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和風異世界いかがですか  作者: 真打
第七章 味方を求めて
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7.9.次の村


 集まったのは私をはじめ、月芽、蛇髪、布房、黒細、五昇、そしてケムジャロにイワクニだ。

 先程出会ったヤガニ衆について共有したあと、改めてこれからの動きを再確認する。


 とはいえやらなければならない優先順位は決まっている。

 その方法について議論する予定だ。


「やっぱ人数集めないとね」

「そうですなぁ……。数が多ければその分できることも増えますからの」

「だけど一番の問題でもありますね……」


 蛇髪の言葉に月芽が唸る。

 まだ把握している村はあるが、そこにいる異形たちが無事であるとは限らない。

 ここから近い村は二口が管理していたという異形の村だ。

 有名な妖怪が近くにいるとのことなので不安ではあるが……確認しに向かわなければならない。


「あとは本陣でさね。案山子夜が五山か二口の持ってた山城がいいと言ってたでやすね」

「いつまでも放浪している訳にもいきませんからね。それに異形の本陣が作られれば、話を聞いた異形がやって来るかもしれません」

「そうか、そういう考えもあるのか」


 五昇の考えに私は感嘆する。

 確かにそっちの方が自ずと集まってくれるし労力は少なくて済む。

 ヤガニ衆が見つけた異形にも『ここへ向かってくれ』と言伝てをしておけばスムーズに合流できるだろう。


 ……問題は、その異形たちは非常に弱いかもしれないということだが……。


「んで、どっちがいいかな。五山か山城か」

「私は山城がいいですね。五山だと建築に時間がかかりますし、そもそも異形たちにそんな知識はありません」

「月芽の言う通り……私たちに築城の知識はありません」

「となると山城だね。あそこって名前あるの? これからも二口の持ってた城っていうのは嫌なんだけど……」

十山城(とやまじょう)ですぞ。九つ山を越えた場所にあった山に手を加えたのでそう呼ばれておりますな」


 蛇髪の言葉に思わず『なるほど』と手を打つ。

 それっぽい名前だ。

 じゃ、本拠点は十山城で決定でいいかな。


 全員に再度確認を取ると、全員が頷いてくれた。

 そうと決まれば十山城近辺の安全を確保しなければならない。

 同時に今把握している村に向かって異形たちの安否も確認しなければならないだろう。


「ううーん、二部隊に分けたいけど……」

「あまり推奨はできませんぞ。弱い異形たちを抱えておりますからのぉ」

「そーなんだよね~」


 仲間は増えたけど、部隊を分けられるほどの戦力があるわけではない。

 とはいえまだまだ時間はあるのだ。

 やはりここは早く進んで異形たちを助けた方がいい。


 となると、まずは兵力確保が最優先。

 その次に十山城を本拠地にするための作業をいくらか行って……基盤を整える。

 この間に妖たちが攻めてくる可能性もあるので厳重に注意すること。

 ある程度安定してきたら落水と案山子夜がいる一山に増援を送る。


「ううーん、やることが多い」

「では早速いきやしょう!」

「なんか黒細元気だね」

「妖と戦いたくて仕方がないらしいですよ」

「そうなの!?」

「そうでさ!」


 戦いたいって……勝てる自信があるってことだもんなぁ……。

 前に比べて見違えるほど成長したように思う。

 私は嬉しいよ。


「……あっ!!」


 突然大きな声を出したことにより、近くに居た異形たちは肩を跳ね上げた。


「どど、どうしたでやすか!?」

「魚! 忘れてた魚!! 魚食べたい!!」

「さ、さかなぁ?」


 そうだここに来た目的すっかり忘れてたわ!

 いや戦力を増やすのもそうだけど、まともな食事を入手できるようになったんだから食べないと!


 すると、五昇がすくっと立ち上がって弓を引いた。

 海の方へ矢を放つと、それは海中を走って海面から飛び出す。

 矢は自我を持っているかのように戻って来て五昇はそれを見事に掴むのだが、そこには鯛がくっついていた。


「鯛だ!!!!」

「これでよろしいですか?」

「ありがとう!!」


 五昇から受け取った鯛を早速捌こうとしたのだが……。

 料理はからっきしだったことを思い出す。

 それに使いやすいナイフも所持していない事に気付いた。


 では火を起こせばいい!

 ……と思ったが火を扱える異形は居ない。

 刺身でもなんでもいいのだが、何もできない自分に絶望する。


「……あの、旅籠様」

「……なぁに……?」

「私が捌きましょうか?」

「!? 月芽捌けるの!?」

「名前を思い出して若干記憶が蘇ってまして……。根魚は捌けませんが、鯛であれば」

「お願い!! 木樹ー!! まな板作って大至急!!!! もーくじゅ~!!」

「わ、わ~! 旅籠様お待ちください~~!」


 ぱたぱたと木樹の方に走っていった旅籠と月芽を見て、異形たちは小さく笑い合った。

 あんなに元気な姿の旅籠は見たことが無かったからだ。


 不落城での一件から、旅籠の様子はなんだか暗かったように思う。

 異形たちはそれを気にかけていたのだが……どうやら要らぬ心配だったらしい。

 やはり旅籠は旅籠のままだ。

 それになんだか安堵する。


「こりゃ、少し出発が遅れそうでさねぇ」

「誰か一人先行しますか?」

「食事くらいゆっくりせねばならんぞ。妖も飯時くらい待ってくれるじゃろうて」

「ソレモ、ソウ」

「因みに次に向かう村は渡村でええでさね?」

「ええじゃろう」


 布房とケムジャロも頷く。

 やることは決まったので、あとはその実力を持って突き進むだけだ。


 だが今から向かう渡村は……あまり期待できないだろうな、と黒細だけが思っていた。


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