episode2 共闘
「これより朝会を始めます。一同礼。これから校長先生のお話です。」
「えー、1年生にとっては初めての───」
「ねぇ、なんか、2、3年生いなくない?」
「え…」
「先輩方だけじゃありません、先生も見当たらないです。」
すずと楽に言われて周りを見渡すと確かにいないことに気づく。
「元々1年の朝会が早く始まるじゃない?先生達は後で来るとか。」
「そうなのかな…」
「・・・・・」
「キャャャャャャア───」
少し疑問に思いながらも校長先生の言葉に耳を傾けていると突如後ろから悲鳴が聞こえた。
悲鳴の先にはテレビや動画でしか見たことがない穢がいた。
ドロドロとした見た目をしており額らしきところには黒く石が埋め込まれていた。
「どうしてここにッ──」
隣で楽が何かを言っているが僕は目の前に居る化け物に目が離せなかった。
◇◇◇
みなが穢を認識すると場は阿鼻叫喚に包まれた。
将来狩人を志す者と言えどまだ経験のない学生。
目の前に死が迫ってきたら誰しもが恐怖するだろう。
ごく一部を除き。
「おいおい、何でここに穢がいるんだ?」
現れたのは、緋髪と瞳をした入学式の日、幸とパートナーを結んだうちの一人獅子堂雅であった。
雅は珍しく入学する前から狩人ライセンスを持っていた。
とはいえ、戦闘経験は、ないに等しい。
「チッ──」
ズボンのポッケからジェットを取り出し握りしめた。
黒は朱に変わり使用者の望む姿に移り変わる。
鎌に鎖分銅を取付けた武器。
刃は、使用者を表しているかのように緋色に染っている。
雅は、鎖鎌を握りしめ穢に向かって駆け出した。
手始めとして鎌を穢を切りつけるように投げるが切りつけたとしてもドロドロとした身体はすぐ塞がってしまった。
一旦距離をとった雅は、考え込む。
「やっぱり、スライムか…つぅか全然手応えがねぇ。てことは身体じゃなくて硯に当てないとノーダメージってことか、よ!」
考えていると穢が雅に向かって身体を伸ばして押し潰そうとしてくるのを間一髪で逃れた。
周りの生徒達は怯えるのように縮こまっているだけである。
たとえジェットを扱えたとしても使う方法、戦闘経験が無である。それに恐怖で身体が動かない様子だ。
「チッ」
「加勢します」
「あ?お前さんはあん時の」
「ええ、それより今は、目の前のことです」
現れたのは楽だった。
楽も、珍しく狩人ライセンスを持つ1人であった。
「武器は」
「両槍です」
「相性わりぃな」
「ええ。せめて、遠距離武器がいると良かったのですが皆様動けない様子だだったので」
「でどうするよ」
「あの穢、鎖でしばれます?」
「やる価値はあるが期待はしない方がいい」
「・・・・もし無理だったら、気を逸らしてください、その隙に槍をぶつけます」
「出来んのか」
「分かりませんがやらないよりはマシでしょう」
「わかった」
その言葉で雅は、また穢に向かう。
穢の周りをグルっと何周かすると鎖を引っ張る。
鎖は引力で穢に巻き付くはずだった。
鎖は、スルッと穢をすり抜けてしまう。
「チッ──。こっちだ!」
作戦を変え雅は目立つように音を立て穢の気を引いた。
動き回り続け不意に鎌を硯に目掛けて飛ばすが間一髪のとこで避けられてしまう。
「今だッッ」
ヒュッ
なにかが通る音がした。
目を向ければ硯に向かって飛ぶ両槍があった。
不意をつかれたスライムは硯を破壊され討伐されるはずだった。本来ならば。
「なッッ!」
「──ッッ」
すり抜けたのだった。
「おいおい、確かにあの槍硯に当たったよな」
「えぇ、私の目にもそう写ったのですが、ね!」
もう打つ手なし。絶望に陥ったその時であった。
「あれ?なんでこんなとこに穢がいるの?」
作中で紹介出来なかっのでここで
【狩人ライセンス】
狩人の資格みたいなもので見た目はドックタグ。
これを持っていなければ穢討伐に参加出来ない。ファンタジーもので言えば冒険者カードみたいなもの。
階級に変わって素材が違う。
E級 鉛
D級 銅
C級 鉄
B級 銀
A級 金
S級 黒曜石