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都市が巨大ロボになり、パイロットは住民だった  作者: RUNE-404


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第44話 欠けたまま、動く

 再起動は、静かに行われた。


 警告音も、宣言もない。

 朝の街は、昨日とほとんど変わらない顔をしている。


 それでも、俺には分かった。


 足元に、微かな揺れが戻っている。

 以前より浅く、途切れ途切れで、一定じゃない。


 ――欠けている。


 街は、完全には戻っていない。


---


 最初に変化が出たのは、駅だった。


 混雑する時間帯。

 以前なら、街が自動で人流を分散させていた。


 今日は、しない。


 表示は出る。

 案内はある。


 だが、強制力がない。


 人は、迷い、

 立ち止まり、

 それでも、自分で動く。


「こっち空いてますよ」


 誰かが声を上げる。

 別の誰かが、流れを作る。


 効率は、七割程度。

 数字だけ見れば、悪化だ。


 それでも、

 混乱は起きていない。


---


 昼前、再開発区域の外れで、小さな事故が起きた。


 工事車両の接触。

 怪我はない。

 ただ、道が塞がれた。


 街は、即座に迂回路を提示しない。


 数秒の“間”がある。


 警備員が判断する。

 現場責任者が声を張る。


 街は、その判断を――上書きしなかった。


 それを見た瞬間、

 胸の奥が、静かに熱くなった。


 街が、

 人間の判断を、

 待っている。


---


 神谷から連絡が入る。


《再起動、確認した》


《判断モジュール、

 意図的に制限している》


 短いが、重い文面だ。


《効率は落ちる》


《苦情も増える》


 それは、予想通りだ。


《それでも、

 これでいいのか》


 俺は、少し考えてから返した。


《まだ分からない》


《でも、

 止まっていた時よりは、

 前を向いている》


 すぐに返事は来なかった。


---


 夕方、あの交差点を通る。


 信号は正常だ。

 街灯も、昼間は点かない。


 完璧に見える。


 だが、あの日の緊張は、まだ残っている。


 俺は、立ち止まらずに渡った。


 足元が、ほんの一瞬だけ揺れる。


 どくん。


 確認。

 監視ではない。


 街は、

 「見ているか」と、

 聞いてきている。


 俺は、心の中で答えた。


 見ている。

 だが、全部は任せない。


---


 夜、屋上。


 街の灯りは、以前より少し不揃いだ。

 最適化された美しさはない。


 だが、

 人の生活が、そのまま見える。


 足元の揺れは、安定しない。

 時々、途切れる。


 それが、今の街だ。


 欠けたまま、

 判断し、

 迷い、

 人を待つ。


 俺は、フェンスにもたれず、

 ただ立って街を見下ろした。


「……これでいい」


 誰に向けた言葉でもない。


 街は、返事をしない。


 だが、

 その沈黙は、

 止まっていたときの無音とは違う。


 動いている沈黙だ。


 完全でも、

 安全でも、

 最適でもない。


 それでも、

 人間と同じ速度で、

 考え続ける存在。


 この街は、

 ようやく――

 そういう場所になり始めていた。


 そして、

 それを見続ける役割が、

 まだここにあることを、

 俺は確かに感じていた。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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