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都市が巨大ロボになり、パイロットは住民だった  作者: RUNE-404


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第5話 逃げても、誰も責めない

 拡声器の音が、通りの向こうから響いた。


「こちら再開発現場。安全確認のため、周辺住民は速やかに避難してください」


 落ち着いた声だった。慣れている。こういう時のための言い方だ。


 人の流れが、ゆっくりと一方向にできていく。誰かに背中を押されるように、俺も数歩、そちらへ動いた。正しい判断だ。逃げるのは、間違いじゃない。


 実際、誰も俺を引き止めない。

 誰も、残れとも言わない。


 道の角で、佐伯さんの店が見えた。シャッターは半分まで下りている。中で灯りが揺れ、人影が動いた。避難の準備をしているんだろう。


 胸の奥で、何かが引っかかった。


 ――このまま行けばいい。


 そうすれば、何も失わない。

 仕事も、命も、責任も。


 揺れが一段、強くなる。

 悲鳴が上がり、誰かが転んだ。


 俺は立ち止まった。


 足元の振動が、さっきよりはっきり伝わってくる。恐怖より先に、奇妙な安心感があった。崩れない、と分かっているみたいに。


 そんなはずはないのに。


「早く! 離れてください!」


 ヘルメットを被った男が、こちらに手を振っている。再開発側の人間だ。顔に焦りはあるが、敵意はない。彼の言うことは正しい。


 逃げても、誰も責めない。


 俺は、もう一歩、前に出た。

 その瞬間、足元の振動が、ぴたりと止まった。


 ざわめきが、一瞬だけ静まる。


 俺は、振り返った。


 工事フェンスの向こう、商店街、団地、地下へ続く入口。

 どれも、今にも壊れそうで、必死に耐えているように見えた。


 ――どうせ、いらない街なんだろ。


 誰かの言葉が、頭の中で反響する。


 だったら。


 俺は、避難の流れから外れ、来た道を戻った。


 背後で、誰かが俺の名前を呼んだ気がした。

 気のせいだと、聞き流す。


 逃げ道は、もう十分にあった。

 今ここに残るのは、俺の選択だ。


 その選択を待っていたみたいに、

 地面が、再び、どくんと脈打った。


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