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生徒会副会長の受難  作者: 紫緑
生徒会副会長の救難
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オープニング

現実は残酷だ。世界は横暴だ。

もし、逃げてはいけないなんて言われたら、きっと壊れて崩れてしまうだろう。きっと、何かが失われて、心を砕き、砕かれた心は扉を閉ざして救いの手を拒むだろう。何が悪かったわけじゃない。ただ、自分の分身の、太陽のできが、光のできがよすぎただけ。だから、月で、影の自分は世界から自分を遠ざけた。だから、俺は偽りの仮面()を被って隠した。だから、僕は真実の素顔()を匿った。誰かが、自分(僕と俺)のために心を砕いてくれることに期待して、自分の本心を偽って心の裏では劣等感に苛まれながらも、今はただの作り笑いを浮かべてる。


――――――――――


唯一無二の天才、優等生、完全無欠、文武両道、エトセトラエトセトラ……。

僕の双子の兄であり、僕の通う組素高校の生徒会長、和宮かずみや 一身いっしんをほとんどの単語は彼を一言で言い表すことはできない。一言で言い表すには才能が有り余り過ぎて、無秩序に才能が有りすぎて、たったひとつの単語を除いては言い表すことができないのだ。受けたテストは百パーセント正解が基本、運動神経はどの倶楽部でもエース級。最近の小説とか漫画での生徒会長と言うものはどれもハイスペックだけれど、うちの高校の生徒会長もその例に漏れず、もちろん、ハイスペックである。彼を見ていると絶対ってあり得るんだなぁと思う。そんなスーパースペックの彼を言い表すことができる言葉はたった一つ。それは、漫画や小説、アニメーションでお馴染みのーーー


主人公って奴だ。


一部の人は外れるのだけれど、基本的に彼に靡かない女子は少ない。整った顔立ちをしつつも男らしさを持つその顔と、頼りがいのあるその雰囲気が女性たちの心を射止めて止まないというのは友人談である。もちろん、彼はハイスペックを具現化したような存在なので、下心を持って近づいてくる女子を何となくで察知してのらりくらりとかわすのだ。また、俺様生徒会長のような俺様至上主義などでは決してなく、回りに目を配ることができ、仕事もできる。昔、不良に捕まったなんの関係もない女の子を、見てしまったからという理由で助けたこともある。


そんなお人好しな彼なので、学校内でハーレムを作り出しているにも関わらず、交遊関係はいたって良好で、男子ともよく談笑している姿を見かける。無論、移動教室のときや、男子と女子の合同体育のときは取り巻きの如く彼の回りに女子が集まるが。彼はお人好しなので基本的にそれを許してしまっているが。休み時間に彼に声をかけることのできた男子生徒はしばらくの間、幸福がもたらされるという噂が出来るほどに彼はハーレムを形成してしまっているのだ。そんな、取り巻きを許すような寛容な?彼だが、流石に生徒会室の中にまでは連れてこないと決めているようだ。そこら辺がしっかりしているから男子にも嫌われたりしないんだろう。そんな、誰にでも好かれているスーパーハイパーな兄を持つ僕はいつも彼に巻き込まれている。さしずめ、脇役ポジションか。


先程、始業式が終わり、退屈な校長の話を右から左へ聞き流し、式が進行するときにだけ声を出すという、至極簡単で至極暇な役割を終えた僕は、式の終了後生徒会の呼び出しを受け自分の所属する教室へとは向かわずに、友人に一応説明を入れて生徒会室へと向かった。


―――――


今日の予定ではこんな呼び出しは存在していなかった。呼び出すような内容がなかったからだ。そもそも、生徒会というのは4月の最初の最初だけは本当に仕事がない。あって、今日のような楽なものばかりだ。本格的に仕事が多くなってくるのが5月から、6月。文化祭があるのでそれを成功させようと必死で働く。7月は途中から夏休みに入るので、心持ち的には少し楽。それでも、しんどいことに変わりはないけど。


生徒会室の扉を叩いた僕は、無駄に装飾されたせいでそこそこの重量になってしまっている扉を開き、生徒会室へと足を踏み入れる。春休みは仕事がなかったから久しぶりだなぁとそんな感慨に浸りつつも、用意されている自分の生徒会の席の前へと進む。


副会長、和宮(かずみや) 二心(じしん)


座る席を識別するためのネームプレートには僕の役職と僕の名がかかれている。去年の生徒会選挙、つまり去年の6月頃に開かれた生徒会選挙から、この席は僕の物となった。


「進行お疲れ様です。副会長。」


取り敢えず席についた僕は隣の席 (ちなみに机は長机)の切れ目がちの凜とした雰囲気を放つ生徒会会計の差野(さの) 火凜(かりん)さんだ。誰にたいしても丁寧語で話し今まで会計の仕事を一度も間違えたことがないという優秀さだ。僕を除く生徒会役員はみんな僕よりも基本スペックが高い。それこそ、僕の兄がいなければ主役を張れるぐらいには。


「労いありがとうございます。で、今日は何故呼ばれたんですか?」

「あぁ、その件だがな、全員来たら話そうと思う。」


右斜め前に座る、僕に瓜二つな顔は僕よりも少し低い声で僕の質問に答える。今はまだ、僕の真向かいにある長机のどちらも人は座っていない。その席に座るのは、一部の女子から壮絶な人気を誇る、高校生にしては珍しい低身長男子の生徒会庶務、商村(しょうむら) (あきない)と、商村とよくセットで小さいという言われている女子、積本(せきもと) 志乃(しの)だ。どちらも身長は160センチもないそうだ。そのためよくコンビで扱われる。似たような身長だしな。ちなみにちっさいコンビは一年生で、僕、兄、火凜さんは二年生だ。うちの高校の生徒会に三年生はいない。三年生も役員になれないわけではないのだが、僕を除く生徒会役員は皆ハイスペックで三年生ではスペックで敵わないのだ。うん。皆、凄すぎ。生徒会役員のことを説明しつつ自分の平凡さを噛みしめたところで、あの、いつの間にか閉められていた、というよりは勝手に閉まっていった無駄に装飾の多い扉が開かれる。


「おっくれました~~。」

「……すいません、会長。」


先程心の中で話題にあげていた二人が慌ただしく入ってくる。商は、目をキラキラさせて子犬のように。志乃は遅れたことにたいして申し訳なさそうに、しかし、普段通り瞼をトロンとさせて眠そうに。生徒会室に入ってきた。


「皆、集まったな。それでは、話しを始める。」


生徒会長は普段通りの極々一般的なで表情で、差し迫った問題も無さそうに話し始めた。

読んでくださってありがとうございます!!

改稿しました。行間増やし&誤字修正です。

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