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押入れで物々交換していたら、異世界につながっていました!?  作者: あけはる


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第2話


 目が覚めて、自分がどこにいるのかを確かめるように、天井を見上げた。


 白い木目の板張り。

 祖母の趣味だった、少し古風な照明。


(……ああ)


 別荘。

 引っ越してきたばかりの家。


 そして昨夜の出来事が、ゆっくりと思い出される。


 押入れの木箱。

 消えたクッキーと、見知らぬ草束。


(夢…じゃない)


 布団の中で、手をぎゅっと握る。

 心臓は、思ったより落ち着いていた。


(……怖くはない)


 それが一番、不思議だった。

 知らない現象。説明のつかない出来事。

 普通なら、もっと動揺してもおかしくないはずなのに。


 誰かと一緒にいたら、怖さは増幅されただろうか。

 だが今は、判断するのも、受け止めるのも、自分ひとりだ。

 以前より迷いが少なくなったような気がする。


 真琴は布団から出た。



 朝食は、昨夜の残りのご飯で作った卵かけご飯。

 祖母の家に残っていた古い醤油差しを使う。


(生活、してるなあ)


 こうして台所に立つと、この家が「住む場所」になったのだと実感する。


 食後、ノートパソコンを開き、在宅勤務の準備をする。

 業務用チャットにログインし、淡々と仕事を進める。


 資料を作り、メールを返し、数字を確認する。


 ――その合間に、ふと、押入れの方向を見てしまう。


(見ない、見ない)


 わざと視線を逸らす。


 (今は仕事中っと)


 そう言い聞かせるほど、意識していることが自分でもわかった。



 昼休み。


 簡単にカップスープを作り、パンをかじる。

 スマートフォンで「乾燥 薬草 束」などと検索してみるが、似た画像は出てこない。


(そりゃ、そうか)


 名前も用途もわからないのだ。

 それらしい画像が出てくるのは、むしろ奇跡だろう。


 迷った末、真琴は立ち上がり、押入れの前に座った。

 

(……幽霊じゃない、大丈夫)


 理由になっていない理由をつけて、襖を開ける。


 木箱は、そこにあった。

 位置も、向きも、昨夜と同じ。


 箱の中を覗き込む。

 銀貨と紙と草束。

 すべて、変わらず存在している。


 自分の書いた日本語の下に、整った文字列。


(書いた人、几帳面そう・・・)


 文字の配置が、妙にきれいだ

 真琴の書いた日本語のほうが、右肩上がり。


(私の字、不格好だ、あー、ペン字でも習おうかな・・・)


 少なくとも、これを書いた人物は

 殴り書きするタイプではなさそうだ。



 午後の仕事は、意外にも集中できた。

 頭の片隅に押入れはあるが

 それ以上に、「いつも通りでいよう」という意識が勝った。


 夕方、

 業務終了のチャットを送信する。


(……さて)


 逃げる理由はもうない。



 夕食は簡単に、レトルトのカレー。

 風呂を済ませ、髪を乾かす。


 夜になると、家の音がよく聞こえる。

 外壁に吹き付ける風や庭の木のゆれる音。

 遠くの虫の声。


(……一人だな)


 今さらの事実が、少しだけ胸に沁みた。

 机に向かい、メモ用紙を取り出す。


(何を書こう)


 真琴は深呼吸して、一文だけ書いた。


『あなたは、人ですか』


 余計な言葉は足さないことにした。


(まあ、読めるのかもわからないけれど)


 紙を箱に戻す。


 次に、昨日より少し考えて物を選んだ。


 水のペットボトル。レトルトのお粥。


(同じ食べ物系にしてみよう)


 だが、クッキーを食べたなら、完全に人間の可能性もある。


 パタリ箱を閉じて、押入れの中に戻した。



 布団に入っても、すぐには眠れなかった。

 天井を見つめながら、考える。


(……もし、返事が来なかったら)


 それはそれでいい。もともと不思議な現象だったし。


(でも、もし来たら・・・)


 そんなことを考えつつ、夜は更けていった。

最後までお読みいただきありがとうございます。

楽しんでいただけたら幸いです。

気に入っていただけましたらご評価やブクマなど応援いただけますと嬉しいです。

よろしくお願いします!

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