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和風異世界いかがですか  作者: 真打
第十三章 完全な敵対
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13.7.共闘①


 ドン、と気配が大きく変わった案山子夜に、天狗たちが大きく怯む。

 その瞬間、案山子夜は天狗の眼前に出現してうち一体を簡単に両断した。


「「は……?」」

「貴様ら程度ではわては斬れませんぞ」


 今し方斬った天狗を足掛かりにし、蹴り飛ばして次の相手に飛びかかる。

 斬っては蹴り、斬っては蹴りを繰り返して的確に数を減らしていった。

 天狗も自慢の速さで回避するのだが、なぜか上手くいかない。


 なぜだ、と頭の中で呟くと同時に、視界の中で金色のオーラを捉えた。

 雪野が手を前に出し、守の御力を使っている。

 これにより本来の力を発揮できないとわかった。


 原因がわかったならば、解決するのみ。

 すぐさま武器を構えて突撃すると、途中で強制的に止められてしまう。

 強烈な違和感を身体中に覚えると、次の瞬間体がバラバラに解体された。


「があ……!?」

「見えなくてもこれなら守れます」

「すご……」


 地面から剥がれ、起き上がった継ぎ接ぎが天狗を簡単に捕らえてバラす。

 攻めは案山子夜が、守りは雪野と月芽が担当すると天狗の数はたちまちに減っていく。

 案山子夜にいたっては相手の動きを全て見ることができているらしく、防御面でも優秀だった。

 と、いうより……。


「……前より強くなってない……?」


 守の御力で動きを遅くしても、やはり天狗は速い。

 並みの人間であればやられてしまいかねないのだが、案山子夜の動きは天狗を上回っている。

 それに新しい武器を担いでおり、それを巧みに操って戦う様は、舞っている様にも見えた。


 案山子夜の異術、年功で自身の身体能力を強化しているのではあるが、それ以上に旅籠からもらった武器による褒美の恩恵が大きい。

 そして両刀斬天秤槍は彼の扱う流派、稲嵯虚心流と相性が良かったようだ。

 武器を振ったときの遠心力で移動したり、義足を軸にして乱舞を繰り出したりと、とにかく動きが多彩だった。


「なめおって……!」


 ババッと腕を振るって印を組む。

 力を込めた指先で案山子夜を指せば、鋭い風圧が槍のように射出された。

 案山子夜は両刀斬天秤槍を振るって回避するのだが、二度、三度と撃ち込まれると動きが鈍る。

 六度目の攻撃で回避できないと悟ったらしく、切り裂くために構えを取った。


 バンッ!

 風圧の槍が大きな音を立てて霧散する。

 何が起こったか一瞬分からなかったが、人間の結界の気配を感じ取って納得した。


「人間が……異形を守ったですと……?」


 視界の端に、手をこちらに向けている雪野の姿が映る。

 雪野は透明の結界を展開し、案山子夜を天狗の攻撃から守ったのだ。


「礼は言いませぬぞ」

「私も言ってないのでおあいこです」


 武器を回し、背後に構える。

 残り三体となった天狗だったが、未だに引く様子はない。

 寧ろ背水の陣でも敷いているように敵意をこちらに向けてきた。

 結界で閉じ込められているので、逃げる手段がなく覚悟を決めたといったところだろう。


 案山子夜はすぐに膝を曲げて飛びかかる姿勢をとった。

 これを見て天狗が構える。

 びくりと反応した様子から、彼らは恐怖に打ち勝ちながら対峙していると分かった。

 だが容赦はしない。


 バリャアアアンッ!!


「なに?」

「結界が……!」


 ガラスが砕ける音が聞こえた。

 それと同時に周囲に展開していた結界が瓦解していく。

 今破壊されたのは透明な結界だ。


 この結界……内部からの攻撃に耐えられるよう、結界の特徴を反転させて作ったものだった。

 普通、結界は外部からの衝撃には強いが、内部からの衝撃に弱い。

 特徴を反転させて天狗を閉じ込めていたのだが……これが破壊されたということは外から攻撃が加わったはず。


 雪野はすぐさま自分と月芽を守る結界を展開した。

 案山子夜はその上に乗り、月芽は結界の周囲で継ぎ接ぎを立たせて警戒する。


「やはり、始末すべき者共なり」

「芦山様……!」


 八角棒を手にした天狗が、ゆっくりと降りてきた。

 他の天狗と違って服装が少しばかり違い、気配も大きい。


 月芽は彼を見たことがある。

 不落城から旅籠を救出したあと出会った、あの天狗だ。

 あの時とは違う異様な気配。

 これは仲間を殺されたからなのか、それともようやく本気を見せただけなのか……。

 なんにせよ、以前出会った芦山とは別人のようであった。


「あの時の……」

「継ぎ接ぎの小娘か。此度は管狐も居らぬと見える。邪魔立てする者、ここに居らず。存分に、やり合おうぞ」


 一本下駄を軽く鳴らす。

 カコン……と美しい音が聞こえたと思った瞬間、案山子夜が吹き飛んだ。


「ぬうおおおおっ……!?」

「案山子夜!?」

「軽いようであるな?」


 これに驚いたのは月芽や雪野だけではない。

 残っていた三体の天狗も、芦山の力を見て驚愕していた。


 面倒くさい反応だ、と呆れるように目だけで訴えたあと、背後にいる天狗に指示を出す。


「行け。邪魔だ」

「……は、はっ……!」


 三体の天狗はすぐさま飛び立ち、あっという間に見えなくなった。

 ようやく存分に体を動かせる、と首と指を鳴らして調子を整えると、八角棒を肩に担いだ。


「参るぞ」


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