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和風異世界いかがですか  作者: 真打
第七章 味方を求めて
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7.13.寝る!


 危機は去った……と言ってもいいだろう。

 接近してきた敵を木夢が感知して初撃を繰り出し、ケムジャロ……もとい無形がトドメを刺してくれた。

 空蜘蛛兄弟は色々片付けをしてくれたようだ。


 ようやく落ち着くことができた一行だったが……私は急に眠気が襲ってきた。

 そりゃそうだ。

 殺され続けて脱出してから全然眠っていない。

 流石に眠い。


 とはいえできることは今の内にやっておかなければ……。

 月芽、教えて。


「あぁー……。今どんな感じぃー……?」

「異端村は無傷です。怪我をしていた異形たちも治癒が完了しておりまして、もう一緒に移動できます。移動先は十山城で、現在は移動のための準備を行っています」

「うん……うん……。じゃあいいかな……」

「あとワタマリが増えました」

「……」


 聞かなかったことにしておこう。

 いやどうすんねん。

 ……起きたら考えよう。


「移動は……明日でいいかな……」

「あっ! ぜ、全然大丈夫ですよ! すいません旅籠様と異形たちの体力の違いを失念しておりました……」

「んじゃ……久しぶりにあの家で寝るね……」

「はい! ワタマリ、お仕事ですよ!」


 月芽がそう言って手を叩けば、ワタマリたちが大量に集まってきて旅籠を運んでいく。

 増えすぎてベッドにもなるようになったので、今日は気持ちよく眠れるかもしれない。

 旅籠は運ばれている最中に眠りについてしまったのだった。


 旅籠を見送った異形たちは、各々が自由に行動を始める。

 最初から今までを旅籠について回っていた異形たちは警備に回り、まだ弱い異形たちは村の中心で休んでもらった。


 これから移動があるとはいえそれは一瞬だ。

 月芽が継ぎ接ぎを伸ばせばそれで済む。

 なので彼らがこれから考えるのは、十山城に居を置いた後の話だ。


 集まった異形たちの内、話を聞いていた楽が足を上げる。


「落水様と案山子夜のいる一山への増援はどうするの?」

「人間の里の最前線……。とはいえ、あのお二方であれば問題ないじゃろう」

「案山子夜ってそんなに強いのー?」

「強いぞ。落水様以上やも知れん」


 蛇髪の言葉に数名が目を見張る。

 しかしそう簡単には納得できなかった楽は、首をかしげた。


「そんなにー? あんまり想像がつかないなぁ……。蛇髪様は何をもって案山子夜を信頼しているの?」

「異術じゃの」


 そして戦い方、と付け加えた。

 まず案山子夜は名を与えられる前は足一本で戦っていたのにも関わらず、それ相応の力を有していた。

 それが義足とはいえ二本足となり、三本目の足となる槍の扱いは卓越していると考えているらしい。


 更に蛇髪は案山子夜が異術を使うことができると看破していたようだ。

 これは蛇髪の力により把握できたとのこと。

 内面に納めている異術の力をなんとなく感じとることができるらしい。


「んーーーー悔しい!」

「それが本音じゃの? 楽も成長すべきじゃなぁ」

「でも案山子夜が強いってのはあっしでもわかったでやすね。本当に任せても良さそうでさ」

「ではどうしますか? 妖の驚異もまだありますので、そちらに戦力を振り分けますか?」

「そうじゃのぉ……。拠点ができればそれも可能。戦力はまだまだ欲しいところじゃが、村はあと一つしか把握できておらん」

「ヤガニ衆に期待しましょう」


 月芽の言葉に誰もが頷く。

 海辺限定ではあるが、彼らは異形の村を探してくれることに協力してくれた。

 あるかもわからない村を探すより、広範囲を調べることが出来る彼らからの続報を待つ方がいいだろう。


 となれば、十山城への移住の準備をするのが最優先だ。

 早く弱い異形たちを安全な地に連れていきたい。


 崩落村に関しては、旅籠が休んでいるうちに確認しに向かった方がいいのではないかという意見も出たが……。

 そこに旅籠がいなければ意味がない。

 崩落村の異形たちには、旅籠に忠誠を誓ってもらわなければならないのだ。

 善意とはいえここだけは異形たちだけで解決してはいけない。


「では、旅籠様が起きられるまでは私たちも体を休めましょう」

「名を貰って疲れが無くなったんでさよね~。休み時がわかりゃんせん」

「旅籠様に合わせましょ」


 すると、カラコロと音を鳴らしながら木夢が近づいて来た。

 その横には五昇もいるらしい。


「ありゃ五昇。何してたでしゃすか?」

「見張りです。私以上の適任はいないでしょうから」

「して、どうじゃった?」


 蛇髪の問いに五昇は自分の弓と矢を持ち上げて全員に見せる。


「女郎蜘蛛の死に気付いて近づいて来た濡れ女を弓で仕留めました」

「抜け駆けしちゃいけやせんぜ!?」

「あらごめんなさい」


 彼女の偉業に月芽は笑顔で拍手し、木夢は尻尾を振ってカラコロと音を立てていた。

 一方黒細や空蜘蛛兄弟は若干悔しそうだ。

 布房や無形も何か言いたそうだったが、悔しいというような感情は持っていないようで過剰には反応しなかった。


「ああ、雪女も来ると思いますよ」

「それはあっしの獲物! ええでやすね!? ええでやすな!?」

「「ズルいぞ黒細! 僕らも行くぞ!」」

「空蜘蛛兄弟はさっき戦ってたじゃありゃんせんかぁー!」


 ぎゃあぎゃあと言い合っている三匹を無視した他一同は、まだ力の付いていない異形たちを案じた。

 彼らにも何かしらしてもらわなければならない。

 そうでなければ、旅籠と共に前へは進めないのだから。


 そのため妖たちとの戦闘は万全を期したいところだ。

 相性と凶暴性などを考慮して必ず勝てる闘いに赴き、自信と力をつけてもらいたい。


「そうなると……どの妖がいいでしょうか、蛇髪様」

目目連(もくもくれん)、からかさ……口裂けや岩魚坊主なんかじゃな。とはいえ、二口や猫又も別の衆がおる。そういった連中でもよいが……」

「私たちは既に警戒されています。そんな雑魚はもう出てこないでしょう。まぁ実際……」


 五昇は遠くを見る。

 彼女の視線は一山の方へと向けられており、それにつられて他の異形たちもそちらを見た。


「人間でも構わないんですけどね」

「ああ、そうじゃな」

「確かにそうですね」


 異形たちの敵は、明確に増えていたのだった。


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