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都市が巨大ロボになり、パイロットは住民だった  作者: RUNE-404


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第24話 条件は、こちらから出す

 目を覚ましたとき、天井が近かった。


 見慣れた部屋だ。

 団地の、いつもの天井。ひび割れの位置まで覚えている。


 逃げたつもりだった。

 結果は、この通りだ。


 身体を起こすと、胸の奥が静かに痛んだ。致命的じゃない。だが、確実に“戻された”痕が残っている。街の外に出ようとした代償だ。


 ――選択は、成立しなかった。


 それなら、次だ。


 スマホを手に取る。

 未読は少ない。だが、その中に一つだけ、意図的に残していた連絡先がある。


 神谷。


 こちらから連絡したことは、今まで一度もない。


 指を止めて、深く息を吸う。

 街の反応は、静かだ。起動の兆候はない。今なら、話ができる。


 メッセージは短くした。


《話がある。場所を指定してほしい》


 送信。


 数分も経たないうちに、返事が来た。


《分かった。今から迎えを出す》


 予想通りだ。

 拒否はされない。俺は“必要な資源”だから。


---


 車内は静かだった。

 窓の外を流れる街の景色が、いつもより遠く感じる。完全に外へ出ているわけじゃない。だが、境界線ぎりぎりをなぞるような移動だ。


 胸が、わずかに重くなる。


 神谷は、再開発本部の応接室で待っていた。

 立ち上がりはしない。だが、こちらを見て、確かに警戒の色を浮かべる。


「体調は」


「生きてる」


 それで十分だろう。


 神谷は、小さく頷いた。


「逃げたな」


「試しただけだ」


 否定はしない。

 否定できない。


 数秒の沈黙。


「……戻されたか」


「完全にな」


 神谷は、ため息をついた。

 怒りでも失望でもない。計算が一つ、確定した顔だ。


「君は、切り離せない」


「そういう結論でいい」


 俺は、椅子に腰を下ろす。


「だから、条件を出す」


 神谷の眉が、わずかに動いた。


「条件?」


「管理されるのは構わない。監視も、制限も受け入れる」


 そこまで言って、間を置く。


「その代わり、街の使い方は――俺が決める」


 空気が、張りつめた。


「具体的には」


「街を“兵器”として使うときは、必ず俺を通せ。

 自動起動は認めない」


 神谷は、即答しなかった。

 その沈黙が、手応えだった。


「もう一つ」


 俺は続ける。


「この街の人間を、実験材料にするな。

 再開発も、やるなら段階的にだ」


 神谷は、腕を組んだ。


「それは、要求が大きい」


「分かってる」


 俺は視線を逸らさない。


「でも、代替はない。

 俺を壊したら、街も壊れる」


 脅しじゃない。

 事実の提示だ。


 神谷は、ゆっくりと息を吐いた。


「……君は、自分の立場を理解している」


「理解したくなかったけどな」


 しばらくして、神谷は言った。


「検討する。

 だが一つだけ、約束しろ」


「何だ」


「街が“先に”動こうとしたとき、

 君は止めに入ると」


 俺は、足元の感覚を確かめる。

 街は、沈黙している。


「止められるとは、限らない」


「それでもいい」


 神谷は、真っ直ぐにこちらを見た。


「君がいるかいないかで、被害は変わる」


 ……そういう扱いか。


 俺は、短く笑った。


「分かった。

 ただし――」


 最後に、これだけは言っておく。


「俺を“部品”って呼ぶな」


 神谷は、一拍置いてから、頷いた。


「分かった。

 **窓口**と呼ぼう」


 それで十分だ。


 応接室を出るとき、

 胸の奥が、少しだけ軽くなっているのに気づいた。


 逃げられない。

 使われる。


 それでも――

 **黙って使われる気は、もうなかった。**


 足元から、弱い振動。


 同意でも、反発でもない。

 ただ、更新された条件を、街が記録したような感覚だった。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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