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「俺たちドッキリブラザーズって言います。某ゲームのコスプレしながらお互いや知人にドッキリする動画を投稿してます。チャンネルの登録者は10万人ぐらいなんですけどしらないですか?」
3組目の自白をした2人の男はアリオの服装を似せたオーバーオールを着ていた2人だった。
「坂本見たことあるか?」
「んー。知らないですね。最近動画配信者って多いですし、聞いたことないですね」
坂本の反応に少し落ち込むも赤い方の男は昨日の経緯について話し出す。
「昨日もドッキリ企画をやってました。今回の企画は夜道で不良に襲われたらって言う企画でした。俺が夜道を歩いてたら弟の方がヤンキーの服装をしてバットとかで襲うみたいなものなんですけど。血糊なんかも用意して撮ろうってなってたんですけど」
「ドッキリ企画なのにお兄さんのほうも知ってたの?」
「いや、刑事さんドッキリ企画を本当に打ち合わせなしでやるわけないじゃないですかー。俺たちだって普段からこんな服装してないですし。こんな服装で街歩いてたら不審者ですよ」
弟の方が馬鹿にするように笑う。
「そしたら普段から似たような格好をした男がいたと?」
「はい。俺が土手の向こうから来るはずの兄さんの方へ歩いてたらあの男がいたんです。暗くてよく見えなかったから兄さんだと思って打ち合わせ通りに喧嘩を売って、バットで殴りかかってたら向こうから本物の兄さんが来たんですよ」
「そしたら俺たちパニックになっちゃって…逃げようとしたときに多分その男の事押しちゃって土手下に落としちゃったんだと思います」
「なるほどつまり突き落として殺してしまったと」
「はい。動画もあります」
弟はカメラを取り出し再生し始める。夜という事で少し画質が荒いが弟と大高のやりとりが映し出される。次第に弟はバットで大高を殴るとすごい血糊が画面染め上げる。そのあたりで兄の方が近づいてくると兄弟はパニックになり出す。そのあたりでカメラは地面を映し出す。弟が走り出すと同時に転がり落ちる音が入り、動画は終わる。
「ちなみに包丁とかって見覚えあります?」
坂本の言葉に兄弟達も疑問符を浮かべる。しばらく尋問を繰り返した後に次の容疑者との尋問が始まる。
「あのワタシのペットが人を殺したかもしれません。ワタシは捕まってもいいのであの子には何もしないでください」
「落ち着いて下さい。何があったんですか?」
取調室に入るなり大声で泣き出す大柄の男性。中山は落ち着かせるように言葉を紡ぐ。
「昨日、ポチとムギとレオで散歩に出ていました。やっぱり嫌がる人もいるだろうから散歩は真夜中にしてるんです。前から男性が来てたんですけどムギが逃げちゃって…ムギを追いかけて捕まえた時にポチがいない事に気づいて…あの子すごい噛み付くんです。だから・・・」
「まあ、そりゃ噛み付く犬はいますけど噛んだぐらいじゃ死にませんよ」
「犬じゃありません。へ、蛇なんです。猛毒持ちの」
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最後の容疑者の話を聞こうとすると坂本の電話が鳴る。すみませんと取調室を出てくが容疑者は一向に顔を上げない。中山の長年の感からコイツは他の容疑者と違って殺そうとして殺したと感じられる。
「昨日好きだった子に告白したんです。でも振られちゃって・・・。俺そいつの彼氏見たことあるから付き合えないってわかってたんです。でも諦められなくて自暴自棄に死のうと包丁持って古びたチャリンコ漕ぎながら土手行ったらその男がいたんです。そしたら頭があれしちゃって気づいたら後ろから」
瞬きせずに自白する彼からは尋常じゃない汗が滴り落ち、古びた机に水溜りを作る。
ビンゴだ。犯人はコイツで間違いない。
「凶器はこの包丁で間違いありませんか?」
被疑者の後ろに刺さる包丁の写真を見せる。
「はい、まちーーー
「中山さん、鑑識から連絡です。死体はなくなりました」
肯定しようとした男の言葉は坂本の戸を開ける音で聞こえない。
そして事件は思わぬ形で解決する。