第三話
悲劇は起こった。
翌年の夏頃から どうも凛の体調が優れない日々が続いたのだ。
凛には熱があり、「頭が痛い」などの病状を俺に訴えた。
俺は医者に凛を診てもらおうかと思ったが、そもそもこの辺りには医者がいない。
結構な道のりを歩いたところに医者があると聞いたが、そこまで行くとなると凛に無理をさせてしまうので、病状が悪化する恐れがあると考え、やめた。
仕方ないので独自で調べたり 村人に聞いたりしたが、やはり凛の病は何か分からなかった。
結局、栄養のある物を食べさせたりしながら 完治するのを待つ事にした。
だが、ある夜。
凛の病が明らかになった。
「……ん…?」
厠の方から物音がしたので 俺は目を覚ました。
隣の布団の上に 凛の姿は無い。
あぁ…凛が厠を使っているのか。
何か物でも落としたのかな。
そう思い 俺は再び眠ろうとした。
ーーーその時。
「ガターンっ!!」
「!!?」
更に大きな物音がして 俺は意識が完全に覚醒した。
「何だ今の音……!?」
厠からありえない物音。
厠にいるのはーーー凛。
「凛ッッ!!!」
俺は飛び起き 厠の方へ走った。
ドン ドンッ
厠の扉を叩く。
「おい凛! どうした! 何だ、さっきの音は!!」
「………」
返事がない。
「凛、大丈夫か!?」
「………」
「チッ、仕方ねえ。 開けるぞ!!」
ずっと返事が無いままだったので、俺は厠の扉を開けた。
バンッッ
ーーーーー扉の先には。
「!!!!!」
月の明かりが 凛を照らしていた。
淡く儚げな 月の明かりが。
血まみれの、凛を。
「………ぁ」
なんだこれは。
なんだこれは。
なんだこれは。
なんだこれは。
なんだこれは。
え? 何で凛倒れてんの? てか何で血まみれ? 普通に厠で用をたしてたんじゃないの?
何? どうしたの? え? え? え? 分かんねえ。
「凛!!!!!」
ぐるぐると疑問が頭に浮かび 気づいたら凛を抱きしめていた。
完全に混乱していた。 無理も無い。 だって最愛の恋人が血まみれになって倒れてるんだぞ?
誰だって混乱するよな? な?
「だ………よな……………ぁ」
その後の事は よく覚えていない。
気づいたら、朝になっていた。