episode3 苦労人
「もちろん、断ってくれても構わない。私の提案にのるかのらないかは君たち次第だよ」
周りが騒ぎ始めた。
私が注目する5人は何者なのか気になって仕方がないのだろう。
「だけどもし、この話にのってくれるのなら。この学校で学んで強くなるよりも何倍も強くなることを約束しよう。」
「返事は明後日の朝会の時に。あ、返答が決まっているのなら今でも良いよ」
少し間を開けて目の前の少女が手を挙げた。
「…のりますこの話」
「いいの?そんな簡単に決めちゃって」
「私は強くなりたいのです。そのためには貴方の元へ学べるのが一番最適ですから」
「なるほどね、いいねその心意気。そうこなくちゃ。さて他にいないのかな?」
「俺ものるぜ、その話。」
男の声が体育館に響いた。
声した方向へ目を向けるとそこにはある1人の少年がいた。
目立つ緋髪に瞳の少年だった。
「俺は強くなるためにここに来た。狩人最強と謳われるあんたの元で学べるのならこれ以上ってもんはない。」
「うん、良いね。やっぱり…ほんと凄いや。」
2人の意気込み驚いた幸だった。
「それじゃあ、ここで承知して貰えたのは、黒峰楽と獅子堂雅の2名。他の3名は、明後日までに返答考えてきてね。」
「それじゃあ、言いたいことも言えたしこれ以上入学式の邪魔しちゃ悪いからわたしは帰るね。」
そう言って幸は足先を扉に向け歩き進める。
周りが唖然としているのを気にもとめず終いにはじゃあね〜と気楽に手を振りながら扉をくぐった。
一瞬にしてこの場を掻き乱しまくった元凶は姿を消した。
◇◇◇
月宮浪牙Side
「はぁ」
思わずため息をついてしまったが周りはまだ唖然としていて気づかれていないことにほっとした。
ため息をついた理由は、勝手に入学式へ突撃した挙句話し終わったら気楽に帰っていったあの元凶、白柳幸だ。
昔から自分勝手で何一つ変わらない幸に少し懐かしいと思っている自分がいるがそれはそれだ。
初めて合ったあの日を思い出す。
・・・あれ?自分勝手ぶりエスカレートしてねぇかと思ったが気付かないふりをした。昔の幸にも手に負えなかったのにそれ以上となると考えたくもないからだ。
ちなみにこれからどのように状況終始するかも考えたくない。
ステージ台の下に居る副会長の救いを求める目が向けられているが無視をして司会者に目で合図をする。
「えっと、生徒会長のお話は以上です。」
司会者が区切り合図が分かってくれたことに心の中で感謝をした。
予定より話してはいないがもう何もかも疲れたので終わりにした。
「次に移りたかったのですが時間が無いため省略させていただきます──」
司会者の声を聞きたがら舞台裏へ移動するとそこには般若の顔をした副会長が立ち止まっていた。いつの間にステージ下からここまで移動したのか。
「聞いていませんよ浪牙!あの人が来るなんて!」
もちろんあの人とは白柳幸の事だ。
副会長及び、志羅叶。幸のファンらしい。
「俺だって知らなかった。まぁ十中八九明日来れないから今日行けば良くね?って感じで来たんだろうな」
「そんな、ちょっとコンビニ行ってくるみたいな感じで…」
「実際そんな感じだったんだろう」
いつもそうだ。
周りのことなんて考えず行動して。
まぁ、あいつが唯一言うことを聞くあの人はもう居ねぇし…てかあいつ一年の時は一回も来なかったくせになんで急に来たんだか。
まぁあいつのことを考えるだけ無駄だ。そう思いながら用意された席へ向かう。
後ろで叶がなんか騒いでいるが気にしない。