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ずきんちゃん×5

掲載日:2026/04/03

ずきんをかぶった5人のきょうだいのお話です。


むかしむかし、風も無くお天気の良いうららかな草原に、ひとりの女の子が歩いていました。今で言うと小学校入学したてくらいの年齢でしょうか。


白いブラウスに赤いスカート、白いハイソックスに赤い靴。赤いケープに赤い頭きん……もうおわかりでしょう、その子の名前は赤ずきんちゃんです。


草原の遠くのほうから、赤ずきんちゃんのほうへ数人がかけよってきました。赤ずきんちゃんは五つ子でした。顔も声もそっくりな女の子ばかりの五人きょうだいで、お父さんとお母さんは、きょうだいが生まれたばかりの頃、その子たちのわずかな特徴から名前をつけました。


「あなたは特に色白で赤い洋服が似合いそうね。赤ずきんちゃんにするわ」

「君はみんなより少しだけクールな唇をしているね。青ずきんちゃんにしよう」

「あなたは少しだけ色黒かもしれないわね。明るい黄色が似合いそうだわ。黄色ずきんちゃんね」

「君の頬はうっすらと桃のようなピンク色だね。桃ずきんちゃんだね」

「あなたは草原のようなさわやかな顔つきをしているわ、緑ずきんちゃんね」


草原の五人のきょうだいは、輪になり相談を始めました。


「何してあそぼう」


赤ずきんちゃんが問いかけると、桃ずきんちゃんが答えました。


「お花畑でかくれんぼしない?」


以前、お父さんにお花畑まで連れて行ってもらい、色とりどりに咲く花々に紛れてかくれんぼした楽しい思い出がありました。みんなも賛成し、お花畑に行くことにしました。お花畑にはおばあさんの家もありますから、久しぶりにおばあさんが焼くお菓子をごちそうになれます。


お花畑に行くためには、森を抜けて行かなくてはなりません。五人は森の入り口に向かって歩きはじめました。森の入り口の薄暗い木陰には、じっとこちらを見る黒い影がありました。


「腹へったなぁ――」


一匹の大きなオオカミが、赤ずきんちゃんたちのほうを見ています。大きく裂けた口元からはよだれが流れ、目には五人の姿が映りこみ、らんらんと輝いています。久しぶりの獲物を前にした獣は、全員を喰ってしまうための計画をねっていました。


五人は森の奥へと進んでいきました。オオカミは気づかれないように木陰に身を隠しながら後を追います。しばらくゆくと小さな谷がありました。谷には古びた吊り橋がかかっていましたが、ロープはあちらこちらほつれていて、五人同時に渡ることはできそうにありません。


赤ずきんちゃんを先頭に、一人ずつ吊り橋を渡ることにしました。最後尾の青ずきんちゃんが吊り橋に踏み込んだ、その時です。


「がぉ――!」


大きな口を開けてオオカミが襲いかかりました。青ずきんちゃんは吊り橋を急いで渡ろうとします。対岸では四人が驚いた表情で叫びました。


「はやく、はやく――!」


オオカミが吊り橋に足を踏み入れた瞬間、その重さに耐え切れずロープが切れました。青ずきんちゃんとオオカミは、滝つぼにドブンと落ちてしまいました。


四人はびっくりして青ずきんちゃんを呼びましたが、返事はありません。切り立った崖の下ですから助けに行けるはずもありません。四人はしばらく泣いていましたが、だんだん怖くなり、早くおばあさんの家に行きたくなりました。


「はやくおばあさんの家に行って、助けを呼んでもらおうよ」


緑ずきんちゃんの言葉に三人はうなずき、先へと進むことにしました。


しばらく進むと、森全体が甘い香りの霧に包まれた少し広い場所に出ました。大きな桃の木が見えてきました。枝にはたくさんの実がなり、手の届きそうな高さまでたわんでいます。


「桃の木さん、いただきます」


四人は良く熟した桃をもぎ取り、喉をうるおしました。


「桃の木さん、ありがとうね」


桃ずきんちゃんがお礼を言って、また霧の中を歩きはじめました。しかし、歩きながら話をしていると、桃ずきんちゃんの声が聞こえません。三人が振り返ってみると、最後尾にいた彼女の姿は消えていました。


「桃ずきんちゃぁん!」


大きな声で呼んでみましたが返事はありません。三人は怖くなり、また泣きながらかけ出しました。


走り疲れと泣き疲れで、三人は座り込んでしまいました。木立の中に、中が空洞になった古い大きな木が立っており、ミツバチが巣をつくっていました。黄色ずきんちゃんは巣に寄り添いました。


