2話
『只今より新入生歓迎会を始めます。初めに、サッカー部の紹介です。サッカー部の皆さんよろしくお願いします』
『サッカー部部長の田中です。今からシュート練習をします』
如何にもサッカー部部長の風貌をした男がステージの袖から出てきて、にこやかに微笑みながら挨拶をする。
シュート練習?
こんなところで出来るのだろうか。
挨拶が終わると、知らない中年男性の顔を拡大して貼り付けられたパネルが運ばれてきた。
ん?
あれは一体誰の顔なんだ?
パネルがセットされるとユニフォームを着た部員達がサッカーボールを持ちながら出てくる。
嘘でしょ……
『シュート練習、始め!』
部長の号令により部員達は、謎の中年男性の顔面が貼られたパネルに向かって一斉にボールを蹴り始めた。
「練習きついんじゃぁ!死ね!!」
「あんまり俺のこと舐めんじゃねえぞクソジジイ!!」
「もっと部員に優しくしろ!!」
「突然ボールを投げられて突き指したことだけは絶対に忘れないぞ!」
「何に影響されたのか知らんけど、必殺技なんて出来るわけないだろ!殺すぞ!!」
えぇ……
パネルに貼られた中年男性の顔面に向けられた罵声の数々にひきながら周りをチラチラと見ると、わたしと同じように困惑してる同級生達が沢山いた。あー、よかったぁ。意味が分からないのわたしだけじゃなかったぁ。
『見ての通りアットホームな雰囲気の部活です。興味があれば是非入部してみてください』
嘘つけぃ!!
この学校の部活はとんでもないものしかないのかと、思ったけどその後の部活動紹介を見る限り、どうやらサッカー部だけが異常だったらしい。
そしてサッカー部が最初に尖りまくった紹介をしたせいで、後の部活の紹介が退屈になってしまったことに関してはサッカー部の皆さんは謝罪した方がいいかもしれない。
『この部活が最後となります。軽音部の紹介です』
司会者が言い終わると、茶色に染められたショートボブのふんわり系でギターを肩にかけた女子生徒が走りながら登場した。そして後ろで先生や生徒達が一生懸命がドラムをセッティングしている。
『みんな〜!盛り上がってるか〜い!!』
「……」
そして登場した勢いのままにマイクパフォーマンスを行うが、会場の新入生達は突然のこと過ぎて対応が出来ていない。
『盛り上がってないねお前ら〜!!気になる部活はあったか〜い?』
「…………」
『……………………』
彼女は盛り上がりのない観客達に何を思ったのか、にっこりと笑いながらしばらくの間無言となった。
『サッカー部の紹介はオチにした方が良かっただろと思った人、とりあえずうおぉぉぉぉぉ!!と言ってみよう。いくよ〜、せーの!!』
「「「「「「うおおおおおおおお!!!!」」」」」」
みんな思っていたのだろう。
サッカー部についての煽りをした瞬間に、体育館が揺れた。
その技術に、わたしは酷く感服した。
それをする前は、本当に静まり返っていたからだ。たった一回のクリティカルな煽りで、ここにいる新入生達を自分たちの観客にしてしまった。
これがバンド……凄い。
『センキュー!それじゃあ時間があんまり無いので、一曲だけライブしまーす。みんな聞いたことあると思う、最近流行りのあの曲』
MCに気を取られている間に、いつの間にかドラムは完成しているし、MCをしている人を含めて4人のメンバーが揃っていた。楽器構成はギターとボーカルをする人、もう1人のギター?、ベース?、ドラムだ。
彼ら彼女らが演奏をし始めると、その曲のことを知っているであろう人達が歓声をあげた。どうやらかなり人気の曲であるらしい。
イントロが終わり、MCをしていた先輩が歌を歌い始めると、歓声がさらに大きくなる。曲を知らないわたしでも、あの人の歌を始めとしてバンドとしての演奏がとても上手いことは分かった。
これが音楽の力。
陰キャも陽キャも、友達の人数だって関係ない。
音楽って、やっぱり凄いんだ。
ところであの水色髪の人はなんで男子用の制服を着ているんだろう。