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都市が巨大ロボになり、パイロットは住民だった  作者: RUNE-404


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第11話 守れたもの/失ったもの

 目を開けたとき、空が近すぎた。


 仰向けに倒れている。

 団地の裏手、ひび割れた舗装の上。視界の端で、蒸気が完全に消えていくのが見えた。


 ――間に合った。


 そう思った瞬間、遅れて痛みが来た。


 全身が重い。

 手足の感覚が、薄い。まるで、何時間も眠っていないみたいに、思考が鈍っている。


 ゆっくりと身を起こそうとして、失敗した。


「……っ」


 喉から、情けない声が漏れる。

 立ち上がるだけの力が、残っていなかった。


 しばらくして、遠くから足音が聞こえた。

 複数人。慌ただしい。


「ここだ! マンホール付近!」


 作業服の男たちが駆け寄ってくる。

 再開発側の応急対応班だろう。


「配管、落ち着いてる……? さっきまで警告出てたのに」


「破裂痕なし。圧も正常値だ」


 不思議そうな声。

 原因不明、という言葉が何度も飛び交う。


 俺は、何も言わなかった。

 言えるわけがない。


「大丈夫ですか? 立てます?」


 差し出された手を、反射的に掴む。

 その瞬間、ぞくりとした。


 ――何も、返ってこない。


 昨日まで感じていた、足元の微かな反応が、今はない。

 街の鼓動が、遠い。


 代わりに、胸の奥が、ぽっかりと空いていた。


 何かを、持っていかれた。


 量も、形も分からない。

 ただ、確実に。


「念のため、病院行きましょう」


「……いえ、大丈夫です」


 声が、少しかすれていた。

 本当に大丈夫なのか、自分でも分からない。


 そのまま、支えられながら現場を離れる。

 振り返ると、団地の外壁が目に入った。


 昨日、崩れてもおかしくなかった場所だ。

 今は、何事もなかったみたいに立っている。


 少し離れた先に、佐伯さんの店が見えた。


 シャッターは上がっている。

 いつもと同じ、中途半端な時間に。


 ――守れた。


 確かに、そうだ。


 でも同時に、はっきり分かった。


 俺が街を守ったんじゃない。

 街が、俺を使った。


 その事実が、胸の奥で、静かに重さを増していく。


 力は、便利じゃない。

 まして、優しくもない。


 俺は、初めて知った。


 この街を守るということは、

 何かを失い続ける、ということなのだと。


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