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押入れで物々交換していたら、異世界につながっていました!?  作者: あけはる


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第7話

 

 夜、真琴は、少し緊張しながら押入れを開けた。


 箱の中には、飴と紙が一枚だけ。


(……あ)


 今日も飴があった。

 胸をなで下ろしながら、真琴は読み始める。


『昨日は、驚かせてしまっただろうか。

 改めて名乗る。

 私は、リヒト・ヴァルグレン』


 名前を、はっきりと。


 それだけで、距離が一段縮んだ気がした。


『ヴァルグレン公爵家という。

 王城に仕える、高位貴族の家系に連なる者だ』


(公爵……身分制度があるの?)


 思わず、息を吸う。


『現在、私は王城で役目を与えられ、

 魔術文書庫で記録の整理と管理を行っている』


 以前書いてあった、棚と本の山。

 あれは仕事内容だったのか。


『主に古い記録や、使用が制限された

 魔術に関する文書を扱っている』


 真琴は、無意識に背筋を伸ばした。


(……なんか、結構大事な仕事では)


『だが、私の立場は、

 家の中でも、城の中でも、少し特殊だ』


 そこで、一拍。


『それは私が、当主の息子ではなく、

 姉であった者の子であるからだ』


(え)


 一瞬、関係が掴めず、読み返す。


(えっと、当主の甥、ってこと?)


『現当主の姉――つまり私の母であるセレスティアは、

 家の期待を一身に受けた、とても優れた魔術師だった』


(魔術師・・・!)


『だが、隣国への留学の後、

 彼女は家を去った』


 文は、淡々としている。


『私の父については、公には何も、語られていない』


 その一文で、真琴は察した。


(……含みのある表現ね)


『母は病を得て、私が五歳のときに儚くなった』


 そこで、少し文字が乱れる。


『私は乳母を通じて、ヴァルグレン公爵家に引き取られた』


 真琴は、ゆっくり息を吐く。


『それから庇護を受け、教育も仕事も、与えられている』


(だけど)


『自由は、あまりない』


 短い一文が、重く落ちた。

 以前見た、囲いの絵が脳裏をよぎる。


『仕事を理由に外出することは許されているが、

 行き先は事前に指定される』


(……管理されてるってことね)


 そう思ったが、口には出さない。


『それでも、この仕事は嫌いではない。

 書物は、嘘をつかないからな』


 少しだけ、柔らかい文になった。


『君とこうして話していることも、

 私にとっては、不思議な安らぎだ』


 (えっ)

 急に自分に言葉が飛んできて驚く。


『ただ、私の事情を、先に伝えておくべきだと思った』


 理由は、書かれていない。


 けれど。


(何かあるのね)


 それだけは、はっきり分かった。


 読み終えたところで、

 文字が、ゆっくりと意味を失っていく。


(……あ)


 効き目が切れる。

 紙は再び、読めない文字の列に戻った。



 真琴は、しばらく押入れの前に座ったまま、動けなかった。


(公爵家、王城へ仕事、でも制限された生活……)


 自分の住んでいる世界とは、あまりにも違う。


(やっぱり異世界なのね)


 そして。


(ちゃんと生きてる人なんだ)


 真琴は、ゆっくりと紙を胸に抱く。


(リヒトさん、どんな表情で、どんな気持ちで

 これを書いたんだろう)


 押入れの向こうにいるリヒト・ヴァルグレンという人が、

 決して自由な立場にはいないことだけは、

 はっきりと伝わってきた。


(難しい立場なんだよね)


 真琴は、そっと息を吐く。

 少し時間をかけて返事を書くことにしよう。


少しずつ話が進み始めます。


最後までお読みいただきありがとうございます。

楽しんでいただけましたら幸いです。

もしよろしければご評価やブクマなど応援いただけますと嬉しいです。

よろしくお願いします!

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