自然な甘さのレアチーズケーキ 二次と三次のダブルソースがけ
自然な甘さのレアチーズケーキ 二次と三次のダブルソースがけ
「チーズはどこへ消えたはどこへ消えた?」 今日も今日とて不意に彼女は言う。
「チーズは… あぁ、本ですか。 懐かしいですねぇ」 尤も、僕自身中身を読んだことはおろか書店で見かけた記憶もないけれど。
「そそ。 話題になってさ、ばばんとスペース作られてさ、いろんなネタにされてさ、特集組まれたりしてさ」
彼女は続ける。
「で、どこに消えた?」
成程、今日はそういう気分らしい。 いつもどおりの彼女の愚痴を いつもどおりに聞き流して それが僕の職として正しいのかは知らないが──
彼女がそれで満足するのだから、まぁいいのだろう。
「言われてみればそうですねぇ。 つい少し前まで雑誌やテレビ、お店でも特集されたりしてたのに 気づくとなかったかのように誰も気にしなくなる」 いつもどおりに当たり障りなく それでいて彼女の話を遮ることもなく。
「そうそう。 さっきまでおいしいラーメン特集してたと思ったら 今度はラーメンは脂っぽくてだめ! 体に優しい健康ダイエット特集 どんだけだし」
……まぁ言わんとしていることはわかるが、少々話がずれてきているような?
「まぁ、日本人らしいというか、結局お金もらって提灯書いてるわけですからねぇ 現状のマスメディアは」いつもどおりたまには本音 ──彼女の話はどうでもいいということが多少出てしまう。 言ってから心の中で口をつぐむのだが まぁ無意味だ。
「うぅー、そう言われちゃ仕方ないけどさぁ、やっぱほら、なんか釈然としないじゃない
SONY大規模リストラの報道直後に『矢沢はブラビア』とか見事すぎるコンボだけどさ、じゃあお金もらってるからCM流します もらってるんで悪いことは報道しませんよ じゃ余計にどうしようもないのはわかってるんだけどねぇ……
うーん ほら、あれだ 人間としてどうよ?って感じ?」
彼女の口から人間云々なんて出るとは 今夜は雪でも降るんじゃなかろうか。
利益関係が成り立つから不都合を伝えない 仕組みとしては正論だ。 だが道としては明らかに外れているわけで。
かといって提灯書いたそばからブラックなニュースばかりではあまりにも滑稽か──
「ところでさ、組曲とか流星群はどこへ消えた? MADのMADにハマって元ネタでMADネタ連呼する奴ってなんなの?死ぬの? そもそもこの元ネタなによ」
とまぁ、そんなことを考えている間に彼女は本題に戻っていたようだ── そしてまた脱線したようだ。
「いやはや、何のことやらわかりませんが "自称"一般大衆を標榜しているマスメディアでさえそうなんですから、あくまで一般個人間での流行なんてそのくらいの物なんでしょうねぇ」と、推測して話を進めるが 組曲と聞いてもホルストやチャイコフスキーしかわからない 流星群?しし座流星群はあと何十年後だったか。
「やっぱそうなんだよねぇ でもさ、個人的には元ネタ知らずしてネタを語るなと言いたいわけで。 とはいえ最終的には原理主義的なことに行き着いちゃうから難しいんだよねぇ
最低でもさ、一次と二次、ひいては三次ソースであることの認識は必要だと思うんだよね」
漸く彼女の中での本題に行き着いたということだろうか。 彼女はなおも続ける。
「そうそう組曲よ組曲。 原曲揃えるのにどれだけかかったと思ってるのよ 森のキノコにご用心を一次ソースにしてそれの二次をさらにやったのがアレってどんだけだし クリティウスなんかもはや二次ですらなくなってる」
……とりあえず日本語で話してもらえないだろうか
「……僕にはさっぱりわかりませんが、ワルキューレの騎行を地獄の黙示録だって騒いでるようなもの ということでよろしいのでしょうか?」
「そうそう、そんな感じ エアーマンなんか確かに一次を聞けばまんまわかるんだけど、あまりにも二次が一人歩きしすぎてる」 いつになったら彼女の言っていることを理解できるんだろうか。 いや、永遠に無理なのかもしれない。
「まぁ、そもそも聖書からして世界最古クラスの同人誌なんだし、もうどうでもいいんだけどねぇ」
さすがに、そればっかりは僕の前で言わないでほしいものだが……
「ま、まぁそれについてはノーコメントということで。 それより賞味期限が今日までのケーキがあるんですが、いかがでしょうか? この前テレビでやってた人気店のやつだそうですよ」
彼女は目を輝かせて。
「ケーキ? ……ま、まぁたまには流行に乗ってみるのも悪くはないよね 私みたいにいろいろ見てるとさ、その一瞬一瞬をじっくり眺めてみるのも必要だからね」
…………
……
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