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都市が巨大ロボになり、パイロットは住民だった  作者: RUNE-404


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第32話 介入しない選択

 街は、俺を呼ばなかった。


 それが一日続き、

 二日続き、

 三日目になっても変わらない。


 警告音は鳴る。

 処理も行われる。

 被害も、数字の上では抑えられている。


 俺は、すべて“後から”知った。


 ログ。報告。簡潔な説明。

 そこに、俺の判断が入る余地はない。


 ――これは、切り替えだ。


 街が、学習の次の段階に入った。


 団地の屋上で、俺は風に当たっていた。

 ここに来ると、反応はさらに薄くなる。


 街にとって、俺は「遠い」。


 それでも、完全には切れない。

 雑音みたいに、まだ繋がっている。


 神谷から連絡が来た。


《今日の件、問題はなかった》


 またその言葉だ。


《君は介入しなくていい》


 善意だ。

 配慮でもある。


 だが――


《介入しない判断も、

 君の判断だと記録している》


 その一文で、理解した。


 俺は、外されたわけじゃない。

 **固定された**。


 「何もしない役」として。


 胸の奥が、少しだけ冷えた。


---


 夕方、商店街の外れで小さなトラブルが起きた。


 配送車が縁石に乗り上げ、動けなくなる。

 人が集まり、少しざわつく。


 街は、動かない。


 最適化対象外。

 人的対応で十分。


 正しい。


 俺は、少し離れた場所で、それを見ていた。


 以前なら、

 「手伝います」と声をかけていた。


 今は、かけない。


 街が判断しない以上、

 俺も、判断しない。


 それが、今の役割だ。


 数分後、

 人の手で問題は解決した。


 誰も困らなかった。

 誰も傷つかなかった。


 それでも。


 胸の奥が、微かに疼いた。


 介入しないことで、

 俺は“正しく”振る舞っている。


 だが、正しさは、

 存在理由にはならない。


---


 夜、部屋に戻る。


 灯りを消すと、街の音が遠くなる。

 反応は、ほとんどない。


 それでも、眠る直前。


 どくん。


 小さな振動。


 呼びかけでも、命令でもない。


 確認。


 ――まだ、いるか。


 俺は、目を閉じたまま、心の中で答えた。


 いる。

 だが、今日は動かない。


 振動は、返らなかった。


 街は、納得したのか。

 それとも、記録しただけか。


 分からない。


 ただ一つ、はっきりしている。


 介入しない選択は、

 安全だ。


 そして――

 **一番、街から遠くなる選択でもあった。**


 役割を失うというのは、

 突然起きることじゃない。


 こうして、

 静かに、合理的に、

 進んでいくものなのだと。


 俺は、その過程の中にいる。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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