嘩してしまってうるさくて。どうにかしてくれませんか?」
「うーん。二心くんが私に頼むなんて珍しーねー。二心くんのてに負えないなんて凄ーく珍しーよー。うん、分かった。少しだけ待っててねー。」
彼女はそう言って、準備を始める。カウンターから出ていくために、僕と仕事を代わる。彼女がカウンターを離れることは(寝ているので)このような場合以外ほとんどない。彼女が仕事をしている姿を見たことのある人はほとんどいないのである。基本寝てるし。彼女は、櫛呂さんと相乃さんに近づいていき、喧嘩している前で立ち止まる。恐らくだが、彼女はニコニコとした表情を彼女たちに向けているだろう。喧嘩とは、第三者に見られれば急速にやる気をなくすものである。しかも、見ている第三者が笑顔でいたならなおさら。アホらしくなってくると言うか。勿論、例外は存在するが。彼女たちもそれは例外では無かったらしく、急に声が小さくなり、喧嘩を止めた。大方、ここがどこかで冷静になったことで気付き、図書室で騒いでいることに恥ずかしさを覚えたのであろう、顔を赤くして二人とも俯いている。全く、最初から喧嘩なんかしていなければ、そうやって、顔を赤らめることもなかったのに。
「はぁ、すいません、意読さん。」
「はははー。別にいいよー。一応、図書委員としての仕事をしてるだけだからさー。うん。図書室の喧嘩を止めるのも、図書委員長の役目!!」
「そっか、ありがとう意読さん。さて、二人とも、次にいきたい場所はないですか?」
意読さんに軽く謝罪とお礼を述べて、未だに顔を赤くしている二人に、声をかける。彼女たちは首を横に振り、他に向かいたい場所がないことを表す。僕は、読んでいた本を、カウンターで既に眠りについた意読さんのもとへと持っていき、貸し出し手続きを行う。その後、僕は彼女たちと共に図書室を出た。
その時に、眠っていたはずの意読さんが起きていて、僕に向かって、
「また来てねー。」
と言われたことに、少し驚いたが、僕は
「えぇ、また。」
と、柄にもなくいい笑顔で返しておいた。
その後、先に図書室からでて、勝手に迷子になっていた二人を探すのに苦労した。
読んでくださってありがとうございます!!
少しばかり、更新が遅れましたが、寛大な皆様ならば許していただけると信じている作者です。既に2章の四話です。タイトルが思い浮かばない……。そして、話の続きが思い浮かばない……。やっぱり見切り発車は厳しいですね!!次回、作者はタイトルを考え付くことができるのか!?