先手必勝
――これ以上兵が死ぬのを我が主は望んでおられません
「あれだけではないと思いますが」
「ではなんだ」
そう聞くと半兵衛は飛車を手にとったまま説明を始める。
返事を三日以内に出すということで話はまとまり、一旦丹羽殿には帰ってもらった。
皆もとりあえず解散し午後にまた集まろうとなったが、部屋に戻ろうとした俺を半兵衛が引き留めた。
その場ではあんまり…と言うから俺の部屋で話すことになった。
ちなみにこの部屋には俺と半兵衛、そして俺たちについてきた六郎がいる。
「もちろん、兵の消耗は大きな理由でしょう。我らも散々やられましたが、織田の兵も五体満足というわけにもいかないかと」
「しかしそれだけで、あの男が和議を持ち掛けてきましょうか?私が考える信長はこれ程度の犠牲では戦を辞めるような男ではありません」
確かに。
正直言って先の戦での織田軍の戦死者はこの時代にしては少ないほうだ。
まぁ順調とはいかないでも、あの信長がよし和議を結ぼう!ってなるような戦ではない。
「何か裏がある、ということか」
「はい」
うーん。
なんだろう…信長が戦を辞めてまでしたいこと。
考えれば考えるほど分からない。
「六郎、早くしろ。日が暮れてしまう」
「まだ昼餉にもなっとらんわ!」
二人は相変わらずギャーギャー言っている。
もうあの人たち十九歳と十八歳だよね?
落ち着きないな。
「王手」
「なっ!」
あ、負けた。
「そのようなわけで、殿。私の考えを述べてもよろしいでしょうか」
悠々と勝利を手にした半兵衛がこちらに向き直す。
六郎はまだフリーズしたままだ。
「織田はどこか他の国、例えば浅井や朝倉と同盟を結ぶ気ではないでしょうか」
「同盟?浅井や朝倉と?」
「はい」
浅井朝倉はこの国、美濃とお隣さんだ。
一応仲良くやっており、俺の母親も浅井家の出身である。
美濃とお隣ということは尾張ともお隣ということで…
「何が目的だ」
「恐らくは…我らへの牽制でしょう。三国に囲まれてしまえば美濃に勝ち目はありませぬ」
てなると同盟してもしなくても地獄…?
だって同盟結んだら織田浅井朝倉にプレッシャーかけられて、結ばなかったらこのまま織田軍にずっとジワジワ攻撃される。
え、どうすれば?
「策は一つしかございませぬ」
え、何ですか。
「織田との同盟が結ばれ次第、直ぐに浅井朝倉と同盟を結びましょう」
「織田より先手先手で行きます」




