episode1 狩人と穢
「あぁ、会議自体は、20時に始まる、今はっとーもう18時か…ギリギリだな」
「だよねぇー、まぁ私事じゃないから遅刻しても許されんじゃない?今から急いで乗って帰ればちょい遅刻でしょ」
「まぁ、そうだよな…よし急いでプライベートジェット機に乗って向かうぞ」
「おー!」
◇◇◇
19︰50 ある会議室
円形型の机を囲むように設置されている八の椅子。一見見てみれば同じに見えるがよく見ると違うところがある。
背もたれのてっぺんのある部分に切り抜きの飾りが付いているのだ。
北海道は、時計台とラベンダー。
東北は、大内宿と稲。
関東は、東京タワーと桜。
中部は、白川郷と紅葉。
近畿は、清水寺と藤。
中国は、嚴島神社とネモフィラ。
四国は、小豆島とコスモス。
九州沖縄は、シーサーとハイビスカス。
地方の有名な物が切り抜きとして椅子に飾られている。
少しでもその道に進んでいるものがいるとすればその美しさに目を奪われるだろう。
それほどその飾りは美しい。
その内席が埋まっているのは、4つ。
東北代表 明真申竜也
中国代表 輝李万久宇羅
四国代表 姫宮妃茉莉
九州沖縄代表 犂夏莉
以下4名である。
「杏椰君と憂君がギリギリまで来ないのはいつもの事だけど大塚さんと幸ちゃんがこんな時間になっても来ないのは珍しいね〜」
そう発言したのは、輝李万久宇羅。
少し長めなミルクティーの髪をハーフアップにして結んでいる一見優男に見える男だ。
軽い言葉に軽い見た目で見る人が見たらチャラ男にも見えなくもない。
「幸ちゃんは、大塚さんの所に緊急要請がきて北海道へ行っているわ〜、さっき終わってそっちへ向かうって言う連絡が来たから少し遅れて来るんじゃないかしら」
そう答えたのは、犂夏莉。
碧みかがった艶のある黒髪を下ろしおっとりとした口調で喋る彼女は、お嬢様という言葉がピッタリだろう。現に涼しげな顔立ちは、いつも微笑みを絶やさない。
するとその時ある1人の青年が入室してきた。
艶のある漆黒とも言うべきサラサラとした髪に冷たい印象を与えるつり目ガチな目元、まさに美青年とも言える青年は、中部代表 黒峰憂。
「久しぶりだね〜憂君、元気にしてた?」
「はい、久しぶりです久宇羅さん」
すると目立つ赤髪に整った人懐っこい顔立ちの好青年と言える青年、夜鴻杏椰が入室してきた。
「あ、杏椰くんも久しぶり〜元気?」
「はい!久しぶりです、久宇羅さん!勿論元気にしてましたよ!!久宇羅さんも元気でしたか?」
「もちもち〜、元気にしてたよ〜最近風邪が流行ってるみたいだから気をつけなね〜」
「分かりました!久宇羅さんも気をつけて下さい!」
「ハッ馬鹿だから風邪引かないだろ」
「あぁ、なんだと、お前なんて言った」
「馬鹿だから風邪引かないだろって言ったんだ、難聴かお前耳鼻科に行ってみたらどうだ」
「あ〜また始まった…」
「ホホホッ、若者は元気じゃの〜」
「ヒッェ!」
「これは元気なのかしら…?」
そう言い争う杏椰と憂は顔を合わせる度喧嘩する世に言う犬猿の仲だ。
その様子を見て呟く久宇羅に感心する明真申竜也、怯えて身体を丸める仕草をする姫宮妃茉莉、竜也の言葉に疑問を抱く犂夏。
どんどんヒートアップしていく杏椰と憂。
収拾が着くのは今から5分後に幸と大塚が到着した頃だった。