episode8 始まり
「3日前にまるで人の形をした影のような穢が目撃されたの」
「場所は?」
「静岡らしいわ」
「どうなったんだ?」
「そこにいたA級が倒したらしいわ。言葉も動もまるでゾンビだったと言っているわ」
「・・・・幸大丈夫?」
「あら?顔色悪いわよ」
考え事をしていると憂は、幸が顔を伏せていることに気がついた。
それに便乗するように犂夏も幸に声をかける。
「え、あ、うん。大丈夫!犂夏さんその穢ってどれくらいの強さだったの?」
「あまり強くなかったそうよ。力も弱いし動きもノロイそうよ」
「そうなんだ」
「それじゃあこれにて解散。参加出来なかった人たちには、私から連絡しとくわ」
そう言って犂夏は、部屋を出ていった。
「それじゃあ幸。俺もこの後予定があるから今度一緒にご飯食べに行こう」
「うん!楽しみに待ってるね」
バタンッと音を立てドアは、閉じ部屋には幸一人しか居なくなった。
(終わり次第、学校へ言って様子を見に行こうとしたけど先にあれも見てから行こう)
そう結論を出すと懐からスマホを取り出し電話をかけた。
「あ、小埜寺?車手配できる?───あ、うんわかった。今から10分後ね?」
「よし!私も行くか」
残ったのは誰もいない部屋だけだった。
「あれ?白柳さん?」
「あ、梨花ちゃんじゃん!」
ロビーへ向かった幸に声をかけたのはそこで受付嬢をしている花鮫梨花だった。
「お久しぶりですね、いつぶりでしょうか」
「うーん、前々回の八地方会議以来だから……約半年?」
「まぁ、もうそんなに」
梨花と話していると振動を感じた。
「あ、お迎え来たみたい。じゃあまたね」
「はい、また会いましょう」
外に出ると目の前には黒い車が停車していた。
扉を開け乗り込む。
「お待たせしました白柳さま。」
「ううん、いいよ梨花ちゃんと話してたから」
運転席に乗っているのは70代の白髪が良く似合うダンディなおじ様だった。
彼の名は、波登里。
昔から幸のお世話をしている人だ。
「まっすぐ家に向かって、なるべく早く」
「かしこまりました」
いつもと違う雰囲気の幸だが波登里は、気にせずハンドルを握った。
◇◇◇
「到着致しましたよ。白柳さま。」
「ありがとう1時間後また呼ぶから。」
「承知しました」
マンションのドアを解除しエレベーターへ乗り込む。
住んでるマンションは、よく言うタワマンである。これは、政府から幸へ送られたものの一つである。
自分の部屋の前へ着くとカードーキーを差し込んだ。
ガチャと音がしドアを開けた。
玄関から少し歩くとリビングに配置してる机の上に置いてある1冊のノートを手にとる。
表紙に書かれている文字は相変わらず擦り切れて読めない。
だがそれを愛おしそうに指先でなぞりノートを開いた。
『■月●日
いままでは、動物型、魔物型の2種類に分けられていた穢れにもうひとつの形態が発見された。
人型の穢である。その姿は、まっくろくろすけでゾンビのような呻き声をあげるのが特徴。
初期の段階では、そこまで強くなくC級なら難なく倒せるくらい。
だけどそれは、まだ失敗作だったから。
成功作の人型穢が初めて現れるのは香露唐山。
原作によるとそこへ修行しに来ていた主人公たち一行と遭遇する───。』