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都市が巨大ロボになり、パイロットは住民だった  作者: RUNE-404


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第25話 最初の拒否

 街は、すぐには応えなかった。


 それが、何より不気味だった。


 再開発本部を出て、車に乗り込んでも、足元は静かなまま。振動はない。圧もない。ただ、沈黙だけが続いている。


 条件提示は、街にとって無意味だったのか。

 それとも――考慮中、というやつか。


 団地に戻る途中、警備車両が増えているのが見えた。通りの要所に人が立ち、無線で何かを確認し合っている。神谷の判断は早い。俺を「窓口」にした瞬間から、街全体を管理下に置く準備を始めた。


 その中心に、俺がいる。


 部屋に戻り、窓を閉める。

 外の音が遮断されると、急に世界が狭くなった。


 息を整え、床に座る。

 今日は、試すと決めていた。


 ――拒否できるか。


 街が動こうとしたとき、

 俺は、それを止められるのか。


 答えをくれるほど、街は優しくない。

 なら、こちらから状況を作るしかない。


 ほどなくして、サイレンが鳴った。


 短く、鋭い警告音。

 再開発区域の外縁部だ。


 胸の奥が、ひくりと反応する。

 来た。


 立ち上がると同時に、振動が走った。

 これまでで一番、はっきりとした“起動前兆”。


 街が、判断を下そうとしている。


 俺は、靴も履かずに外へ出た。

 階段を下りるたび、圧が強くなる。


 通りに出た瞬間、街灯が一斉に明るくなった。

 インフラが、連動を始めている。


 ――止めろ。


 そう思っただけで、胸が痛む。

 意志が、街に伝わるより先に、身体が削られる。


 俺は、地面に手をつかなかった。


 代わりに、立ったまま、息を吸う。


「……今は、使うな」


 声は小さい。

 命令でも、お願いでもない。


 ただの拒否だ。


 次の瞬間、

 振動が、跳ね返ってきた。


 強い反発。

 街が、否定した。


 視界が揺れる。

 膝が、わずかに折れた。


「……っ」


 街は、動こうとしている。

 被害を抑えるために。

 機能として、正しい判断だ。


 俺は、歯を食いしばった。


「それでも……ダメだ」


 理由を言わない。

 言えない。


 ただ、拒む。


 数秒。


 永遠みたいに長い時間。


 どくん、という振動が、

 一段、弱まった。


 街灯が、一つ、消える。

 次に、もう一つ。


 完全には止まらない。

 だが、全面起動もしない。


 ――通った。


 その事実に、遅れて、激しい疲労が押し寄せた。


 俺は、その場に座り込む。


 胸が痛い。

 息が浅い。


 それでも、笑ってしまった。


 街は、拒否を理解した。

 少なくとも、無視はしなかった。


 それは、制御じゃない。

 支配でもない。


 **交渉**だ。


 遠くで、サイレンが止まる。

 現場対応は、人間の手で済んだらしい。


 足元から、弱い振動。


 肯定でも、感謝でもない。

 ただの記録。


 俺は、空を見上げた。


「……一回目だ」


 誰に向けた言葉でもない。


 街は、沈黙したまま、

 それでも確かに、条件を更新していた。


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