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都市が巨大ロボになり、パイロットは住民だった  作者: RUNE-404


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第8話 立ち入り禁止区域の中心で

 午前中のうちに、呼び出しがかかった。


 昨日の現場に近い区画で、関係者への聞き取りをするらしい。名目は「安全確認」。だが、実際は事故の原因を洗い出すための作業だ。


 俺は、立ち入り禁止のテープをくぐった。


 昨日まで、普通に歩いていた場所だ。

 今は、数人の警備員と、測量機材、それから再開発会社のロゴが入った車が並んでいる。


 その中心に、スーツ姿の男が立っていた。


 背は高くない。派手さもない。

 だが、周囲が自然と彼を避けて動いているのが分かる。


 現場責任者――神谷。


「君が、昨夜ここにいた作業員だね」


 呼び止められて、足が止まる。

 名前は出ていないのに、俺のことだと分かった。


「はい」


 それ以上、言葉が続かなかった。

 否定する理由も、誇る理由もない。


 神谷は、俺の顔をじっと見た。

 疑うというより、測っている視線だ。


「逃げなかったそうだね」


 事実を確認するだけの口調。

 責める色はない。


「……たまたまです」


「たまたま、か」


 神谷は視線を外し、足元の地面を見た。

 アスファルトに残る、かすかな歪み。


「正直に言う。今回の件、原因がはっきりしない」


 彼は、周囲に聞こえないよう、声を落とした。


「老朽化だけで説明するには、止まり方が綺麗すぎる」


 胸の奥が、きしりと鳴る。


「だが、異常な装置も、操作記録も見つかっていない。だから今は――」


 神谷は、俺に視線を戻した。


「“偶然”として処理する」


 救われた、と一瞬思った。

 だが、その続きが来る。


「ただし」


 間があった。


「君の名前は、記録に残る」


 淡々とした宣告だった。


「中心部にいて、最後まで離れなかった作業員として」


 俺は、何も答えなかった。

 答えようがない。


「心当たりは?」


 探るような質問。

 罠でも、誘導でもない。


 俺は、首を横に振った。


「……分かりません」


 それは、嘘じゃなかった。


 神谷は、短く息を吐いた。


「そうか」


 それ以上、深追いはしなかった。

 だが、視線だけは外さない。


「この区域には、しばらく近づかない方がいい」


「……仕事なので」


「仕事か」


 その言葉に、皮肉はなかった。


「なら、気をつけてくれ。次は、偶然で済まないかもしれない」


 そう言って、神谷は踵を返した。


 俺は、その背中を見送る。


 立ち入り禁止区域の中心で、

 俺だけが、昨日と同じ場所に立っていた。


 足元から、ほんの一瞬、微かな振動が伝わる。


 ――やめろ。


 誰にも聞こえない声で、そう思った。


 振動は、何事もなかったように消えた。


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