5 王子の謎な境遇
こっそりと隠れるように、代わる代わるベッドの側に来た人たちの格好や、話の内容から理解できたのは、自分はこの国の王子様だと云うことだ。
3日前、炎天下で剣術の稽古をし続け、ついには意識を無くして倒れてしまったらしい。
彼が剣をふるい続けていたのは正式な鍛練場ではなく、足場の悪い庭園の片隅。日差しが強く、花なども育たない為、整地もせずに捨て置かれた場所だ。誰にも内緒で、その場所を秘密裏に自分の鍛練場として利用していた様だ。整地もされていない場所だったからこそ、足元の大石に後頭部を打ち付ける事になったし、指導する人もいないままだったから、時間を忘れて剣を振るい続ける彼を止める人もいなかった。
そんな状況だから、熱中症と怪我で動けなくなった彼の発見が遅れ、昏睡状態でこのベッドに運ばれたらしい。
「そして気付いたら、わたしになってたってことね。……って、これって死んだ王子様に、異世界で死んだわたしの魂が入り込んじゃった、って云う王道パターンなんじゃないの?」
誰もいない寝室で状況整理に勤しむわたしは、思い当たった可能性に大きくため息を吐いた。
――だって、そのパターンだったら美人な女の子とか、赤ちゃんとか、悪役令嬢だったりとかするんじゃないの!? なんでちょい年下くらいの男子!?
「くっ……けどなっちゃったものは仕方ないし、続けて死ぬのなんて絶対ヤだし。なら生きれるように頑張るしかないわよね!弟と同じくらいの子だもん、大事にしたいし」
トラックの軌道から押しやって逃がしたあの子は、わたしの分も生きて欲しい。それに鏡を見たけれど、この子も男子ではあるけどハッとするほどの美形なのだ。この子が成長したらどうなるか、見てみたい気持ちも少なからずある。
「頑張って生きるって決めたから、まずは現状把握よ!」
声に出して、むんっと拳を握る。
改めて、この男の子――コルネリウス王子に関して知り得た情報を頭の中で整理する。そうし始めるとすぐにこの王子の置かれた境遇に疑問がわいた。