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都市が巨大ロボになり、パイロットは住民だった  作者: RUNE-404


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第15話 事務所での通達

 事務所は、やけに整っていた。


 机の上に積まれた書類も、壁に貼られた工程表も、昨日までと何も変わらない。変わっているのは、空気だけだ。言葉にしなくても分かる。ここではもう、結論が出ている。


 応接用の椅子に座らされ、向かいに二人が腰を下ろした。

 下請けの管理者と、再開発会社の担当者。どちらも、困ったような顔をしている。


「体調の方は、大丈夫か?」


 最初に口を開いたのは、管理者だった。

 気遣いの形をした確認だ。


「はい」


 それ以上、何も聞かれない。

 本題は、別にある。


 再開発会社の担当者が、書類を一枚、机の上に滑らせた。


「昨日の件だが……」


 言葉を選んでいる。

 それが、逆に分かりやすかった。


「精神的な負荷が大きかったと判断した。君の安全を考えて、しばらく現場作業からは外れてもらう」


 しばらく。

 期限は、書かれていない。


「点検業務も、当面は別地区で――」


 言葉の続きを、俺は聞かなかった。


 視線が、書類に落ちる。

 異動先の地名。見覚えのない、遠い場所。


 この街じゃない。


「念のためだ。万が一のことがあっては困る」


 誰のための「万が一」なのかは、言わなくても分かる。

 街のため。会社のため。事故を起こさないため。


 俺のため、ではない。


「……断ることは、できますか」


 自分でも驚くほど、声は落ち着いていた。


 二人は、一瞬だけ視線を交わした。


「もちろん、強制ではない」


 管理者が言う。


「ただ、その場合は――」


「契約終了、ですよね」


 言葉を継ぐと、二人とも黙った。

 肯定だ。


 誰も、俺を責めない。

 むしろ、気の毒そうな目をしている。


「後悔しないでくれ」


 管理者は、そう言った。

 それが、この場でできる、精一杯の言葉だった。


 俺は、書類から目を上げた。


「……分かりました」


 異動を受けるとは、言わなかった。

 断るとも、はっきりは言わない。


 それでも、意味は伝わる。


 担当者が、ゆっくりと頷いた。


「手続きは、こちらで進める」


 事務的な音を立てて、書類が片付けられる。

 それで終わりだ。


 立ち上がり、頭を下げる。

 今までと同じ動作なのに、もう意味が違う。


 事務所を出ると、廊下の窓から街が見えた。


 あの場所に戻る理由が、

 今、ひとつ消えた。


 それでも、足は自然と、

 そちらの方角を向いていた。


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