episode4 決意
「うゔぅぅ〜ぐずっん、ズビズビ」
「・・・えっとー大丈夫ですか?」
さいホロくんを抱え号泣している少女に声をかけると身体がワナワナ震え目をがんびらいた。
「大丈夫なわけ……大丈夫なわけあるか!我が子をだいじーな!我が子を壊されたのだぞ!
うゔー、キリがいいところで本当のことを明かして、めでたしめでたしで終わるはずだったのに…どうしてこんな目に……!」
「いや、たとえそうなっても、めでたしめでたしではないだろ」
「んー、壊すのはまずかったかな〜」
呆れた雅と少女の反応に反省の幸。
「そ、それよりどうしてこんな事をしたんですか?」
「…グス。こんな事って?」
「朝会に偽物とはいえ穢を出現させ場を混乱に導いたことですよ!」
「あぁ、これは毎年恒例行事なんだ。と言ってもさいホロくんを壊されたのは初だがな…」
「恒例行事…?」
混乱してる楽を横目で見ながら立ち上がった。
「まぁ簡単に言うと。穢が出現してどんな態様ができるかのちょっとした確認テストだよ。まぁ安心しろ新入生。成績には関係しない。だから隅っこで怯えることしか出来なかった生徒共不安にならなくても良い」
そう言い放った言葉に周りは安堵の声を漏らした。
「まぁ、しっかり見てれば偽物だって気づく要素はけっこう合ったしね」
「え…」
「まぁ、混乱と恐怖で見えてないのは仕方ないか。」
「・・・で、どこで気づいたんで?英雄様?」
「ハハッ、その名前で呼ばれるのなんか新鮮〜」
恨めしそうに見つめる少女と嫌味を笑う幸に楽は気まづい気持ちになる。雅は、幸と言葉を待っておりお気楽そうである。
「まずひとつ。影がなかったこと。天井は、照明がつるされているし何しろあの巨体だし大きな影が出来てもおかしくなった。けどどこにも影が無かった。
ふたつめ。隅っこにいる生徒たちを狙っていなかったこと。あの形態は、スライムだし、身体の一部を切り離して飛ばすことも可能。動いてる的より動いていない的を当てる方が簡単なのにそうしなかった。
そしてみっつめ。スライムにスザーは、居ないんだよ。まぁまだ見つかってないが正しいか。」
指を3つ立て言い切った。
「この3つが偽物。もとい穢再現ホログラム装置だと思った理由かな」
「・・・・チッ。少しでも違ったら煽ってやろうと思ってたのに。」
「ハハッ、残念。煽れなかったね」
「どうして…」
「ん?」
「どうしてそこまで状況収集ができるんですか。」
「んー。大事だからかな。どんな戦いが有利か何が弱点がそうやって見極めながら私達狩人は戦ってるから。」
「見極めながら…」
「じゃあ。儂はそろそろ行くよ。もう役目は終わったも同然だからね」
制服の上から着用していた白衣をなびかせて出口に向かう。
「あれー?もう行っちゃうの?」
「儂は早く愛しのわが子を直さなければいけない使命があるからね。あぁ後。自己紹介がまだだったよね。儂の名前は、奇才羽風まぁよろしく頼むよ。」
「私は」
「白柳幸だろ?知らないはずがないじゃないか」
「自己紹介取られちゃったてか行っちゃった…嵐のような人だなぁ」
「貴方には言われたくないかと…」
◇◇◇
「夏弥さん、鈴菜さん大丈夫でしたか?」
「あ、楽…ありがとう」
楽は、夏弥と鈴菜の元に駆け寄り手を差し伸べた。
「夏弥さん…?」
「なつ…?」
「僕…怖かった。テレビの中でしか見たことの無い化け物が目の前に急に現れて…動けなくなって。強くなくてもいいと思ってた。ただ周りの家族や友達、大切な人を守れるだけの力があればいいと思ってた…!
けどダメだった…なんにも出来なかった……
悔しいものすごく悔しい。きっとこのまま学んでも家族や友達、大切な人なんて守りきれないって知った……
だから!お願いします!しろ、やなぎ先輩!僕に教えてください。守れる、力を!」
泣きながらそう訴えた夏弥。
「わ、私も!なんにも出来なくて足引っ張って自分ダサいって思って。だから私にも教えてください…!」
「もっちろん!そもそも先に誘ったのは私だしね!断る理由は無いよ!
いやぁーでも良かった!全員からいい返事が聞けて!
じゃあこれからよろしくね。ビシバシ鍛えていくよー」
「ッッはい!」
「フフ、なつ。涙拭いて目が赤くなってる」
「え、嘘」
「あぁ擦らないでください。余計にダメです」
「お前心意気すげぇな。まぁこれから頑張ろうぜ」
「あ、ちなみに今日の放課後トレーニング室Ⅰに集合ね。
今ここにいないもう一人の子も来るから」
『え……?』
「おい、幸どこいった!」
「この声はろうくん!やば。じゃごめんそう言うことだから!」
「え、ちょ待ってって…速…」
「幸ー!!どこいったぁー!」
「ハハッ」
作中で紹介出来なかったので…
奇才羽風の髪と瞳の色は千草色です