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都市が巨大ロボになり、パイロットは住民だった  作者: RUNE-404


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第21話 街より先に、壊れるもの

 朝が来たことは、音で分かった。


 遠くで工事車両が動き始め、警告音が一つ鳴る。もう目覚ましは使っていない。使えなくなった、の方が正しい。


 身体を起こそうとして、少しだけ遅れる。


 重いわけじゃない。

 痛みもない。


 ただ、街の状態を確認する癖が、先に動く。


 ――異常なし。


 それが分かったあとで、ようやく呼吸を意識した。


 ここ最近、順番が逆だ。


 部屋を出ると、通りはいつもより静かだった。

 再開発区域の外周に、新しいフェンスが増えている。警備員の数も多い。


 街は、明らかに「管理対象」になっていた。


 それでも、俺が歩く分には、何も言われない。

 顔を覚えられている。排除される対象ではない。


 ――観測対象。


 通りを抜けると、佐伯さんの店の前で足が止まった。


 シャッターは下りたままだ。

 もう、開くことはない。


 分かっていたはずなのに、胸の奥が少しだけ遅れて反応する。


 そのときだった。


 どくん。


 強い振動。


 今までとは違う。

 明確な“指向性”を持った反応。


 俺は顔を上げ、再開発区域の中心を見る。


 高層ビルの影。

 地下の、さらに奥。


 ――来る。


 理由は分からない。

 でも、街がそう判断したことだけは分かる。


 走り出そうとして、足が止まった。


 その瞬間、身体の奥で、何かがきしんだ。


「……っ」


 息が、浅い。

 視界が、一瞬だけ暗くなる。


 街は動こうとしている。

 その準備に、俺が引っ張られている。


 神谷の言葉が、頭をよぎった。


 ――君は使っているんじゃない。使われている。


 違う、と言いかけて、やめた。


 今のこれは、否定できない。


 俺は、地面に手をつかなかった。


 代わりに、一歩、後ろへ下がる。


 すると、振動が弱まった。


 街は、即座に反応を変えた。


 ……試されている。


 そう思った瞬間、胸の奥が冷えた。


 街が守ろうとしているのは、

 この区域でも、人でもない。


 “機能”だ。


 必要なときに、必要なだけ動くための状態。

 そのために――


 どくん。


 振動が、再び強まる。


 今度は、俺の中からだった。


 膝が折れ、アスファルトに片手をつく。

 呼吸が追いつかない。


 視界の端で、街灯が一斉に明るくなった。


 街は、起動しかけている。


 俺は、歯を食いしばった。


「……待て」


 声は、震えていた。


 命令じゃない。

 お願いでもない。


 ただの事実だ。


「このまま動いたら……俺が、先に壊れる」


 数秒の沈黙。


 どくん、という振動が、ゆっくりと間隔を伸ばす。


 完全には止まらない。

 だが、暴走もしない。


 俺は、その場に座り込んだまま、荒い息を整える。


 理解した。


 街は、俺を守らない。

 だが――壊れきる前には、止まる。


 それは優しさじゃない。

 部品を壊さないための制御だ。


 笑えなかった。


 それでも、目を逸らすこともできなかった。


 俺は、ゆっくりと立ち上がる。


 街は、まだ生きている。

 そして俺も、まだ使える。


 その事実だけが、

 この場所で生き続ける理由になってしまった。


 ――人間として、どこまで残れるかは、

 もう、分からない。


ここまでご覧いただきありがとうございます。


明日からは、1日に3話を投稿予定です。


ブックマークをして、続きを楽しみにお待ちいただけると嬉しいです。

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