続・異世界談
タイトル詐欺気味です。解説ではありません。話が進みます。
異世界ーーーアレガルドから帰ってきて一週間が経った。僕たちの回りで特に変わったことはーーある。まず、僕が少しだけ魔法を使えるようになった。肉体強化なんかもできるようで、働きの効率が上がった。勿論、悪巧みなんかもやろうと思えば出来るのだろうが、僕には出来なかった。無理。精々、授業のときに使って知識の吸収率をあげるくらいだ。
変わったことの二つ目。僕の兄が異世界で言い寄られていた結婚の話が無くなったそうだ。兄がいないと、僕の家の枯渇問題に発展するので、良かった良かったのだが……。
「おはようございます、二心さま、一身さま。」
その異世界の国のひとつ、僕の兄が結婚を言い寄られていた、シルバース王国の王女様、メリア・シルバースがうちの学校に転校してきた。しかも、うちに居候。ふざけんな。食費がかさばるだろうが。うちの高校に誰が入ってこようと関係ないけど、それが僕に迷惑がかかるものなら別だ。そもそもこの素性の分からない娘をなんで、校長は転入させちゃうかね。国籍不明だよ?どこの馬の骨状態だよ。
「あぁ…おはよう。」
転校してきた初日から僕と、一身に絡んできて、回りの生徒の視線が痛かった。物凄く。金髪縦ロールの青い目を持つ少女の挨拶に、前日までのクラスメイトからの質問で疲れた僕は気の抜けた返事をする。もう、疲れた。僕は兄みたいにハイスペックじゃないんだから、あんまり疲れさせないで欲しい。そのせいで、肉体強化とかして授業を聞いても疲労のせいで全然授業内容が頭に入ってこないんだ。誰か僕の気持ちを知ってくれ。そんな目で見ないで欲しい。僕の立場になれば気持ちが良くわかるから。
―――――
放課後。
僕は去年の6月中旬からの仕事となっている、生徒会室へと向かう。なぜだろう。一週間たってメリア姫もクラスにだいぶ馴染んで、むしろ僕よりも友達が多いくらいで、生徒会の仕事すべてがうまく回っているのに、なんだか、嫌な予感。これは、そう。先週の始業式のときに感じたアレ。つまり、生徒会長の厄介ごとーーー主人公補正によって、彼のもとへと引き寄せられる、イベントの予感ーー。うわー、憶測でしかないのに十中八九当たっているきしかしない。丁度、異世界偏も終わったし(というよりすでに終わってたけど。)小説とかアニメ、漫画で言う次の章に入るんじゃないかと、戦々恐々してしまう。ヤバい、考えれば考えるほど当たっている気しかしない。生徒会長ならいざ知らず、僕のハートはそこまで強くない。だいぶ前にも言ったけど、僕はさしずめ脇役ポジションだから。内心、不安になりながら、やはり沢山のものに彩られた扉は重い。文学的に言うなら、まるで僕の心の扉のようだ。みたいな感じ?実際は、扉の重量なのだが(片方の扉だけで三キロ)。
「おっ、今日は早いな二心。」
「同じクラスなんだから、終わったのいつか知ってるでしょうが…。」
今日は担任が不在と言うことで、生徒会長(僕と同じクラス。念のため。)である彼が、副担任を差し置いて、HRをやっていた。そして、自分の都合で少しだけ早めにHRを終わらせた。最近の生徒会長の行動って、なんだか完全から離れているような…?
「ふざけるな!!俺はあんな甘甘な空間にいろと言うのか!?」
そう言って、体を震わせる生徒会長。念のために言っておくと、彼の言うその甘甘空間の原因の七割は彼にある。他の高校などでもそうだと思うが、まぁうちの高校は生徒としての一線を越えなければ、異性交遊は禁止していない。むしろ、リア充を応援している。これは、高校生なんだから、青春を楽しまないといかんとかいって校長が推進しているためである。そのため、クラス定員四十名のうちの十八人は付き合っている。ちなみに、そのうちの十二人は会長にフラれた女子である。と言うわけで、大体七割がた彼のせいなのである。自業自得とは正にこの事を言う。
「そう?僕はもう慣れちゃったけどね。」
「お前はよく耐えれるなぁ……。まぁ、確かにお前の回りにはカップルが多いよな。」
それは、兄への八つ当たりがわりにそこら中をリア充で一杯にしようと思ったからです。何て言えない。口が滑っても言えない。お前にフラれた女の子の中で、望んだ人は全員、他の男子とくっつけてやったよ。時に表に、時に裏に回り、活躍して、暗躍して。去年の秋ごろから始めたかな。もう、半年もたつのか。
「で、今日は何が議題なんだ?」
彼が大急ぎで、走り去っていく間際、僕の耳元で今日は生徒会があるからと言われて来たのだが……。僕以外に誰も来ていない。
「そうだな、今日来るのはお前だけだろうし別に構わないか。」
「僕だけ……?皆は?」
「断られた。今日は休みの予定だったしな。」
ふむふむ、なるほど!
僕の兄は完全生徒会長とか言われてるけど、人望はないのか。人望があったらあつまるもんね!可哀想に。僕はいつまでも君の味方じゃないから、早く仲間を見つけて欲しいね。
「で?もう一回聞くけど今日の議題は?」
「それは……。」
ん?やけにためるな。いつもならこう、ずばっとさっさと議題に入るのに。何か、ためるようなことなのだろうか。彼は、顔の唇をつり上げる。それは、一週間ほど前に見た笑顔。その表情を見て僕の背中に一筋の冷や汗がつたう。嫌な予感が、頭のなかで、警報を鳴らし警戒する。けれど、無駄だった。笑顔を浮かべたまま、彼はいい放つ。
「異世界についてだ。」
僕は、病院に電話をかけた。
読んでくださってありがとうございます!!
ついに、ついに二桁。夏休みだからって作者頑張りました。恐らく、そろそろ、不定期更新?ネタが尽きるまでは頑張ります。