episode■ 幸せな少女の記憶 Ⅲ
時は初夏。
涼しい風が吹く日に幸は、木の日陰に座り込み本を読んでいた。
日向では、子供たちが鬼ごっこなどしているのか時々笑い声が聞こえる。
「さーちー!」
木の近くに座り込んかでいな幸に声をかけたのは桃色の髪をした少女だった。
「…るる」
本から目を離しるると呼ばれた少女の鮮やかな緑の瞳をじっと見つめた。
「何読んでるの?」
寄り添うように座り込んだるるに幸は、答えた。
「地球の滅亡〜人類は滅びる運命にある〜。」
「え?ってよく見たらサイコロ本じゃん…面白い?」
「そんなに。最後まで読んだけど、地球温暖化とか衛星とか並べて誰でも知ってそんなことを難しい風に言ってるだけ」
「ふ〜んって最後まで読んだの!?この量を!?」
「暇だったから」
「…じゃあさ!私と遊ぼ!幸って身体動かすの嫌いだから遊んでくれないじゃん!」
「運動はいや。もうやりたくない」
「う〜ん…あ!じゃあさオセロやろうよ!」
「オセロ…?」
「そう!シスターが寄付で貰ったって言ってたからあるはず!オセロなら身体動かさないしいいよね!」
「待ってオセロって何ってちょ、るる!引っ張らないで」
「さぁ!レッツゴー!」
◇◇◇
「負けた…」
「わたしのかちぃー!」
緑の板には数個黒があるものの白に染まっていた。
「…もう1回」
「いいけど、幸は私に勝てないよ〜」
「絶対勝つ」
この後も数回やったが結果は言うまでもない。
◇◇◇
「────ん?」
空が黒く染ったときに寝ていた幸はふと目を覚ました。
目に映ったのは椅子に腰かけ、申し訳ない程度で手元をランプで照らし何かを書いているようすのるるだった。
「──るる?」
「へぁう!あれ?起こしちゃった?ごめんね!」
幸の声に驚いたのか驚きの声を発したるる。
体も数センチ浮かんだ気もしなくもない。
「なにしてるの?」
「え、あー…。うん…もう隠せないかぁ」
「?」
「えっとね幸。信じられないけど聞いて欲しいことがあるの」
「…なに?」
「私ね───転生者なんだ。」
「え?」
「ここは”穢れがはびこる世界で僕にできること”通称はびせか。つまり簡単に言うとこの世界は漫画の世界なんだよ。
そして幸は。
───後に死んじゃう運命なんだ。」