またまた少ないかも……
「どう言うことだ、織田は同盟を結ぶために我々と和議を結ぶのではなかったのか!」
「まだ同盟を結んだと言う話は聞いてないぞ!」
「どうなっているんじゃ…」
いつもと同じ大広間のはずなのに、空気の揺らぎが凄まじかった。
父上が死んだ後の戦と同じ空気だ。
皆が落ち着きがなく、慌てふためいている。
「殿、陣図はこちらに」
久作が陣図を広げてくれるが、テンパっているのか上下を逆さまにしたり戻したりを繰り返している。
おぉ大丈夫か。顔めちゃくちゃ真顔だけど。
出会った頃の半兵衛を思い出すな。
かく言う俺も大焦りだけど。
ちょっ…と聞いてた話と違いますね。
信長さん?早すぎないですか?
久作がテンパりつつも陣図を使って説明してくれる。
「信長は犬山城に脇目も振らず、木曽川に向かっているようです」
「十郎左衛門殿は何をなされているのだ!」
説明しよう!十郎左衛門殿とは誰なのか!
十郎左衛門殿とは織田下野守信清殿のことである。
え、織田?と思いましたよ、最初は。実際信長のいとこらしい。
でもなんか領地争いでゴタゴタした結果、こっち側についてくれた。
奥さんが信長のお姉さんらしく、信長結構怒っているらしい。
「集められる兵はいかほどだ」
常陸介が声を荒げながら聞く。
確かに前回はすごい少なかったからね。五千とか。
「……四千」
「ん?」
なんか今ものすごい少ない数字が聞こえたような。
「悪いが、もう一回」
「四千です、殿」
うおぅ……すくなぁい……
前回よりすくなぁい……
「ど、どうしたものか」
「うーん……」
みんな黙っちゃった。
そんな空気の中、小姓から方向を受けた久作が言いづらそうに呼びかけてきた。
「あの……大変申し上げにくいのですが」
「なんだ!こんな時に!」
「六千の兵を……信長自ら率いているようにございます」
もう終わりです。もうどうにもなりません。
殿様本人が軍を率いているってもうやばいじゃん。しかも信長じゃん。
信長って……なんか……もうやばいじゃん。どうすごいのか知らんけど。
お通夜状態である。
「……殿、よろしいですか」
「どうした半兵衛」
みんなの顔色がどんどん悪くなる中、半兵衛が俺の前に出てきた。
半兵衛の表情はいつも通りだった。
いつもと同じどこか掴みどころのない顔だった。
「この戦、私に任せてはくれませぬか」
そう言った半兵衛はゆっくり頭を下げた。
「何を言う半兵衛!」
最初に声を上げたのは六郎だった。
その顔は怒りとも何とも言えないものだった。
「己が何を言っているのか、分かっているのか!」
「分かっておる、そのように騒ぐな」
ぴしゃりと言い切った半兵衛は六郎に向いていた体を俺に向け直す。
そして真っ直ぐ俺を見つめる。
「殿、半兵衛に任せてはくださいませぬか」




