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和風異世界いかがですか  作者: 真打
第十章 攻略準備
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10.6.討伐隊編成


 蛇髪の声かけによって雪女討伐隊が編成された。

 旅籠が見に行ってみれば、心底気合いを入れている黒細の姿が目に入る。

 どうやらメンバーの一人らしい。


 他にいるのは空蜘蛛兄弟、国岩、無形だ。

 そして氷進率いる雪の異傀儡たちがいた。

 これで雪女討伐へと向かうらしい。

 編成に意味はあるのかと聞いてみれば、蛇髪はすぐに頷く。


「相手は雪、つまり冷気を扱いますから、それが効きにくい者を選んだのですじゃ」

「黒細って寒さ強い?」

「ぼちぼちでさ!」

「ああ、黒細は本人の強い希望じゃの」

「そういうね?」


 本人が行きたいなら仕方ない。

 別に止める理由もないので、頑張ってもらうことにする。

 黒細は強いし、寒さにも耐えられるだろう。

 そもそもなんの異形かよくわからんし!


 すると、氷進が近づいてきた。

 雪の体なので寒さはへっちゃらだろう。

 問題は雪ん子なのだが……これは彼らに倒してもらうのがいい。


「頼めるかい?」

「承知いたしました。旅籠様。此度の武将は誰になりますでしょうか」

「え?」


 氷進は真剣な表情でこちらを見てくる。

 武将……つまりこのメンバーの隊長を決めてほしいということなのだろう。


 確かにこれは必要かもしれない。

 各々は強くなったが、強いからこそまとまりがなくなるということもある。

 誰かをリーダーにしてまとめてくれるのであれば、動きも良くなるだろう。


 しかしこの場合は誰を指名すればいいのだろうか。

 無形は喋れないので除外。

 国岩も声は聞き取りやすくなったが、まだ実力不足感が否めない。

 というより実力を知らないので任せにくい。

 空蜘蛛兄弟はこんなんなので論外。

 氷進はすでに部隊を率いているので……。


「黒細だな」

「あやっ!?」

「黒細は地形をよく把握してるし、異傀儡衆たちだって動かせるでしょ。実力もあるし文句無し!」

「こりゃ責任重大でさね……! わかりやした! 一人で突っ込むつもりでやしたが、今回は皆を使って見せますでさ!」

「うん、よろしく!」


 あぶねぇ! 任せてよかったわ!

 一人で突っ走んな死ぬぞこいつ!


 と、そこで考え直す。

 これから先、味方の数が増えるのだから指揮系統の問題が発生してきそうだ。

 今のうちに指揮系列、連絡手段などを統一しておいた方がいいかもしれない。

 それに合わせて武将となる異形の育成……。

 一人が強いのは勿論だが、連携や団体戦の指揮を任せられるようにならなければならない。


 これは可及的速やかに行い、統一、育成を始めた方がよさそうだ。

 これが最初の指揮となる黒細だが……果たして大丈夫だろうか……。


「それでは、行ってきやすでさ!」

「「いってきまーす!」」

「あ、うん! 行ってらっしゃい!」

「良イ報告ヲオ待チ下サレ」


 無形は手を上げ、雪の異傀儡である氷進は一礼をして背を向けた。

 少数精鋭の編成になったが、彼らであれば問題なく雪女を仕留めてくれることだろう。


 さて、問題は以津真伝だ。

 まだ能力がはっきりしていないし、そもそもこの一ヶ月の間に姿を現すかも分からない。

 死体を放置していればいいということだが……。


「罠を仕掛けてるみたいだなぁ」

「罠、でありまするか」

「おわ、居たのか壱成」

「氷進の門出でありますゆえ、見送りに。指揮を黒細殿に任せるとのことでしたが、氷進の部隊を扱えますでしょうか?」

「懸念があるの?」


 そう問えば、少し口ごもる。

 自分たちより先に旅籠に仕えた者を評価するのに若干の抵抗があるのだろう。

 だが他者からの意見は重要だ。

 遠慮なく言ってみてくれ、と促せば小さく頷いて話し出す。


「氷進は奇襲を得手としております。足元に氷を張り、滑るように移動しまする。故に目測だけで指示を出せば、本陣が間に合わぬ場合もござりましょう」

「ああー、なるほどね」


 彼が懸念しているのは移動速度の話だ。

 氷進たちは移動速度が速く、予想していた時間に本隊が間に合わず連携が取れないのではないか、と思っているのだろう。


「確かにそうかも」

「ではなぜ黒細殿に任せられたので?」

「異傀儡衆は知らないよね~」


 旅籠はニコニコと笑って遠くを眺める。

 壱成は首を傾げて答えを待つ。


「黒細は速いよ」

「そうなのですか?」

「浮いてるしね。氷進たちはどれくらい速いの?」

「馬ほどはあるかと」

「じゃあ黒細は車だね」


 聞きなれない単語に再び首をかしげたが、旅籠は説明する気がないらしくその場をあとにした。

 まだ傀儡城でやることがあるのだ。

 はやく月芽を見つけなければならない。


 壱成は腕を組んで討伐隊が消えた森を見る。

 しばらくしてから、自分も傀儡城に戻るため旅籠の後を追ったのだった。

 

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