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都市が巨大ロボになり、パイロットは住民だった  作者: RUNE-404


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第6話 それでも、ここは俺の街だ

 揺れは続いている。

 けれど、もう逃げ惑う音は遠かった。


 避難する人たちの背中が、通りの向こうへ消えていく。誰も振り返らない。振り返る理由がないからだ。この街は、もう終わっている。そう決まっている。


 俺は、地下への立ち入り口の前に立った。


 鉄扉が、小さく震えている。

 さっきまで気づかなかったが、触れると温かい。機械の熱とは違う、人の体温に近い感触だった。


「……大丈夫だ」


 誰に向けた言葉なのか、自分でも分からない。

 それでも、口に出さずにはいられなかった。


 ここで生きてきた。

 名前も知られないまま、数に数えられない存在として。


 それでも、この街で笑ったことがある。

 誰かと話し、働き、眠った。


 ――全部、なかったことにされるのは、嫌だ。


 どくん。


 足元が応えるように揺れた。

 強くはない。ただ、確かに。


 俺は、地面に手をついた。


 祈りでも、命令でもない。

 ただの事実を、受け入れただけだ。


「ここは……俺の街だ」


 次の瞬間、耳鳴りがした。

 街全体が、一斉に息を吸い込んだみたいに。


---止まったはずの崩壊


 地響きが、止まった。


 完全に、というわけじゃない。

 崩壊へ向かっていた動きが、途中で踏みとどまった、そんな感覚だった。


 団地の外壁に走っていた亀裂が、広がるのをやめる。

 商店街の看板が、きしむ音を立てながらも、落ちない。


 電灯が、一つ、また一つと点いた。

 一瞬だけだが、通りが明るくなる。


 周囲から、ざわめきが上がった。


「……止まった?」


「今の、何だ?」


 説明できる人間は、誰もいない。

 俺自身も、分からない。


 ただ、はっきりしていることが一つあった。


 ――さっきまで、崩れるはずだった。


 それが、止まった。


 俺は、手のひらを見つめた。

 震えている。怖い。なのに、不思議と後悔はなかった。


 遠くで、再開発側の男たちが集まっているのが見える。こちらを指差し、何かを話している。視線が、突き刺さる。


 関係者として、記録されるだろう。

 厄介な場所に、厄介なタイミングでいた人間として。


 それでも。


 足元から伝わる微かな振動は、まだ消えていなかった。


---街は、まだ生きていた


 警告音が鳴り、再び避難指示が出る。

 今度は、より強い口調で。


 俺は、その場を離れなかった。


 地下への入口に手を置く。

 振動は、弱く、静かに続いている。


 さっきまでとは違う。

 暴れるような揺れじゃない。


 ――生きている。


 そんな言葉が、自然と浮かんだ。


 ばかばかしい。

 街が、生きているはずがない。


 それでも、この感覚を、否定できなかった。


 俺は、ゆっくりと息を吐く。


 失ったものは、きっと多い。

 仕事も、立場も、今まで通りではいられない。


 それでも。


 足元の街は、確かに、ここにあった。


 壊されるのを、待っているだけの場所じゃない。


 ――街は、まだ生きていた。


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