表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
和風異世界いかがですか  作者: 真打
第九章 怨念の乱
120/141

9.2.拠点・十山城


 異形たちが最も今やらなければならないこと。

 それは己らの強化。

 数を集めるのもそうではあるが、そもそも現在の戦力がまともに戦えなければ他の異形たちを救うことは叶わない。


 十山城に本陣を置いた異形たち一行は、ようやく部隊を二つに分けて動くことができるようになった。

 戦力の補充と、戦力の強化を同時に行う。


 戦力の補充に関しては明らかな強さを有している黒細、布房、月芽に向かってもらっている。

 この三人であれば確実に異形たちを助けてくれるだろう。

 向かった場所は崩落村という場所だが……。

 無事であることを祈るばかりである。


 戦力の強化は、女郎蜘蛛の巣にいる蜘蛛の子供を殲滅するという蛇髪の提案を採用した。

 本体が死んでも子は生きているらしい。

 だが火を噴く程度でそこまで危険ではないので、石の異形たちにすりつぶしてもらっている最中だ。

 空蜘蛛兄弟の兄貴である楽がその手伝いを行い、引率をしている。


 十山城ではタマエキ、そして角が護衛を務めてくれており、不落城まで行動を共にした異形たちもここに残ってくれていた。

 彼らには十山城の整備をお願いしているところだ。

 あれから一切手が付けられていないので、片付けと防衛設備の強化を任せている。

 木樹がいるのでこの辺は問題ないだろう。


「んで、私はちょっと暇になっちゃったと……。ああー蜘蛛退治行きたかったなぁー!」

「ニー」


 タマエキと一緒にワタマリで遊んでいると、隣にいた多足蜘蛛が口を開く。


「今は少ない戦力を三つに分けていますからねぇ。何なら一つは少数精鋭。月芽がいるのですぐに帰ってくるとは思いますが……ちょっと遅いですね。心配です」


 空蜘蛛兄弟の弟、(かく)の言葉にタマエキも頷いた。

 確かに戦力がまだまだ少ない。

 とはいえ……散り散りになっている異形たちを集めるのは骨が折れる。

 それから育成も挟まなければならないので、軍といえるほどのものにするにはもう少し時間がかかるだろう。


 怪蟲は地面を掘り起こしてくれるので戦い方によっては強力な戦力になるが、その場を納めるとなればあまり地形は破壊したくないところだ。


 あの不落城……。

 シュコンは『黒細に与えると良い』と言った。

 と、いうことは褒美の価値によって異形は別の変化をもたらすのだろうか?

 今は検証もできないので想像でしかないが、とりあえず目下の目標は不落城の攻略である。


「戦力なぁ~……。ワタマリ~。君強くなってよー。勝手に増えるしめっちゃいいじゃん」

「ニー」

「でも人間の城程度であれば簡単に落とせるのではありませんか? と、いうより……。今仕掛けるのが最も良いのでは?」


 角の言わんとしていることはよく分かる。

 不落城は怪蟲によって地形を壊され、火災も発生して多くの被害が出たはずだ。

 確かに攻めるのであれば疲弊している今なのだが……。


 それじゃ意味ないんだよね。


「人間は異形を侮ってる」

「ニッ」

「それで?」

「相手が万全な状態で叩き潰したいじゃん?」


 この言葉に、角とタマエキは顔を見合わせた。

 だがすぐに大きく頷く。


「よい案でございますねぇ!!」

「ニニニニッ!」

「これが成功すれば向こうも後退するだろうしね~。不落城って名前の城を私たちが落とそう。そんで、そこを踏み台に富表神社に向かうよ」

「となるとやっぱり戦力と戦力強化が必須ですね。妖の存在もありますし」

「そうなんだよなぁ~~~~」

「ニィー……」


 おそらく、攻め込むとなれば冬となる。

 妖が徒党を組んで来られても面倒なので、準備が整い次第攻め込みたいところなのだが……。

 戦力強化にどれだけ時間がかかるか分からないのがネックだ。

 褒美も無限にあるわけじゃないので、この辺の収集も必要である。


 まぁ褒美に関しては不落城を落とせば何とでもなるか。

 とりあえず皆の様子を見ながらやっていくのがよさそうだなぁ。


『『旅籠様ぁー!』』

「おわぁびっくり! いらっしゃ~い」


 考え事をしていると、急に扉が開け放たれる。

 そこには白っぽい小さな魂が幾つもくっついている異形がいた。

 ニコーっと笑っている口には鋭い牙が並んでいる。


 そんなのがゴロゴロと転がり込んできた。

 これをタマエキが全て押さえる。


「ニィー!」

「ニバニバ! こんなに転がり込んでくるなぁ!」

『『あややすいませんっ! 旅籠様、魂蟲を持ってまいりましたよ!』』

「おおー! やったぁ! ありがとうねニバニバ!」

『『どういたしましてなのです!』』


 籠一杯に入った魂蟲を受け取り、早速一つつまんでみる。

 やはりどんな食材にも劣らない美味さがあった。

 幸せそうにそれをパクパクと食べていく。


 ニバニバは仕事を終えたといわんばかりに、その場からススーっと移動して去っていった。

 なだれ込んでくるニバニバを抑えていたタマエキは小さく声を漏らす。


「……ニバニバってあれで一匹なんだよね?」

「そうですね。分裂してるけど意識は一つらしいです。だからあいつの口は全部一緒に動きますよ」

「分裂能力はないかぁ……。んー、そう都合よくはいかないか」


 何か褒美を与えてみて、それで覚醒した異形たちに期待するほうがいいかもしれないな。

 とりあえず、皆が返ってくるのを待つしか今はやることがない。

 石の異形たちがどれだけ強くなって帰ってくるのかが楽しみだ。


 月芽の方の戦力補充……上手くいってるといいなぁ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