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都市が巨大ロボになり、パイロットは住民だった  作者: RUNE-404


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第7話 街は、俺を離さない

 朝になっても、街はそこにあった。


 当たり前のことのはずなのに、目を開けた瞬間、俺は少しだけ身構えてしまった。窓の外に広がる景色が、昨日までと同じ形をしていることに、安堵する。


 団地の壁は崩れていない。

 向かいの建物も、傾いてはいない。


 ……終わっていない。


 それだけで、胸の奥がざわついた。


 スマホを確認すると、通知がいくつも溜まっていた。ニュースアプリの見出しが、昨夜の出来事を淡々と並べている。


《老朽インフラ点検中に地盤沈下の恐れ》

《迅速な対応で被害は最小限》

《人的被害なし》


 どの記事にも、街の名前は出てこない。

 「再開発予定区域」とだけ書かれている。


 迅速な対応。

 誰が、何をしたのかは、どこにも載っていなかった。


 俺はスマホを伏せ、天井を見上げた。

 昨夜の振動が、まだ体に残っている気がする。


 どくん、どくん。


 そんな音は、もちろん聞こえない。

 それでも、耳の奥で幻みたいに反響していた。


 外に出ると、街は妙に静かだった。

 避難の名残で、通りには人が少ない。工事車両と警備員だけが目立つ。


 立ち入り禁止のテープが、あちこちに張られている。

 昨日まで通れた道が、当たり前みたいに塞がれていた。


 「事故があった場所」というだけで、線が引かれる。


 俺はその線の外側を歩きながら、違和感を覚えた。

 足元の感触が、妙に安定している。


 昨日、確かに、ここは沈みかけていたはずだ。


 団地の一階部分に近づくと、亀裂の跡が見えた。補修材が雑に塗り込まれている。応急処置。壊れなかったから、それでいいという判断だ。


 佐伯さんの店の前まで来て、足が止まった。


 シャッターは、いつも通り半分だけ上がっている。

 中から、ラジオの音が漏れていた。


 ――助かってる。


 そう思った瞬間、胸の奥が少しだけ熱くなる。


 その時だった。


 足元から、ほんのわずかに、震えが伝わった。


 錯覚かと思うほど、弱い。

 けれど、確かにあった。


 俺は、誰にも気づかれないように、その場で立ち止まった。


 振動は、すぐに消えた。


 代わりに、はっきりとした感覚が残る。


 ――見られている。


 人の視線じゃない。

 もっと広くて、重たいもの。


 俺は、ゆっくりと息を吐いた。


 何も終わっていない。

 街も、昨日の出来事も。


 そしてたぶん、

 俺自身も。


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