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押入れで物々交換していたら、異世界につながっていました!?  作者: あけはる


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第9話


 昨夜見た絵が、何度も浮かぶ。


 王城では仕事場以外の場所には行き来に制限があるのだという。

 リヒトの「事情」。

 昨日の絵には、鎖、杭、止められている手。


(状況、悪くなってない?)


 真琴はカップスープを飲みながら、ノートを開いた。

 箇条書きにして思考と感情を整理しよう。


・飴がないと、文字は読めない


・飴には制限がある


・リヒトには行動の自由がなさそう


・誰かに監視されているらしい


(……私、一体、何してるんだろ)


 相手はおそらく異世界の貴族。

 一方こちらは、在宅勤務の庶民OL。


(なんなんだろうこの感情)


 夜。

 真琴は、少し緊張しながら押入れを開けた。


 箱の中には――

 紙が一枚と、小さな包み。


(飴がある!)

 包みはねじりが甘く、紙の端が破れている。


(急いで用意した?)


 嫌な予感がよぎる。

 真琴は飴を口に入れ、すぐに紙を開いた。



『今日は、あまり時間がない。

 飴について、説明しておくべきだと思った』


 真琴は、椅子に腰を下ろした。


『これは、本来、外交の場で使われる魔術具だ』


 心臓が、どく、と鳴る。


『個人的な使用は、原則許されていない』


(やっぱり……)

 


『学生時代の伝手を頼り、

 廃棄予定のものを少量だけ融通してもらっている状態だ』


 “伝手”。


 誰かが、協力している。


『だが、その伝手にも、疑いの目が向き始めた。

 最近、私の行動や持ち物が、明らかに細かく確認されている』


(……完全に、監視)


『外部との接触が疑われれば、この飴は、真っ先に没収されるだろう』


 真琴の指が、紙を強く握る。


『そうなれば私には君の言葉は、二度と読めなくなる』


 その一文が、夜ふけに重く沈んだ。



 真琴は、急いで次の行を追う。


『惜しいが、これが最後になる可能性もある。

 それでも君に何も言わずに終わるのは、嫌だった』


 最後の一行は。


『また、紙の上で』



 真琴は、深く息を吐いた。


 ただ癒されていただけの時間が、

 いつの間にか、失うのが怖いものになっていた。


(……それって)



 真琴は、すぐに新しい紙を取り出した。


(落ち着け、できることを考えよう)


 感情だけで動いても、意味がない。

 真琴は、ゆっくりと絵を描き始めた。


 まず、飴。その横に、箱と紙。


(箱は隠しているの?)


 次に、部屋の絵。

 棚。本。引き出し。


(調べられても、見つかりにくい場所はあるの?)


 現代の感覚が、自然と働く。

 最後に、棒人間を二人。

 一人は、囲いの中。もう一人は外に。

 その二人の間に、細い線。


(この繋がりを切らないで)


 そう願いながら

 真琴は紙を箱に戻し、そっと襖を閉めた。



 真琴は、布団に入って天井を見つめる。

 返事が来るかどうかは、分からない。


 それでも。

 この関係を、簡単に手放すつもりはなかった。

リヒト周辺がきな臭くなってまいりました・・・!


最後までお読みいただきありがとうございます。

楽しんでいただけましたら幸いです。

もしよろしければご評価やブクマなど応援いただけますと嬉しいです。

よろしくお願いします!

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