「ミツバチさん、ちょっともらうね」


手を差し入れると、たっぷりとハチミツをはさみ込んだウェハースのようなかたまりが出てきました。三人で分けて食べると、なんだか元気が出てきました。


大きな木の裏側では、オオカミがタイミングを見計らっていました。赤ずきんちゃんと緑ずきんちゃんが立ち上がり、道端のキノコを見に行った、その時です。


「ガオー!」


うなり声を上げたオオカミは、座っていた黄色ずきんちゃんを捕まえ、連れ去って行きました。赤ずきんちゃんと緑ずきんちゃんは、もう逃げるしかありません。


二人がしばらく進むと、背丈ほどもあるシダが生い茂る湿地帯にたどりつきました。


「あの山が目印だから、こっちよ」


赤ずきんちゃんを先頭にシダをかき分け進み、湿地帯を抜けた時、後ろに緑ずきんちゃんの姿はありませんでした。何度呼んでも返事はありません。


「はやく助けを呼びにいかなきゃ!」


赤ずきんちゃんは一人、森の出口へと急ぎました。


森を抜けると、向こうにお花畑とおばあさんの家が見えました。しかし、そこへオオカミが飛び出してきたのです。一生懸命に走りますが、子供の足ではかないません。


「キャー、おばあさん、たすけて――!」


悲鳴を上げましたが、すぐにオオカミに口を塞がれてしまいました。


一方、崖の下の滝つぼです。

 水流に飲み込まれた青ずきんちゃんは、気を失う直前に祈りました。


「お水さん、たすけて」


その瞬間、水底から湧き出た巨大な気泡が彼女を包み込み、ゆっくりと水面へ運びました。オオカミは土手で淵を見張っていましたが、彼女の姿が見えないため、流されたと思い込んで立ち去りました。青ずきんちゃんは土手に打ち上げられて目を覚まし、洞穴に身を隠しました。


オオカミは霧の向こうで桃ずきんちゃんをさらっていました。食べようとしたその時、彼女は目を閉じて祈りました。


「桃の木さん、たすけて」


すると桃の木が心地よい香りの霧を吐き出し、オオカミを猛烈な眠気が襲いました。オオカミがうとうとしている間に、桃ずきんちゃんは逃げ出しました。


次にオオカミは黄色ずきんちゃんを連れ去りました。食べようとした瞬間、彼女は祈りました。


「ミツバチさん、たすけて」


「イタタタタッ!」

 大群のミツバチがオオカミを襲いました。毒針の猛攻に耐えかねたオオカミは逃げ出し、黄色ずきんちゃんは難を逃れました。


さらにオオカミは、湿地帯で緑ずきんちゃんをさらいました。大きな口を開けた時、彼女は叫びました。


「つる草さん、たすけて」


足元から勢いよく伸びたつる草が、オオカミの手足をがんじがらめに縛り上げます。その隙に緑ずきんちゃんは身を隠しました。


失敗続きで空腹が極限に達したオオカミは、最後の一人、赤ずきんちゃんを捕らえ、お花畑へ連れ込みました。


「お花さん、お花さん、お願い、たすけて」


赤ずきんちゃんが祈ると、お花畑の花びらが一斉に角度を変えました。露に反射した太陽の光が、収束してオオカミの目を焼きます。眩しさに耐えかねたオオカミは、ついに村の方へと逃げ出しました。


悲鳴を聞いたおばあさんは猟師たちを呼びました。


「孫たちに何かあったみたいだから、助けておくれ」


猟師たちが駆けつけると、正面からオオカミが走ってきます。

 ――バン、バン!

 乾いた銃声が響き、オオカミは退治されました。


五人のきょうだいは無事に助け出され、お花畑でかくれんぼを始めました。それぞれが得た不思議な力を使い、水を飛ばしたり霧に隠れたり、まるで超能力大会のようです。


しかし、お花畑のはずれの小川では、異変が起きていました。

 退治されたオオカミの骸が、どす黒い血液を流しながら脈打ち始めたのです。ドクン、ドクン……。銃創はまたたく間に塞がり、犬歯は鋭いキバへと変貌しました。


カチリ、と目を見開いたオオカミの瞳は、金色に輝いていました。

「ウォォォ――!」

 全身に力を込めて立ち上がったそれは、もう以前のオオカミではありません。本能だけで人を襲う、不死身の怪物と化していました。


オオカミは村の近くにいたおじいさんを襲いました。鎌で抵抗され肩を割られても、傷口は瞬時に再生します。おじいさんは首筋を噛まれ、即死しました。感染力はないようですが、その破壊力は凄まじいものでした。


お花畑で遊んでいた少女たちは、一回り大きくなったオオカミが迫るのに気づきました。


「戦いましょう」


緑ずきんちゃんが言いました。逃げ切れないと悟った少女たちは決意を固めます。


桃色の霧がオオカミを巻き、ミツバチが毒針を突き立てます。しかし、死んでいるオオカミに痛みはありません。つる草が足を止め、頭部を水のかたまりが包み込みますが、呼吸の必要がない怪物は止まりません。


赤ずきんちゃんが叫びました。


「みんなを、たすけて!」


花びらの竜巻がオオカミを吹き飛ばし、数十メートル先まで叩きつけました。それでもオオカミは立ち上がり、よだれを垂らして迫ってきます。


少女たちは、天を仰いで祈りました。


「神様、おねがい――!」


五人の色が混ざり合った光の渦が天へと昇り、雷雲を呼び寄せました。

 ――バリバリバリッ!

 巨大なイカズチがオオカミを貫き、怪物は真っ黒焦げになって倒れました。


その様子を遠くから見ていたおばあさんは、誇らしげに彼女たちの名前を呼びました。


「超能力戦隊 子レンジャー!」

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