第3話 最悪の幕開け
一日で63PVとは...!
宮本葵さんもこれには感激しかありません。
一月八日、木曜日。今日から三学期が始まる。SNSで俺の嘘の情報が炎上したけれど、まだ実害はない。だから、学校でも大丈夫だろう。――そう信じていたのがバカだった。
少し躊躇いながらも、俺は制服に袖を通す。母が台所から顔を出した。
「行ってきます」
「行ってらっしゃい。気をつけてね」
その声が、妙に遠く聞こえた。
俺の通っている北川道高校までは電車で数駅。俺は始発に乗って、できるだけ人の少ない時間を選んだ。だが、車内で制服の同級生が俺を見つけた瞬間、空気が変わる。
みんな俺と目を合わせようとしない。そして、ひそひそと声がする。
「……あいつがあの噂の」
「関わらない方がいいぞ」
「生徒会長、可哀想に」
その音が耳に刺さる。駅までの二十分が、一時間以上にも感じてしまうくらいに。
通学路ではみんな俺を避けるように歩き、学校に着いてからも、みんな俺を避けるように廊下を開けた。――まるで俺が病原菌でもあるかのように。
2-Cの文字を見つけ、意を決して教室に入る。せいぜい先ほどみたいにひそひそと噂され、避けられる。それくらいだと思っていた。
だが、そこにあったのは机の落書きと、荒らされたロッカーだった。机の上には、黒く大きな字で「死ね」「最低」「バカじゃねえの」と書かれている。
クラスの笑い声が、同時に響く。
なぜ?どうして?俺は、何をした?なぜこうなってしまった?理解できないまま、俺は怖くなって、教室を飛び出してしまった。
笑い声が背中を追いかけてくる。他のクラスの野次馬も居て、すごく邪魔だった。その野次馬から逃げるための場所を探して、一階の「保健室」の文字を見つける。
「失礼します。少し、体調が悪くて……」
保健室の先生は優しかった。
「顔色、悪いわね。少し休みなさい」
その声に少し救われる。ベッドに横になった瞬間、涙がこぼれた。眠くなってきて、時間の感覚が曖昧になっていく。
***
――修太目線――
その頃。修太は笑っていた。
「だっせぇな、あいつ。もう少しで完璧だ。紫陽花も協力してくれてるしな」
机の上には、誰かのスマホ画面。そこには、主人公のSNSアカウントと偽のDM。
「次は教師を動かす番だ」
その声は冷たく、計算高かった。
***
――主人公目線――
「失礼します。二年C組の名張徹はいますか?」
目を開けると、ベットの横に親友の出水陽太が立っていた。
「お、いたいた。大丈夫か?」
「この様だよ。……お前も笑いに来たのか?」
「バカ言うな。言うわけないだろ」
彼は真剣な顔で言った。
「俺、佐藤に“お前をいじめろ”って言われてる。でも……動かされてるフリをするだけだ。信じろよ、親友。同じクラスじゃないから、できないこともあるけどな」
「……出水……。ありがとう。」
「SNSも監視されてる。LIMEも、YITTERも。だから、もう話せないかもしれない。でも、お前は俺の親友だ。忘れるな」
そう言って、彼は立ち去った。保健室にいることを見つけてくれてうれしいし、俺のことを信じてくれた。その背中だけが、今の俺の救いだった。
ホームルームの時間が近づき、俺は教室へ戻った。教室にはすでに担任が立っている。先生がいる前なら、大丈夫。――そう信じていた。
「すみません、遅れました」
教室に入った瞬間、空気が変わる。
「死ね」「消えろ」「来るな」
小声の暴言が、波のように押し寄せた。俺は息が止まるかのようなそんな感じがしつつも、席についた。
「じゃあ、ホームルームを始めるけど……君たち、暴言吐いたりして何してるの?」
担任の声が低く響く。いつもは優しい女教師なのに。
「だって先生、こいつ……人の彼女寝取ったって噂が!」
「たかが噂でしょう。本人の話を聞かずに、どうしてこんなことを?」
「でも、生徒会長が――」
その言葉を聞いた瞬間、俺の中で何かが切れた。もう無理だ。もう、ここにいられない。教室を再び飛び出した。先生の声が背後で響いたが、もう耳には届かない。生徒会長が、の後に聞こえたのは、もう聞きたくないことだった。
再び保健室へとはいると、さっきと同じように、保健室の先生は座っていた。
「あら、また来たのね」
「……ベッド、借ります」
俺はそれ以上、何も言わずに横になった。眠るしかなかった。眠れば、少しだけ何も感じなくて済むから。
***
夕方になって、家に帰ると、母は電話を置いたばかりだった。
「徹、学校でのこと……先生から聞いたよ」
「……何を?」
「◼︎◼︎くんの彼女を奪ったとか。それでいじめられているって。先生がそう言ってた。あんたなんで、そんなことしちゃったの?しかもその彼女って▲▲▲ちゃんよね。幼馴染なのに、どうしてそんなことをしちゃったのかしら。だからっていって、あんたが悪いんだから学校いきなさいよ」
言葉を失う。俺は母の顔を見つめた。味方だと思っていたのに。
「俺、学校行きたくない」
「ダメ。お金払ってるんだから。保健室でもいい、ちゃんと行きなさい。」
その瞬間、胸の奥が音を立てて崩れた。
「……わかったよ。行けばいいんだろ。」
母は満足そうに頷いて、台所へ戻っていった。部屋の時計の針の音だけが、やけに大きく響いていた。
俺は布団の中で、ただ一つのことを考えていた。
「誰か、本当に俺を救ってくれる奴は、いないのかな……。」
スマホの通知が一つ光った。差出人は――「出水陽太」新しいアカウントらしい。その新しいアカウントからきたDMには、ただ一言だけ書かれていた。
『気をつけろ。明日、何か起きる。』
『教えてくれて、ありがとう』と返信し、この世界に絶望と、孤独感を感じてきている中、眠気に襲われていく。
正午にも投稿予定ですので、ぜひ読んでください。




