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和風異世界いかがですか  作者: 真打
第九章 怨念の乱
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9.7.風船量産


 タマエキの隣で楽が一生懸命弱体毒煙を吐き出し、包む作業を永遠と行っていた。

 異傀儡衆がそれらを丁寧に運び出しており、綺麗にまとめてくれている。


 今回の要はこいつだ。

 十分な量を作っておき、いつでも使えるようにしておかなければならない。

 他にも、木樹には矢の生産を任せており、石の異形たちには矢じりを作ってもらっている。

 次第に装備が安定してきていることに満足しつつ、旅籠は一息ついて汗を拭った。


「カコロコッ」

「ふぅー……。どう? こんな感じ?」

「カコカコ」


 嬉しそうに頷く木夢は、相変わらずカコカコと音を立てた。

 その後ろには斬り飛ばされた木材の破片が転がっている。


 私は木夢の背中に乗り、直刀の日本刀で馬術の訓練をしていた。

 これから戦場に出る以上、やはり最低限戦えるようにしておかなければならない。

 そう思って味方の力を借りて戦う方法を訓練している。


 今回は木夢の背中に乗っての馬術。

 馬術といっていいのかわからないが、こっちの方が分かりやすいのでこれで統一させる。

 二口から奪った直刀の日本刀は切れ味がよく、木材を数十個斬ったが刃こぼれ一つしておらず、さらには切れ味も劣らない。

 よほどいい腕の刀匠が拵えたものなのだろう。


 直刀は反りのある日本刀相手には不利だと聞いたことがあるので、いつか手放そうと思っていたがなんだか愛着がわいてきた。

 暫くはこれを使ってもいいかもしれない。


「向こうも順調っぽいね」


 タマエキと楽を見やれば、一生懸命毒煙入りの風船を作ってくれている。

 今後も使えるように多くを生産してもらっているが、あれを保管する蔵が足りなくなりそうだ。

 そろそろストップをかけたほうがいいかもしれない。


 そこで私が特訓を終えたことに気づいたのか、五昇と月芽が歩いてきた。

 月芽の手には手拭いと竹の水筒が握られている。


「お疲れ様です、旅籠様。これをどうぞ」

「ありがとう。五昇、どうだった?」


 手拭いで汗をぬぐいつつ、水筒を受け取って水分を補給する。

 五昇は一つ頷いて遠くを指さした。


「のっぺらぼう衆のいる場所は分かりました。近辺に他の妖はいないようなので、戦いに集中できるかと」

「ふぅ。抜け道はあった?」

「ワタマリを使えば確実に中央まで進める場所を見つけました。此度の戦では崩落村の異傀儡衆と石の異形たちを起用するとのことでしたので、細道でも問題ないかと。黒細が描いた地図でいう南に果樹の群生地があります。背の低い異傀儡衆、数の少ない石の異形たちであれば容易に侵入できるかと」

「異端村の異形たちはどうしようか」

「石と異傀儡衆を第一陣、異端村異形衆を第二陣とするならば、第一陣がのっぺらぼう衆と戦っているとき、第二陣は増援を防ぐために北側からの強襲を仕掛ければよいかと。こちらは、ワタマリを使わずに大手を振るいます」

「いいね、採用」


 奇襲と強襲か。

 でも強襲部隊は大きく活躍しすぎてもらっちゃ困るから、向かってきた奴らだけを返り討ちにする戦法の方がいいかな。

 派手に見せるために少し大立ち回りはしてもらおう。

 てなると、木夢の出番だ。


 体の大きさを変えることができるし、数十メートルくらいにもなれるから目立つだけだったら木夢だけでも十分である。

 木夢の巨大化を合図にするのが強襲の号令としてもいいかもしれない。

 頼むぞ~。


「もう少し策を練りますか?」

「ううーん、ここまで決まってればあとは大丈夫だと思うけどね」

「では配置を考えましょう! 第一陣を守る異形が必要です!」

「あ、そっか。んーそうだなぁー」


 まず、確実に必要なのはタマエキと楽だ。

 もう作る必要がないくらい毒煙入りの風船は作ってもらっているが、現地で作れるのとそうでないとでは安心感が違う。

 風船を使うのを躊躇してもらっては困るのだ。


 追加で空蜘蛛兄弟の角も編成に入れていこう。

 兄弟で事に当たったほうが何かと連携も取りやすいはずだ。

 あとは捨て身が得意な黒細を入れておくことにする。


「この四人が第一陣に編成する異形ね」

「では、私がお伝えしておきます。他の異形は第二陣に組み込まれますか?」

「いや、第三陣も作るよ。こっちは機動力の高い異形がいい。といっても、月芽がいれば問題ないかな」

「お任せください!」

「うん、期待してる。そんで、五昇にもこっちに入ってもらうよ。戦況を把握できる異形は月芽と相性がいいから」

「承知いたしました」


 ペアになったことで、月芽は五昇に笑顔を向ける。

 それに応えるように、五昇は胸に手を置いて軽く頭を下げた。


 月芽の異術は強力だが、情報がなければ安全に繋げられないという欠点がある。

 だが五昇が把握してくれたなら、すぐに安全な場所に継ぎ接ぎを繋げて増援を送ることができるはずだ。


 もっと索敵が得意な異形が増えてくれたらいいんだけどなぁ……。

 ま、高望みはやめておこう。

 今いる彼らの強みを存分に発揮してあげるのが、私の勤めだ。


「んじゃ、第三陣には私、月芽、五昇、無形と異端村の異形五十。あとは第二陣に編成。第一陣の戦闘が開始されてから十分後、北から第二陣を動かす。ここの要は木夢ね。第三陣は危ない場所に向かって救出する役割でいこう」

「わかりました!」

「承知しました。では、全員に通達してきます」


 五昇は一礼をすると、木夢に乗って素早く移動してしまった。

 一時間もすれば作戦は全員に伝わるだろう。


「あ、出発時刻伝えるの忘れた……」

「夜ですよね?」

「明日行きます?」

「いや、今晩にしよう」


 早い方がいい。

 月芽にワタマリを集結させておくように頼み、私はタマエキと楽に毒煙入りの風船の生産を止めるように伝えにいったのだった。


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