episode2 遭遇
「あの…どこまで行くのですか」
「んー…てっぺん、まで?」
「え…」
「ハハハ。みんな体力なさすぎ〜」
「いや、今何時だと思ってるんですか?早朝の4時ですよ?……狂ってる。」
「いかれていやがる…」
「もぉ…むりぃ…。うぁっ!キャ」
「え、冬雪、大丈夫ですか!?」
「だ、大丈夫ですぅ」
「んー、いい天気だね」
「なつ。辺り一面霧におおわれていて天気なんて見えないよ?それになんでそんなに元気なの?」
弟子たちを叩き起し朝4時の山の中の森を探索する師匠。その頭を心配する弟子2名。コケる弟子1名。霧が広がっているのにいい天気だと言う弟子1名。その発言に引く弟子1名。
…この状況を一言で表すとしたらカオスという言葉がピッタリ当てはまるだろう。
◇◇◇
「ついた、ついた〜」
「ここは…?」
だとりついた先には、祠がたっていた。
「なんか呪われそ〜」
鈴菜がそう発したのも無理は無い。
祠は、長年掃除されていないのかサビなのか《《黒く染っている》》。
「ねぇ、この山の別名って知ってる?」
「…知らないです。」
楽が答えると幸は「まぁ、東京じゃあまり知られてないからね〜」と言った。
他のものもピンと来ないのか幸の言葉を待つ。
その弟子たちの様子にクスっと笑って言う。
「この山の別名は──《《神隠しの山》》って言うんだって。」
「神隠しの山ですか?」
「初めて聞いた〜」
「神隠しつぅと人が居なくなるということだよな」
「その言い伝えが有名だよね」
「うぅ…。」
「そのとーり!年に何回か必ず失踪者が出るからそう言われるようになったんだって!」
「えまって、そんなところに私たちはここにいるの?」
「うん!」
「ここに連れてくるために急に誘拐され飛行機に乗って山登りを?」
「うん!後、誘拐じゃないよ」
「…その失踪者が出るってところがこの祠が原因なんかじゃないよな」
「そうだよ!」
「つまりその危ない場所に僕たちを連れてきたということ…?」
「Yes!」
「ししょぉ…わたしたちにしねとおっしゃるのですかぁ?」
「そんなことないよ!ただちょっと頑張ってもらうだけで大丈夫!死なない死なない!」
《その頑張ってもらうの部分が怖い!》
「それにちゃんとこんな朝早くに来たのも理由があるんだよ〜」
睨みつけてくる弟子たちに言い訳を言う時不気味な音が鳴った。
バキィッ─グシャァ─……
そして扉が開く音も。
ギィィッ──
「うわぁ!」
声を上げたのは鈴菜だろう。
扉が開くと同時に風がどこからともなく吹き荒れた。
「あは、こんなすんなり、いくとは思わなかったな」
目の前には、黒い肌に黒い髪。唯一違うと言えば目の色が逆になっていることだろう。黒に白が浮かび上がるように見え不気味と感じる。
頬には白く03という数字が刻まれている。
【《《おれの眠りを妨げる不届き者は誰だ》》】
脳裏に浮かぶか数日まえの記憶。
『それがね〜新しい形態の穢がでたのよ』
『今から3日前A級の前に出たのが不幸中の幸いね。
《《言葉は、はっきりと発していなかった》》のだけれど見た目は《《真っ黒の人型》》らしいわ』
あぁ、きっと目の前の存在は、犂夏さんが言っていた存在なのだろう。
喋らないで欲しかった。言葉を話せないで欲しかった。そうしたら違うのかもとたった1%でも希望がもてたかもしれないのに。
カミサマは、どこまでも残酷だ。
出会ってしまったのだから。
あー、漫画とかである。ヒーローとヒロインの話。
記憶喪失なヒロインと覚えているヒーロー。
今の私の気持ちきっとヒーローと一緒なんだろうなぁ。
「し、ししょぅ。こ、このひとは?」
「違うよ。冬雪ちゃん。このひとじゃないよ
だって───ひとじゃないんだから。」
【ふむ。そいつの言う通りだおれは、ひとではない】
本来なら原作の夏頃に登場する敵。
夏休みを使い修行するためにここへきた夏弥たちが最初に遭遇する強敵。
穢としてひとの知能をもった化け物。
「ひどいなぁ〜そいつなんて。久しぶりの《《再会》》なんだしもっと感動的に行こうよ」
【何を言うておるおまえ。おれとおまえがあったのは初めてであろう?もし会っていたのならお前は生きていないはずだ】
「あは、確かに《《あんたには》》初めて会うよ。じゃあ自己紹介といこうか。」
そして───
『幸!イカサマしただろ!じゃなきゃ3連続ロイヤルストレートフラッシュが来るはずねぇ!』
『イカサマは、手口がバレなきゃイカサマじゃないんだよ』
「翔喜《瘴気》。|久しぶりイカサマの手口わかった?《はじめまして私は名は幸。あなたを倒す者だよ》。」