↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】【連載版・書籍化準備中】結局、教室の隅っこでコソコソ盛り上がってる陰キャ貴族令息たちの話が一番面白い  作者: ミズアサギ
夏休み

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
14/45

第十三話 父とジャムと忘れていた過去

 

 すっかり熱が下がり、いよいよ王都に戻る日。身支度を終え、朝食をとろうと食堂に入った途端、シモーヌは誰かにギュッと抱きしめられた。


「く、苦しい……」


「会いたかったよ、シモーヌ!」


 いきなり抱きしめてきたのは、父のブライアン・ベルジック侯爵だ。アランとシモーヌと同じ紺色の髪は、いつもと違い乱れに乱れている。


「シモーヌに会いたくて、夜の間中、馬を走らせたんですって」


 すでに座っていたイネスが呆れたように言う。今回の帰省でシモーヌに会うことを諦めていたブライアンは、シモーヌが熱を出したと聞いて居ても立ってもいられなくなったらしい。


「もう二週間、いや、一ヶ月ほどゆっくりしていけばいいじゃないか」


 ブライアンはなかなかシモーヌを離そうとしない。シモーヌは体を捩(よじ)ってブライアンの拘束から脱出を試みる。


「今日戻らないと、二学期に間に合わなくなってしまいます」


 執事がシモーヌを助けようとブライアンを羽交い締めにして、ようやく親子は間合いを取り、ハァハァと荒い息を吐いた。



 やっとのことでテーブルに着いたシモーヌに、ブライアンは袋を一つ渡した。


「これが今作っているジャムだ。ふたを開けなければふた月は持つ。学園の友人に渡してくれ」


 そのジャムをまだ口にしていないことは、ブライアンには黙っていた方が良い気がする。シモーヌは曖昧な笑みを浮かべた。


「可愛らしい小瓶がたくさん入っていますね。クラスメイト全員には無理ですが、お話できるようになれた人たちに配ります。お父様、ありがとう」


 それを聞いて、ブライアンもウンウンと満足そうに頷いた。


「王都にも販路を伸ばしたいのだが、大きな商会に卸すほどの数は作れなくてね。ここにしかないジャムだよ。そうだ、クリストフ殿下にもぜひ……と言いたいところだが、口に入る物は色々難しいだろうな」


 婚約者候補時代のシモーヌの塩対応を許してくれた王家には、ブライアンは忠誠を誓う以上に頭が上がらない。


「じゃあ、あの子は? 宰相のところの……そうそう、ジル様」


 イネスの口から意外な人物の名前が出る。


「ジル・ドルレアン侯爵令息ですか? 確かに同じクラスですが、どうして?」


 首を傾げるシモーヌに、イネスが呆れたように言った。


「あら、忘れてしまったの? お茶会に参加してすぐの頃、どうしても帰りたいと泣くあなたを、殿下の側にいたジル様が王宮の図書室に連れて行ってくれたのよ」


 イネスがそこまで話して、ようやくシモーヌは思い出した。子どもだけとはいえ、知らない人たちと過ごすことに苦痛に感じていたシモーヌは、何回目かのお茶会の時とうとう泣き出してしまった。その時にシモーヌより少し小柄な男の子が、泣いているシモーヌの手を引いて、王宮の大きな図書室へと連れて行ってくれたのだ。


「いくら王妃陛下と私が級友でも、王太子殿下とのお茶会で読書してお咎めがない訳ないでしょう? シモーヌを黙らせつつお茶会に参加させるには本だって、偉い大人の間で決まったのよ。後から聞いて、お父様と謝罪に伺ったりして大変だったわ」


 てっきりお茶会中の読書は、クリストフによるシモーヌへの興味の無さから許されているものだと思っていたシモーヌは、恥ずかしさでまた熱がぶり返してしまいそうだった。


「すっかり忘れていました……」


「確かに、宰相には親子で世話になったな。ジル殿のところにはジャム二瓶だな」


 ブライアンも言う。あの男の子は眼鏡をしていなかったので、今のジルとは結びつかなかった。ジルはその時のことを覚えているのだろうか。聞いてみたいが、ジルが覚えていても恥ずかしい。

 シモーヌは複雑な気持ちになった。



お読みいただきまして、ありがとうございます。

ん?ジル?と思った方、評価や応援していただけたら幸いです。

次回から、内容の濃~い二学期が始まります。

よろしければお付き合い下さい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
おっとぉ…!?(短編のラストからダブルミーニング) こいつぁ〆を飾る方が誰なのか、分からなくなってまいりました。 そしておにーちゃん本体の登場はあるのか!? 連載版になっても薄まらず楽しいです!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。