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都市が巨大ロボになり、パイロットは住民だった  作者: RUNE-404


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第18話 正しい言葉

 事務所の外に出ると、空気が少しだけ冷たく感じた。


 建物の陰で、相馬が待っていた。

 偶然を装っているが、タイミングが良すぎる。たぶん、話を聞いていたのだろう。


「……終わった?」


 気まずそうに、相馬が聞く。


「現場、外された」


「そっか」


 一瞬、言葉に詰まる。

 それから、相馬は苦笑した。


「まあ、そうなるよな。昨日の今日だし」


 責める調子じゃない。

 納得している声だった。


 相馬は、ポケットから煙草を取り出し、一本くわえたまま火は点けなかった。ここでは吸えない。


「俺、異動受けた」


 そう言って、視線を逸らす。


「来週から、新市街の方。条件も悪くない」


「……そうか」


「正直さ」


 相馬は、俺を見た。


「ここに残る理由、もうないだろ」


 胸の奥で、何かがきしんだ。


「街は壊される。仕事もない。

 残っても、損するだけだ」


 全部、正しい。


 再開発が進めば、この街は消える。

 ここにいても、未来はない。


「お前まで巻き込まれる必要、ないんだ」


 相馬は、本気でそう思っている。

 だからこそ、言葉に嘘がない。


 俺は、返事に困った。


 残る理由を、説明できない。

 説明できないものは、理由として認められない。


「……そうだな」


 それだけ答えた。


 相馬は、少し安心したように頷く。


「だったら、早い方がいい。

 今なら、まだ間に合う」


 間に合う、という言葉が、胸に残った。


 何に間に合うのか。

 普通の生活か。安全な選択か。


 相馬は、もう行くと言って、背を向けた。


「連絡先、変わらないからさ」


 手を軽く振って、歩き出す。


 その背中を見送りながら、俺は思う。


 正しい言葉ほど、

 ここに残る理由を、綺麗に削っていく。


 ――それでも。


 足元の感触が、わずかに変わった。


 どくん。


 誰にも気づかれないほど、弱い振動。


 俺は、視線を落とす。


 街は、何も言わない。

 正しいことも、間違っていることも。


 ただ、そこにある。


 相馬の背中が、角を曲がって見えなくなる。


 その瞬間、

 俺の中から、逃げ道が一つ、静かに消えた。


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