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鬼火、灯る夜  作者: 柧貊
2/9

第二話

4年前の春、俺は凛と出会った。

桜が咲き誇り、麗かな陽気に包まれていた、春に。

人気のない川辺で俺が釣りをしている時だった。

遠くの方に 女っぽい影が見えて、俺は 見かけない顔の女が向こうにいるなぁ…とのんきに考えていた。

だがその女は だんだんこっちに近付いて来たのだ。

俺は少し警戒した。

でも少しずつ近付いてくるその女をよく見ると……

額に角が生えている。俺と同じ鬼だ。

しかもあの女…………


痩せている。

不健康体そのものだ。


そう思った。

俺は慌ててその女に駆け寄った。

「おい、お前大丈夫かよ!?」

「……ぅ…」

どうやら何か言いたいようだったが 声が枯れているようだった。

俺はとにかくその女を自分の家に運び、看病した。

鬼は人間より回復力が高いので、その女は3日程で大分回復した。

回復したところで、俺はその女に事情を聞いた。


「お前、名は?」

「凛と申します。」

「お前、何であんなに痩せてここにいたんだ?」

「………私、旅をしていたんです。」

「旅?」

「はい。私は物心ついた頃から独りだったのです。」

「…何で?」

「両親共々死んでしまったんです。」

「…………」


どうやら凛は 7歳くらいの時に両親が死に、当時暮らしていた村から追い出された(両親が人間の手伝いをして、村に住まわせてもらっていたらしい。)事をきっかけに、居場所を探す為旅に出たという。

だがどの村も鬼を怖がり、何年も追い出され続けていたところ この村に迷い込んだという事だった。


「ふーん、大変だったな」

「はい。 ………あの、貴方は」

「ん?」

「どうしてこの村に住んでいられるんですか? 人間達に追い出されたりしなかったんですか?」

「あー 俺はこの村で生まれ育ったからな。旅とか面倒だし、ここで生きていくしか無かったんだ。

だから人間達に認めてもらえるよう、必死に努力した。」

「努力……」

「おう。片っぱしから人間達の手伝いしてな。最初はすげえ苦労したけどな。」

「……そういえば ご両親はいなかったんですか?」

「あー、なんか知らねえけど 気づいたらこの村にいたんだ。」

「え?」

「まあ 要するに捨て子ってやつ? まあ何がともあれ、今ここで不自由無く生活できてるからいいって事よ。」

「…………」

「そうだ。お前もこの村住まねえか?」

「え?」

「人間が怖けりゃ隠れてればいいし、万が一見つかってもここの人間は鬼慣れしてるし」

「………」

「な?」

「……はい。」



こうして 俺と凛は一緒に暮らすことになった。

でもやっぱり凛は人間が怖いらしく、隠れて生活することになった。

まあ人間達も俺の家には滅多に近付かねえし 問題は無かった。

凛もこの環境が気に入ったようで 楽しそうだった。

そうして凛と共に遊び、時々村人の物を盗ったり、村人の手伝いをしたり……。

そんな生活をしている内、俺は凛に好意を抱くようになった。


そしてその年の冬 俺の想いは実った。

凛に想いを伝えると 凛は頬を赤らめながら返事をしてくれた。

俺は喜び これからの生活にわくわくしていた。


だが 悲劇は訪れた。

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