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都市が巨大ロボになり、パイロットは住民だった  作者: RUNE-404


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33/50

第34話 見ることを、やめない

 翌日から、街の動きは変わらなかった。


 警告音は鳴る。

 最適化は行われる。

 ログは、いつも通り緑で埋まっていく。


 ただ一つだけ、違う点があった。


 ――俺が、見るのをやめなくなった。


 介入はしない。

 拒否もしない。

 受け入れも、要求しない。


 その代わり、

 起きたことを全部、見ていた。


 誰が困って、

 誰が助けて、

 誰が何も言わずに去っていくのか。


 数字にならない部分を、

 意識的に拾い続けた。


---


 再開発区域の外れで、

 立ち退きの説明が行われていた。


 書類は整っている。

 補償も出る。

 法的には、何の問題もない。


 だが、説明を受けている老人の手は、

 微かに震えていた。


「ここ、長くてな」


 それだけ言って、

 それ以上は何も話さない。


 街は、動かない。


 当然だ。

 これは、事故でも危機でもない。


 俺は、少し離れた場所で、その様子を見ていた。


 胸の奥が、静かに重くなる。


 介入すれば、

 街は反応しない。


 だが、見ないでいると、

 何も残らない。


---


 夜、団地の部屋。


 机の上に、ノートを広げる。

 久しぶりだった。


 書くのは、数字じゃない。


・公園のブランコ

・立ち退き説明で黙った人

・遠回りを選んだ通勤路

・減った街灯の数

・増えた「大丈夫です」という言葉


 意味は、今はない。

 役にも立たない。


 それでも、書く。


 街が記録しないものを、

 俺が記録する。


 足元から、反応はない。


 だが、書き進めるうち、

 胸の奥の重さが、少しだけ整っていく。


 これが、

 俺に残された役割なのかもしれない。


---


 数日後、神谷に呼ばれた。


「最近、現場に出ているな」


「見てるだけだ」


「それが問題だと言う人もいる」


 神谷は、正直だった。


「君は判断役だ。

 観測者じゃない」


 俺は、首を振る。


「判断するために、見てる」


 神谷は、少しだけ考えてから言った。


「……街は、君を必要としていない」


 予想していた言葉だ。


「それでも、

 人は、君を見ている」


 意外な言葉だった。


 説明会のとき。

 公園のとき。

 立ち退きのとき。


 俺が、何もしなくても、

 “そこにいる”ことを、誰かが覚えている。


 神谷は、静かに続けた。


「街は合理を選ぶ。

 だが、人は、

 合理だけでは動かない」


 それは、警告にも、提案にも聞こえた。


---


 帰り道、

 足元が、ほんの一瞬だけ揺れた。


 起動でも、反応でもない。


 **同期**。


 街が、

 俺の“観測”を、

 完全には無視していない。


 そう感じた。


 俺は、立ち止まり、

 地面に触れないまま、言葉を落とす。


「……見るだけだ。

 それでも、いいだろ」


 返事はない。


 だが、揺れは、消えなかった。


 街は、まだ進んでいる。

 最適化を止めない。


 それでも。


 俺が見続ける限り、

 数字の外側は、消えない。


 それが、

 新しい役割になるかどうかは、

 まだ分からない。


 ただ一つ、確かなことがある。


 **俺はもう、

 街から目を逸らさない。**


 それだけで、

 この街に残る理由としては、

 十分だった。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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