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都市が巨大ロボになり、パイロットは住民だった  作者: RUNE-404


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第2話 住んでいるだけで、邪魔者らしい

 佐伯さんの店は、相変わらず中途半端な時間に開いていた。昼でもなく、夕方でもない。再開発が決まってから、客の流れなんてとっくに壊れている。


 引き戸を開けると、鈴が乾いた音を立てた。


「いらっしゃい……って、なんだ、お前か」


 カウンターの向こうで、佐伯さんが新聞を畳む。しわの多い手は、インクで少し黒ずんでいた。


「今日は点検?」


「はい。ついでに、飲み物買おうかと」


「自販機、また死んでるだろ」


 言われて、何も返せなくなる。佐伯さんはため息をついて、棚から缶コーヒーを一つ取った。


「ほら。ツケでいい」


「……いいんですか」


「どうせ売れ残る。ここに置いておくより、飲まれた方がマシだ」


 缶を受け取る指先が、少しだけ震えていた。寒さのせいか、年のせいかは分からない。


 店の外を、スーツ姿の男女が通り過ぎていく。タブレットを覗き込みながら、足早に。こちらを見ることはない。


 再開発会社の調査員だ。最近、よく見かける。


「また来てましたよ」


「そりゃ来るさ。もう決まった話だからな」


 佐伯さんは、どこか投げやりに笑った。


「俺たちが何言っても、図面の線は動かん。ここは更地。そう決められてる」


 更地。

 人が住んでいる場所を指す言葉とは、どうしても思えなかった。


「お前はどうするんだ」


「まだ……決めてません」


「そうか」


 それ以上、何も聞かれなかった。

 聞かれないことに、少しだけ救われる。


 店を出るとき、佐伯さんが背中越しに言った。


「無理すんなよ。ここに残る理由なんて、もうないんだから」


 その言葉は、優しさでできていた。

 だからこそ、胸に刺さる。


 通りに出ると、工事フェンスの向こうから視線を感じた。さっきの測量の男だ。ヘルメット越しに、事務的な目でこちらを見ている。


 俺は何か悪いことをしているわけでもないのに、無意識に歩調を速めた。


 ――住んでいるだけで、邪魔者。


 この街に残っているというだけで、そう扱われている気がした。


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