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第八話 婚約者と元婚約者候補②

 

 レニーはアデルだけではなく、男女問わずクラス中の生徒に話し掛けた。爵位など関係なく、それこそ目についた生徒片っ端から。女子は自分のグループ以外の生徒とはあまり話したがらない傾向にある。しかしレニーの話術に、グループ関係無く多くの生徒が巻き込まれていった。


「レニー様、すごいわ……」


 破竹の勢いでグループを解体していくレニーを目の当たりにして、シモーヌはため息をついた。


「ああ、レニー様ね。あの人が来てから一週間で、だいぶクラスの雰囲気が変わったね」


 レニーから目が離せないでいるシモーヌに、フランシスが気づいた。


「レニー様、俺にも話し掛けてくれたんだぜ。シモーヌ以外の女子に話し掛けられたの、初めてかも」


 ジャンも嬉しそうに言う。レニーは色々な国でのエピソードを面白おかしく話す。時には勉強のヒントも混ぜて。そうすると近くで聞き耳を立てていた生徒も、いつのまにか質問したり意見を述べたりと会話に参加する。それをきっかけに、今まで話さなかったクラスメイト同士でも会話をするようになった。

 様子を窺っていたシモーヌはその流れに乗れず、クラスメイトと会話をするタイミングを逃してしまった。


 同類だと思っていたフランシス、ジャン、ビクターは、ベルナールが骨折したことをきっかけに、あの高位貴族令息たちとよく話すようになっていた。レニーの影響を受けたクリストフが、学園在学中は爵位関係なく気軽に話そうと、皆に声を掛けたことも大きかった。爵位に遠慮していた生徒も、積極的に会話をするようになった。


「いいなぁ」


 ふと心の声を漏らしたシモーヌにビクターが言った。


「シモーヌも皆と話してみたら? 何なら、レニー様に相談するのもいいと思うぞ」


 レニー様に相談。シモーヌは呟く。


「あ、でも男子とは話さなくていいからね。俺も女子は無理、無理!」


 ジャンはそう言い残して、自分が考えた魔獣の絵を持ちジョルジュの席に行ってしまった。この魔獣の倒し方を聞くらしい。シモーヌはそんなジャンがうらやましい。どうすれば仲良くなれるのか難しい女子相手に話すより、あの妙に足の長い魔獣の倒し方について男子と話す方が簡単だからだ。


「膝の後ろを剣で突くとバランスが崩れるから、一気に畳み掛けるわ」


 その声はジャンには届かなかった。


「えらく長いその足の関節に一発入れて、よろけたところに猛攻だ」


 ご自慢の最強魔獣をいとも簡単にジョルジュに倒されて、ジャンはぐぬぬと唸った。魔獣の絵を見て、ああだ、こうだと話すクリストフたちの隣には、その様子をニコニコしながら見守るレニーと、作り笑いを浮かべているアデルがいた。



 アデルはレニーの横顔をそっと伺った。レニーがいるとクリストフだけでなく、クラス全体が明るくなる。これが持って生まれた王太子妃の資質なのか?

 しかし、見た目だけではアデルも負けてはいない。と、アデルは思っている。

 透き通る白い肌を持つレニーに比べるとアデルの肌は健康的だが、顔の作りはアデルの方が派手だ。あと、隣に立って気づいたが、レニーは女子生徒の中では背が高い。背の高いクリストフと並ぶとバランスがいいが、そこで騒いでいるジャンやジルと比べると、同じぐらいか少し高いかもしれない。


 アデルは昔から祖父に、あまり大きくなるなと言われてきた。祖父いわく、男性は自分よりも小さな女性に庇護欲をかき立てられるのだと。当然、それは人によるだろう。しかし、アデルは祖父の言うことを信じていたので、その点ではレニーより自分の方が上だと思った。そう言えば、レニーほどではないがシモーヌも背が高い方だ。


 レニーと同じ戦い方をしていても比べられるだけ。なら、私は私の武器で戦おうと、アデルは鼻息を荒くする。

 レニーの武器が豊富な知識とよどみない話術だとしたら、アデルの武器は小さくて可愛らしいこと。可愛いだけじゃダメなんてことは絶対にない。

 ジルやジョルジュ、ベルナールの超優良物件以外にも高位貴族の子息はいる。今週は下調べをして、来週から各クラスに遠征して……。そこまで考えてから、アデルは重大なことを思い出した。


「来週から、長期休暇じゃない!?」



最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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