白い集会
大広間の扉が開いた瞬間、翔は息を飲んだ。
広い部屋の中央に、教壇のような低い台が置かれている。
その周りを、白いローブを纏った男たちが規則正しく整列していた。
数十人、いやもっとだ。
全員が同じ方向を向き、同じように静かに立っている。
笑みは浮かべているが、目はどこか遠くを見ているようだ。
空気は重く、でも奇妙に静か。
まるで、何かを待つ儀式の最中のような。
間違いない。
これは宗教だ。
翔の視線が、悠に移った。
悠はすでに列の端に立ち、教壇をじっと見つめている。
その横顔は穏やかで、まるでここが当たり前の場所であるかのように。
取り込まれた。
完全に、取り込まれてしまった。
どうすればいい。
どうすれば悠をここから連れ出せる。
答えは出ない。
大声で叫べば、周りの男達が一斉に振り向くだろう。
逃げようと手を引けば、悠自身が抵抗するかもしれない。
何もできない。
自分の不甲斐なさが、胸を締めつける。
もっと早く、気づけなかったのか。
「おはよう」
ただ、それだけの言葉をかけるだけでよかったんじゃないか。
朝の駅で、テニスコートのベンチで、ファミレスの席で。
「おはよう、今日も練習頑張ろうぜ」
そんな当たり前の挨拶を、もっとちゃんとしていれば。
悠はこんな場所にのめり込まずに済んだんじゃないか。
そうだ。
「頑張ってるね」
あの言葉でもよかった。
テニスが下手でも、女の子と話せなくても、
ただ「頑張ってるね」と言ってやれば。
それだけで、悠は自分と同じ場所に留まってくれたかもしれない。
高校時代の仲間たちが、自分にかけてくれた言葉を思い出す。
あれは、ただの慰めじゃなかったのか。
自分を、この世界に繋ぎ止めるための、ささやかな言葉だったのか。
後悔が、頭の中でぐるぐると回る。
遅すぎた。
もう、どうすることもできない。
その時、無常なアナウンスが大広間に響き渡った。
「それでは、おちんちん教、教祖様の演説です」
『教祖様』
やはり宗教だ。
宗教確定だ。
悠は完全に、宗教にのめり込んでしまった。
自分があまりにも無力であることを、翔は骨の髄まで実感した。
だが、ふと気づく。
ん……?
教祖様の前……なんて言ってた……?
壇上の脇から、一人の男がゆっくりと姿を現した。
彼が教祖様だろう。
ーーだが、全裸だ。




