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和風異世界いかがですか  作者: 真打
第九章 怨念の乱
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9.9.連携


 城下町に入った第一陣は、地響きを足の裏で感じ取りながら敵を葬っていた。

 彼らの足元には常に毒煙が停滞しており、少し離れた場所からやってくるのっぺらぼう衆には投擲して風船を割ってやる。

 これを何度も何度も繰り返しており、敵を仕留めて投げ捨てるを繰り返していた。


 さて、ここからは先はのっぺらぼう衆の中の家臣団が住まう武家屋敷がある。

 今まで戦ってきた彼らとは比べ物にならないほどの技量を有しているかもしれない。

 そんな警戒心を持ちつつ前進していると、待ってましたと言わんばかりに矢が飛んでくる。


 しかしこれは石の異形たちが全て跳ね返した。

 この程度であれば問題ない。

 数体の石の異形が腕を構えて力を籠める。


「待ち伏せでやすか~。なるほど、増援には向かわせなかったんでさね」

「有利な地形で叩くつもりかな?」

「そうだと思うでさ。異傀儡衆には矢が効きやすんで、気をつけやしょう」


 黒細がそういった瞬間だった。

 ザッ!! っと大きな足音を立てながら、槍が家々の隙間から飛び出した。

 驚いて身構えると、のっぺらぼう衆が二人で一つの槍を握っている。

 これを見た楽は目を見開いた。


「んげ!? 対策された!!」

「ニッ?」

「黒細! 楽! 防衛!」

「「了解だー!」でさ」


 二人が動き出す前に、のっぺらぼう衆が動き出す。

 家の陰から出てきた彼らは一気に詰め寄って攻撃を仕掛けてくる。

 動きは若干鈍いが、彼らは本来出せる力を補っていあっているのでその火力は高い。


 石の異形が腕で槍を防ぐと、若干押された。

 その次に別の槍が飛んできて、更に三本、四本目の槍が飛んできて完全に押し戻される。


 そして彼らは槍以外にも、ただの木の棒を持っていた。

 これは一人で扱えるらしく、そのまま背の低い異傀儡衆を集中的に狙って殴り飛ばす。

 ピギュッと嫌な声を上げて彼らは少し遠くまで転がっていった。


「対応が早いな……!」


 楽が歯を食いしばる。

 城下町の外で戦った時、逃げて行った非戦闘員がこちらの特徴を教えていたのだろう。

 ただ逃げるだけではなく、戦闘に役立つ情報を持ち帰る彼らのやり方には脱帽だ。


 情報を元にして自分たちが弱体化していることを把握し、それを補うやり方をこの場で発見して実施している。

 彼らは戦場慣れしており、連携も悪くない。

 こちらを見抜ける力があるというのは……なかなか厄介だ。


 ここで黒細が前に立ち、とりあえず近くにいる敵を全員葬った。

 遅れて楽が飛び出して糸を吐き、敵が攻めてくる道を覆って接近を遅らせる。

 その場しのぎではあるが陣形を組みなおすのには十分だ。


「クニイワ! 下がれ下がれ!」

「グ……!」


 一体ののっぺらぼうをぶん殴ってから後退する。

 それと同時に向こうも陣形を整えたようで、一箇所に集まって密集陣を構築した。

 槍がこちらに多く飛び出している。


「はっはぁー! どうした異形共かかってこいやぁ!」

「さぁ、君たちはどうするでさ?」

「コウゲキ、イシ、キカナイ。イシ、マエデル」


 ブンッと尻尾を振るって地面を叩いたクニイワを合図に、石の異形たちが一斉に前に出た。

 その後ろに異傀儡衆が並んでおり、時を待つ。

 のっしのっしと歩いて移動し、敵の間合いに入った瞬間のっぺらぼう衆が一斉に攻撃を仕掛けてきた。

 石の異形たちに刃がぶつかり火花が散る。


 その瞬間だった。

 異傀儡衆が一斉にのっぺらぼう衆の足元を駆け抜け、陣形の内部に侵入する。


「あっ! まずっ……」


 重い武器は小回りが利かない。

 小さな体で走り回る異傀儡衆は、的確にのっぺらぼう衆を仕留めていった。


 この連携を見た黒細と空蜘蛛兄弟は感嘆の声を漏らす。

 お互いが自分たちの得手を理解しており、それが見事に噛み合った動きだ。

 これは旅籠に報告していい褒美を取らせてあげなければならないな、と黒細は腕を組んで感心したように笑った。


「これならのっぺらぼう衆を倒すのに、そこまで時間はかからないかもでさね」

「だけどまだ山城の敵が残ってるよ。岩とか落とされると厄介だ」

「ニー……」

「ま、まずはこの辺の敵を一掃するでさ。もう十分活躍したし、第二陣と合流して一気に……」


 ドンッ!!

 鋭い地響きが足元を掬い、敵味方問わず転倒する。

 唯一宙に浮いていた黒細だけが周囲の状況を確認するために顔を上げた。


 木夢がいない。

 いや、居るのだが……倒れている。

 急いで立ち上がろうとしているので無事ではあるのだろうが、様子が変だ。

 どじを踏んでただ転んでしまった……というわけではないらしい。

 その証拠に、木夢が木材の毛を逆立ててガラガラと音を立てていた。


「な、なんでさ……?」

「くっはっはっはっは……」


 異傀儡衆に身体中を突き刺されたのっぺらぼうが笑い出す。

 瀕死の者もかすれるように笑っており、この状況を嬉しそうにしながら鳴り響く地鳴りを聞いていた。


 この笑い方、嫌な感じがする。

 まるで敵に必ず死が訪れるという確信があるような、そんな感じだ。

 嘲笑っていたのっぺらぼうの一人が、こちらに顔を向ける。


「お前らが……来ることは、分かっていた……! だから、呼んでおいたのだ……」

「誰をでさ」

「平将門! ぬぁはははははははは!」


 その言葉に、異形一同は目を見開いた。


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